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将棋電王戦FINAL最終戦PVが示すブランドとコンテンツの未来

出会いと別れの季節ですね。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

今日は、ニコニコで行われている人間対コンピューターの将棋団体戦「将棋電王戦FINAL」の最終戦PVについてお送りします。まずは動画をご覧ください。

動画は、今回最終戦で対決するプロ棋士の「阿久津主税 八段」と、将棋ソフトAWAKEの作者「巨瀬亮一」氏を中心に描かれます。

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最終戦で相まみえる両名は、どちらもプロ棋士を目指す者達の登竜門「新進棋士奨励会」に所属していました。しかし、奨励会に所属できたとしても、実際にプロに慣れるものはわずか二割。阿久津氏はプロになれましたが、巨瀬氏は道半ばでプロへの道を諦めることになったのです。

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将棋の世界を去った巨瀬氏は将棋盤を見るのもつらい状況が続きましたが、将棋プログラムの開発を通して将棋との距離感をうまくとれるようになり、ついには自ら開発したコンピュータ将棋ソフト「AWAKE」でコンピューター将棋最強の座を手に入れます。

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そして、二度と訪れることがないと思っていたかつての夢のステージ、千駄ヶ谷の将棋会館に最終戦で巨瀬氏は帰ってくるのです。

BGMを通して描かれるこの戦いの意味

夢敗れる巨瀬氏のインタビュー動画で使用されているBGMは、1970年に発表されたニール・ヤングのOnly love can break your heartという曲です。

自分でなんでも思い通りになると思っていた男が、失恋で手痛い傷を追ってしまう。そんな男に「恋焦がれる気持ちが叶わないと、本当にキツイよね」と語りかける曲です。実際ニール・ヤングが失恋した友人のために書いた曲だと言われています。今回のPVを通して描かれる、将棋に恋い焦がれ思いを果たせなかった巨瀬氏の姿を優しく慰める曲なのです。

思い通りに行かなかった僕達のための動画

と、同時にこの動画に多くの人が心動かされるのは、何かに夢中になりチャレンジをしたものの思い通りにいかなかった体験を、僕達が実際に人生で経験しているからです。受験や、就活かもしれない恋愛かもしれない。仕事上の何かかもしれない。この春の季節に思いどおりの結果を出せなかった、多くの人達は巨瀬氏に自らの姿を重ねるのです。

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「将棋」を通して普遍的な価値を見せる演出手腕の確かさ

将棋電脳戦FINALは、インテル・プレイステーション・トヨタ・デンソー・マイクロソフトなど多くのクライアントがスポンサー提供しています。ドワンゴは将棋イベントである電王戦を、単に将棋ファンに向けたものではなく、その主人公たちの人間ドラマにスポットを当てることで、普遍的な価値を浮き彫りにしました。コンテンツを通したブランディングに注目が集まるネットマーケティングにおいて、巧みな演出を通して視聴者に普遍性のあるメッセージを届けることに成功しています。

ブランデッドコンテンツなどを含めても、ここまで巧みな演出を行えている事例を僕は知りません。ドワンゴのコンテンツ魂を見た気がしました。

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]