以前にもご紹介したことのある米「Snapchat」が、どうやら最近「スナチャ」の愛称でじわじわと日本でも浸透し始めているようです。とはいっても、まだまだ一般的な認知度が高いわけではなく、いまひとつ盛り上がりに欠ける印象を受けます。
その「スナチャ」をもう一度おさらいしながら、日本でブレイクするためには何が必要かというのを考えてみたいと思います。
1日のアクティブユーザーは1億人
Snapchatがどれくらい勢いがあるのかをうかがい知るために、オフィシャルに発表されている情報を見てみましょう。
まず、Webサービスの重要な指標である1日のアクティブユーザー数(DAU)から見てみます。これは、基本的なサービスの規模を把握するための指標といったところでしょうか。
オフィシャルデータによると、1日のアクティブユーザーは1億人以上となっており、10億人のDAUを誇るFacebookの約10分の1程度の規模と捉えられます。ちなみに、Twitterはデイリーではなくマンスリーの数字を出しており、月間のアクティブユーザー数は3億人と公表しています。もちろん、集計する期間が違うため一概には比較できないもののSnapchatがかなり伸びている状況と行っても差し支えないのではないかと思います。
次に、Snapchat上でどのようなコンテンツがやり取りされているかを見てみると、その主軸は「ムービー」となっているようで、その視聴回数は1日あたり80億回以上にも上ります。これは、DAUが10倍のFacebookと同レベルの視聴回数で、Snapchat上でいかに動画コンテンツが多いかを物語っています。
さらに、ユーザーの年齢層に目を向けてみましょう。年齢層別では、13~17歳が23%、そして、18~24歳が37%となっており、6割が24歳以下のユーザーということが分かります。35歳以上のユーザーは14%で、圧倒的に若いユーザーに支持されていることが分かります。
オフィシャルの情報の中には、残念ながら、日本に関しての情報が見当たらず、あくまでもこれらはアメリカ本国での数字となります。そのことからも、ユーザーの多くをアメリカ人が占めているであろうことは容易に想像ができます。
日本で市民権を得るための条件とは?
では、日本で多くのユーザーを獲得するために必要な条件とは何か?サービスの成否においては、様々な要素があるのは間違いありませんが、個人的にこれは外せないと考えているポイントを述べてみたいと思います。
1.影響力のあるユーザーが利用
まず、SNSやコミュニケーションサービスが広がっていくためには、友達や知人が利用していることが絶対的な条件となります。当然と言えば当然なのですが、自分一人しか登録していないサービスだと、そもそもメッセージのやり取りは行えないわけなので…。
ただし、友人や知人が利用していない場合でもユーザーが増えるケースがあります。その筆頭なのが、有名人の利用です。
例えば、最近日本でもユーザー数を伸ばしているInstagramを例に挙げると分かりやすいのですが、ティーン、中でも特に女性に人気にあるモデルさんやタレントさんがフォロワー数の上位を占めており、一般の人が有名人の動向を追いかえるメディアになっていることが分かります。これらの影響力の高い人が利用することで、その人たちの一挙手一投足を知りたいファンの人たちが登録し、盛り上がりを生み出すというものです。
図らずも、Instagramの国内フォロワーランキング2位の水原希子さんが、Snapchatのフィルターを使って撮影した動画をInstagramに投稿し話題になったことがありました。この動画によって、若者の間でSnapchatが話題になり、日本で認知度が一気に高まったとも言われています。こうした流れは、利用者が増えてきたサービスであれば、間違いなく通った道であるのです。
2.サービスの特徴をきちんとアピール
炎上やリベンジポルノなど、SNSに関するリスクが叫ばれて久しい昨今。ソーシャルネイティブである10代にとって、不適切な行動によって引き起こされる結果(炎上)について、一定の認識を持っていると考えられます。
そんな中で、Snapchatの特徴である時限的な投稿という特性は、そうしたリスクを回避するために好意的に受け入れられる土壌があることになります。例えば、先日話題になった芸能人の不倫騒動で、事の発端となったのはLINEでのやり取りでした。ログが流出するというLINEの仕様的なリスクは、やり取りが残らないSnapchatでは起こりにくいと考えられます。どんな会話をしたのかという形跡を残さないようにすることで、その先に起こる事故を極力防ぐというのがポイント。そういった点を、うまくアピールし売り出せば、興味を持つユーザーも多いはずです。
3.コンテンツの日本対応
Snapchatは、アプリのインターフェイスなどがしっかりと日本語化されているため、利用を始めるにあたっての障壁は低いと考えられます。ただ一点、コンテンツがアメリカ本国のままで設置されているところがあり、不意に外国のサービスであることを意識してしまうため、距離感を感じるというか、心理的なハードルになりそうな気がします。
例えば、「Discover」というコンテンツは、様々なメディアのキュレーションコンテンツが並んでいますが、世界共通の内容となっており、一目見て日本のユーザーにローカライズされていないと分かります。
そこから受ける印象は、まだまだ海外のユーザー向けに作られている海外のサービスといったもので、自分たち(日本人)に向けられたものではないというものです。アクティブなユーザーを獲得するためには、「自分たち」に向けられたサービスなんだということを感じさせることがとても重要です。
以上、Snapchatが日本で流行るために、必須と言える項目を3つ挙げてみました。
まずは上2つ、影響力のある人物による積極的な利用(啓蒙)とサービスの正しい理解が進めば、日本でも着実に市民権を獲得していけるはずです。ユーザーを獲得した先には、企業にとって新たなマーケティングポイントとしての成長が見込まれます。
すでに本国ではSnapchat上での広告も開始しており、今後さらに拡大していくと見られています。Facebook等のターゲティング広告とは違い、24時間以内に消滅する広告となっているようで、どのように活用するかを考えるだけで楽しいものです。
ぱっと思いつくだけでも、スポーツイベントのスポンサー企業が試合に連動したキャンペーンを実施したり、キーワードを段階的に広告として配信し、それを集めて応募するプレゼントキャンペーンもできそうです。日本でユーザーを拡大し、サービスが成長してくると、こうした取り組みも一気に現実味を帯びてきます。
そうした、新しいことに挑戦するためにも、日本でのユーザー獲得は必須。もし、Snapchatをまだ使っていないという方がいれば、まずどんなものか使ってみるところから始めてましょう。すべてはそこから始まります。
アクトゼロ / 山田