ヒトマルマルマルより配信を開始せよ!陸上自衛隊・そうかえんライブ配信レポート

「高寺さん、”そうかえん”見に来ませんか?」---とあるご縁で、陸上自衛隊の方から招待を受けた”そうかえん”とは、総火演=富士総合火力演習のことで、その名の通り、火砲による実弾射撃を間近に見ることができるのです。自衛隊が催すイベントの中でも、非常に人気のあるものの一つで、参加できる抽選の当選確率は25倍にも及ぶのだそうです。

そのため、見たくても見に行けない人のために、昨年から演習の様子をUSTREAMでライブ配信を行い、非常に人気を博していました。今年はUstに加え、さらにニコニコ生放送でもライブ配信に挑戦されるのだとか。しかも、これらの配信作業は全て陸自の自衛官によって行われるのだそうです。先日の日曜日、8/28にライブ配信が行われた”そうかえん”の現場についてレポートします。

 御殿場は準備万端!

前日、図書館戦争(自衛隊をモチーフとした、図書隊で繰り広げられる物語)の最新刊を読み、気分を盛り上げ早朝に出発。朝8時半、会場となる富士山のふもと、御殿場の東富士演習場に到着すると、すでに多くのお客さんがスタンバイしていました。


手前が桟敷席、後ろの方がスタンド席。

会場の両端には、大型のモニターが準備されており、PRの映像が放映されていました。演習中、会場の生中継の映像や解説などが上映されるようです。早速、現場を見学してみると、あちこちに映像機材がセッティング済みでした。なんと、カメラマンまで、制服姿の自衛官の方が行っていました。その他にも、民間人のカメラマンもスタンバイ。ネット配信、会場の大型モニターへの生中継、記録など、いくつかの目的があり、それぞれにスタッフがアサインされているようです。


左:会場のセンターにはDVCAMの大型カメラ、HDVの小型カメラ(Z5JかVIJ)が。
大型カメラがライブ配信用、小型が会場大型モニター中継用のようです。
大型カメラのカメラマンは、女性の自衛官の方でした。
右:会場上手側(会場向かって右側)には、イントレが組まれていました。 
 
スタンド席の上方にも自衛官の方がスタンバイ。カメラはSONYのDSR-570でした。
「レンタル品ですが…」とのことです。

 ヒトマルマルマル(10:00)より配信を開始せよ!

 10時過ぎ、2機のF-2戦闘機の爆音とともに、演習が開始。めくるめく、装備品の数々が登場し、目の前で爆音と衝撃波を感じながら演習が繰り広げられていきます。

コンデジの写真のため、大分遠くに感じますが、けっこう近くから見ている印象です。同行した弊社山田は、一眼レフを持ってこなかったことを終始悔やんでいました。 

 

 

会場が 山中のため、WIMAXが使えない状況でしたが、3G回線でなんとかライブ配信の様子を現場でモニタリングできました。ニコ生の方は映像の表示までは無理でしたが、コメントを見る限り、PCで見ている人たちも盛り上がっているようでした。

  

http://www.ustream.tv/channel/fire-power-in-fuji-2010 
(平成22年のアーカイブはこちら
http://live.nicovideo.jp/watch/lv59910578?ref=ser(タイムシフト視聴)

このライブ配信には、「抽選に漏れ、来場できない人へのフォロー」という、非常に分かりやすい目的があります。(結果的に、Twitter・Facebookで情報拡散し、ファン以外の層にリーチするのも目的かもしれませんが。) 通常、ネット動画の場合、番組の送り手が視聴者とのコミュニケーションを深めることによって、より番組へ視聴者の気持ちを向ける仕掛けを用意するものですが、今回は、無料で使えるネット動画配信のプラットフォームとして割りきってサービスを利用しているようです。

サイト上では、しっかりと 本放送はイベント中継のため出演者等からのコメントの返答はございません。” と明記しており、そうしたことを期待する視聴者への牽制もしっかりされているのは非常に良い対応だといえるでしょう。

お固い組織と思われがちな自衛隊ですが、昔から積極的に情報公開を行っており、ネットでの情報発信も様々な取り組みがなされています。(YouTubeTwitterタクマ君ユウちゃん)など) いずれソーシャルを存分に活用したUstream番組なんかも行われるようになるかもしれません。

良く構成が練られたコンテンツ

現場で演習の様子を見ていると、一般人に見られていることを意識した構成であることがよく分かります。素人でも分かりやすいMCのナレーション、作戦の指揮官たちの無線の音声までPAしたり、大型モニターにCGを映して作戦についての解説、色つきの煙幕を使って標的を示したりなどと、イベントとしても非常に良く構成されていました。会場への中継=ライブ配信用の映像も大変良くできており、カメラワーク・スイッチング(複数のカメラを切り替える作業)を見ていると、演習の内容を細かいところまで理解し、構成されていることが分かります。

 およそ2時間のライブ中継で、最終的にUstreamの方が、視聴者数44701人・3921ツイート、ニコニコ生放送の方が、来場者数65320人 コメント数138239 にも達したようです。Twitterの反応を見ていると、やはり視聴者の皆さんからも大好評だったようです。

Ustreamのソーシャルストリームで知ったのですが、そうかえん来場者へのアンケートを携帯・スマホから集めており、答えた人の中から抽選で陸自オリジナルグッズをプレゼントしていました。当選者には演習終了後、メール返信され、受付でグッズが渡されるとのこと。イベント来場者からアンケートを集めるためのなかなか良い施策だと思いました。早速、感想などと共に応募してみると・・・

 演習終了後、当選のメールが。陸自ノベルティーをゲット。

 撮影担当の自衛官の方にお話を伺ってみました

演習の前後で、撮影に携わっている自衛官の方に声を掛けさせて頂き、少しお話を伺ってみました。(残念ながら、ライブ配信の全貌を全て把握されている方にはお話が聞けず、複数の方からのお話なので、事実と異なっている部分もあると思います。)

◆なぜ、昨年からネットでのライブ配信を行ったのですか?
毎年、多くの方から演習の見学に参加希望があるが、会場の制約で参加できる人数には限りがあり、抽選ではずれの人も多くいる。そうした方に対して、ネットで見てもらえるようにライブ配信を行うことにした。

◆ ライブ配信のカメラは何台くらい準備?
ネット配信専用のカメラは3台。その他に、会場大型モニターへの生中継用カメラが5~6台位出ている。会場への生中継の映像も使いながら、合計10台位のカメラが配備されている。

 
遠方のヘリを安定した映像で捉えたり、予めセットアップされた場所に自動的に構図を作り上げる、高感度・高性能カメラ「千里眼」。陸自の装備のひとつなのでしょうか。

◆スイッチングはどこで行っているのですか?
下手(会場向かって左側)のスタンド部分が自衛官の詰所になっていて、そこまでケーブルを引き回している。(恐らく、300m位はあるような気が。)そこでスイッチングを行い、衛生を介してインターネットに接続し、アップロードしている。ちなみに、スイッチャーも自衛官が担当している。
 
◆準備はいつから始めましたか?
10日前からケーブルを這わせたりといった準備を行い、テストやリハーサルを繰り返しました。

◆撮影も自衛官の方がされるんですね?
広報の部署以外にも、いろいろ撮影を業務の中心とする部署があります。 

◆普段、カメラはどんなものをお使いですか?
DVCAMが多いですね。まだ、自衛隊はSDなんですよ。HDはまだなんです。笑 

お忙しい中、気さくにお答え頂いた、センターカメラ担当の自衛官クルーの皆さん。
「ネットでうまく映像流れてました?」と気にされていました。
うーん、こんなクルーと一緒に仕事してみたいものです・・・。

普段体験できない現場で、普段なかなかお話を聞けない自衛官の方から、映像やネット配信への取り組みについていろいろ見聞でき、非常に良い経験ができました。同時に、このような装備や自衛官の方が国防のために働いているのだな、と日常馳せる機会の少ない思いを体験することができた気がします。

おまけ

12時過ぎに演習が終わると、13時過ぎから、演習の会場が解放され、展示された装備品の近くまで行って見学・撮影ができます。こういったものがお好きな方のために、いくつか掲載しておきます。

 

OH-1。乗員:2人 重量:約4t 全長:約13.4m 全幅:約11.6m 最大時速:約278km/h。 
 CH-47J 乗員:3+55人 重量:約22.7t 全長:約30.2m 全幅:約16.3m 最大時速:約274km/h。
車両を吊り下げて運搬できる力持ちです。
一機、50億円するそうです。満タンで500km(東京~大阪)まで飛べるそうです。
これの後継機だと1000km(東京~北方領土)まで飛べるそうです。 

AH-1S 乗員:2人 重量:約4.5t 全長:約16.2m 全幅:約13.4m 最大時速:約231km/h。

( 戦車類は、見学者が多かったため、割愛させていただきました。)