Ustream配信で確認すべき重要事項<撮影編>

Ustream配信の際のポイントについてお伝えしているシリーズ、今回はUstreamで最も重要といえる「撮影」について注目してみましょう。もし、あなたがUstream配信で撮影を担当しなくてはならなくなったら、何を考え、どう行動しますか?

事前打ち合わせ/会場下見

イベントやUstream番組の制作にあたる他のスタッフとの情報共有は欠かせません。併せて、余程の事情が無い限り、配信会場の下見は事前に必ず行います。

カメラの設置位置は、被写体を写しやすい箇所、撮影しやすい箇所が理想です。Ustream配信が主体であれば、カメラは迷わずベストポジションに置けますが、イベントありきの配信の場合、来場者の座席位置や、音響・照明スタッフの方との兼ね合いで、イベント全体を見渡したとき撮影側の求めるカメラ位置が最善とはいえません。主張すべきところは主張しながら、譲歩することも大切です。

こうした打合せは、関わるスタッフが現場で顔を合わせながら、本番ではああしよう、こうしようと話し合いながら行うことが多くあります。イベント制作側に事前に必要なことを伝えておくことは、当日「聞いていなかった」といったトラブルを避けるために重要です。また、現場を事前に確認することは、図面からは分からない情報を知ることにもなります。電源位置・ネット回線の位置・図面作成時からの変更箇所・機材の搬入動線など、事前に知っていると当日スムーズに準備ができ、ひいてはリスクの軽減に繋がります。

 
(画像:ある記者発表会のUstream配信企画の際、下見打合せを受けてクライアント・スタッフと情報共有するための資料。思いつく限り、些細なことでも現場で打合せ・質問・要望を依頼し、メモに残す。打ち合わせ時では明確な結果が出ず、曖昧だったり、確認するといった事項も必ず出るので、後日どうなったか再確認する。)

また、イベントの内容を把握しておくことも重要です。撮影をしていて、次の展開がどうなるか知っておけば、カメラワークもスムーズになります。具体的には、出演者が登場するのは、カメラから向かって右(業界用語で”上手”と言います)からなのか左(下手)からなのか、スピーチをする順番や司会者に紹介される順番、楽器の演奏であればソロになるのはどのパートなのか、などを事前に知っているか否かは撮影結果に大きく及ぼします。


(写真1:インカムの例。ヘッドセットとマイクを通してカメラマンに指示を出す機材。事前の打合せや台本に基づいて演者の次の動きを伝え、それに併せてカメラマンは反応して撮影する。とはいえ、イベントというナマモノにハプニングは付き物なので、臨機応変にどう対応できるかがプロとしての腕の見せ所となります。http://www.protechweb.jp/products/incom/fd300a/option.html

機材選び

さて、次に準備すべきは当日使用する機材でしょうか。webカメラやiPhoneといった簡単な機材でも配信可能なのがUstreamですが、やはりビデオカメラを使った配信の方が、画質的にも良いですし、ズームできるのも映像表現的にプラスとなります。

PCに接続するときにカメラにあると便利なのが、IEEE 1394(Appleは”FireWire”、SONYは”i.Link”と表すことも)端子。映像を劣化なくデジタルデータのままPCに送ることができ、画質良い中継が可能になります。一昔前(4~5年前)のDVテープを使うカメラには殆ど付いていましたが、HDDやフラッシュメモリーに記録するような最近のカメラには見かけなくなりました。(このため、一時期、中古のDVカメラ価格が上昇したという話もありました。)かつて購入したカメラを確認してみると良いでしょう。また、レンタルではまだまだ現役のようです。具体的な接続・配信方法などは、webで検索すると多くの情報が出てくるのでここでは割愛します。


(写真2:DV端子とケーブルの例。写真のカメラは、時代の名機、SONY VX-1000。そもそもIEEE1394端子のあるPCも減りつつありますが・・・。)

だんだん映像中継に慣れてくると、1台のカメラでできることの限界と、複数台カメラを切り替えられれば・・・と思うようになるのではないでしょうか。テレビ番組などでは、何台ものカメラで撮影し、適宜、最も良い撮影しているカメラに切り替えて映像を構成しています。この、複数台のカメラを切り替えることを「スイッチング」と呼びます。

Ustream配信ソフトウェアの上位版、「Ustream Producer Pro」では、PCに接続されたカメラをソフトウェア上でスイッチングすることができます。手軽にスイッチングを試してみることができ、番組の作り方についていろいろ考える良い機会になると思います。しかし、PCが処理すべき負荷は高まるはずで、最悪の場合フリーズしてしまうリスクを抱えることになります。

「映像のプロ」の定義とは、高品質な映像を作り出すのは当然として、安定した品質を常に実現させることだと思います。どんな些細なことであっても、事故を起こすリスクは可能な限り事前に排除することが重要と考えています。そのため、ビジネスでスイッチングを行う際には、必ず専用の機材を準備し、ハード的にスイッチングした映像をPCに送って配信しています。PCはあくまでエンコードと配信だけと割り切ることで、放送事故リスクを低減させています。


(写真3:スイッチングの例。人物手元の機材がスイッチャー機。中央の3台の小さいモニターが、各カメラから送られてきた映像。インカムで指示を出しつつ、映像の構成を考えながら切り替えていく。奥の大型モニターがスイッチング結果の映像。この映像を変換してIEEE1394経由でPCに送り、Ustreamへと配信していく。)

撮影は視聴者の立場に立って

機材の準備が終われば、配信が始まります。同時にカメラを駆使して映像を撮影しなければなりませんが、漫然とした映像では伝えたいことも思い通り視聴者には伝わりません。

撮影中、意識すべきことはたった一つだと思います。「自分が視聴者だったらどんな映像が最も分かりやすいか、観やすいか」。これに集約されると思います。

ホームビデオにありがちなのが、ズームやパン(=左右上下に振り回すこと)を多用しすぎていわゆる”カメラ酔い”してしまう映像。自分が観る立場であれば、当然観たくないでしょう。

一人にズームアップしていたら、急に別の人が喋りだしたため、ズームしたまま喋りだした人にカメラを合わせると、その人同士の位置関係が分からず、視聴者は混乱します。そのため、一度、全景にズームバックし、その後、次に喋る人にズームでアップする、といった気遣いも重要です。また、場合によっては、下手にズームをするくらいならば、全景に固定したままの映像の方が良い場合もあるでしょう。

「カメラマン」という専属の職業が成立するほど、撮影という行為にはテクニックが必要になります。ですが、経験の浅い人でも、いくつかのポイントを改めるだけで、撮影する映像の質は大きく向上します。そんな具体的な撮影のテクニックについてはまた別の機会に詳しくお伝えしようと思います。


(写真4:カメラマンの例。家庭用と異なり、放送用や業務用カメラは大型で肩にかつぐタイプのものも多い。最近のものは軽くなったとはいえ、7~8kg程度ある。ある程度重さがあった方が、カメラの揺れが少なく、安定した映像が撮れる。)

(Photo By dalydose