親がアルコール摂取することによる子どもへの悪影響を、子ども視点のバイラル動画で啓発するフィンランドのNGO「Lasinenlapsuus」の取り組み

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

今日は、フィンランドのNGO「Lasinenlapsuus」のバイラル動画を使った啓発活動についてお送りします。フィンランドでは日本と違い24時間好きな時間にアルコールが購入できるわけではありません。アルコールは度数に応じて購入可能年齢が異なる上、高いアルコール度数(4.7%以上)のアルコール飲料に関しては、夜には閉まってしまうALKO(アルコ)という専門店でしか購入することが出来ません。

1990年台フィンランドは日本のように自殺の多い国のひとつでしたが、現在では半減させることに成功しました。自殺者やその周辺への調査を通し、何故自殺に至ったのか類型化、それぞれのパターンに対して自殺予防プログラムを官民それぞれのレイヤーで適用していきました。その対策のひとつとしてアルコール依存への社会的な介入措置が取られています。

 「フィンランドではかつて日本と同じくらい自殺が深刻だったが、国家レベルでさまざまな試みを行い、今では改善した。1つにはアルコール依存症対策だ。フィンランドでは自殺者の50%の血液から高濃度のアルコールが検出されている。アルコールの影響をあまり問題視しない日本は、アルコール依存やギャンブル依存などの問題から取り組みを始めることもできる」
伊吹太歩の時事日想:自殺ドキュメンタリーを作った外国人が「すぐに死にたがる日本人」を語る (2/2) – Business Media 誠 

アメリカではかつて、飲酒運転をすることが「自己責任」でした(その代わり事故った際には重たい賠償責任があった。現在は厳罰化の傾向)。アルコール摂取についての考え方は国によってまちまちです。兎にも角にも、個人や家庭内で行われるアルコール摂取に対して、個人の自由だけにまかせず社会全体で介入していくことを、フィンランドはコミュニティとしての選択しているという前提で、今回ご紹介するバイラル動画をご覧いただければと思います。

The Orphanage (孤児院)

子どもたちが博物館のような施設を訪問します。ガラスで囲われた檻それぞれにはやさしそうな夫婦がいて、ガラス越しに子どもたちにあたたかな視線を注ぎます。その中の一組の夫婦と、ガラス越しに特別なアイコンタクトを取る男の子、しかし案内人に引き合わされたのは、子どもにまったく視線をよこそうともしない、酔っ払った夫婦でした。子どもたちは彼らとともに施設を去っていきます。「こどもは親を選べない。だけどもし選ぶことができたら…?親によるアルコール摂取について、あなたの考えを聞かせてください」

 Lasinenlapsuusはフィンランド語で「(ガラスのように)壊れやすい子どもたち」という意味です。昨年はこちらの動画が話題になりました。

Monsters

 親の手を握る子ども、公園で遊んでいる子ども、どこにでもいる子どもたちですが、その表情は曇っています。なぜか、彼らの親はモンスターのような姿です。顔色をうかがう子ども、恐ろしさに後退りする子ども、体を硬直させる子ども。「私たちがアルコールを飲んでいる時、こどもの目に私たちはどのように見えているでしょうか?」のコピーで動画は終わります。

Voice for a child

 砂場で仲良く遊ぶ子どもたち。二人は両親のまねごとをしているようです。「あー、よってきたいい感じだ」「お前いつもより可愛くみえるな」「子どもにご飯あげてくれた?」「ああ…、あーやってねえわ」「ふざけんなこのやろう」こどもたちを忘れ、よっぱらい、喧嘩する両親の様子をオウム返しに真似をする子どもたち。砂場に倒れた子どもたちの「なんで、ああなっちゃうんだろう?」の声で映像は終わります。

子ども視点で描かれる「アルコールを飲んだ大人のみっともなさ」

どの動画にも共通するのは、子ども視点で描かれる「酒に我を忘れた親たちのみっともなさ、だらしなさ」です。酔っている当人を第三者的に描くと同時に、当の子ども視点に感情移入させることも出来る優れた動画たちだと思います。社会の問題を啓発する動画は、視聴者に「自分ごと」だと認知させることが比較的容易で、多くのNGO・NPOがネット動画による啓発活動を行い大きな話題を読んでいます。

自分事になるからこそ拡散が進む。自分事だからこそ意見が言いたくなる。ソーシャルメディアの時代にネットユーザーは語るための「種」を欲しているのかもしれません。

あなたはこのバイラル動画どう感じましたか?