Ustream配信で確認すべき重要事項<ネット接続環境編>

実際、Ustreamの配信を行ったことがある方であれば、さまざまな準備や確認が必要だった記憶があるのではないでしょうか。個人的な配信や、仲間内で楽しむだけの配信であれば、それほどシビアに考えること無く手軽に行えますが、失敗の許されない配信の場合、事前の確認や準備を通して、失敗の可能性を可能なかぎり少なくすることが重要となります。

そんな確認と準備の中、最も重要なポイントは「ネット環境の確保」。何はともあれ、ネット環境が無ければ、当たり前ですがUstream配信はできません。

■無線ネット接続サービス
もし、配信現場にネット環境が無い場合、自分たちで調達する必要があります。この場合、真っ先に思いつくのは、WiMAXやEMOBILEといった無線ネット接続サービスではないでしょうか。

どこでも手軽にネットに接続でき、非常に便利ではありますが、Ustream配信を行う現場の電波状況が良いとは限りません。また、有線LANと比べ、接続速度(特に、”上り”と呼ばれる、PC側から発信する通信速度)が遅く、確実性に不安が残ります。配信地点での事前のテストは絶対必要です。

ちなみに、弊社でビジネスとしてUstream配信を行う際には、この手段はやむを得ない最終手段と位置付けており、この場合、クライアントには配信の遅延や停止・最悪の場合、配信ができない可能性があることを事前に了承頂くことにしています。


(写真1)半地下となった劇場から、舞台の様子をUstream配信する際、様々な事情によってどうしてもWiMAXからの配信とせざるを得なかった。写真中、立てかけた長机の近くにケーブルが見えるが、この15m先は、地上に至っており、その先にはWiMAXの端末が刺さっている。減衰もなく、数Mbpsの通信が可能だった。


(写真2)WiMAXは、他サービスと比べ、下り回線だけでなく、Ustream配信に重要となる上り回線も比較的速度が出るため、接続ポイントのない無線通信で配信をする際、よく利用する。

■光回線を数日間だけ引く
しかし、安定感を考えると、なるべく有線LANを利用したくあります。場合によってはネット環境のない配信会場に、配信期間だけ光回線を用意することが可能なことがあります。

配信の数日間だけ回線を通し、その間だけプロバイダー契約を行います。(実際には、一ヶ月間の契約を取り交わし、数日後に解約し、違約金を支払うという形になります。)詳しい相談は法人向けのNTTまでどうぞ。費用もそれほど高くなく、数万円程度で実現できます。ただ、現場での工事も必要な場合があり、工事のための立ち入りや立会など、会場側の協力も不可欠ですので、事前の許可と擦り合わせが必要でしょう。また、建物に回線が来ているか否かで、この手段が不可能な場合もあります。


(写真3)音楽ライブをホールから配信する際、配信専用に使える有線回線はなく、有料サービスの無線LANのホットスポットしか無かった。当然、一般ユーザーと共用のため、Ustreamの配信に必要な帯域確保は不可能。そこで配信専用の光回線を準備。上下共に20~30Mbpsの回線速度を確保。会場側も光回線の数日間の導入の経験があり、スムーズに事が進んだ。ただ、情報配電盤から、配信機材の設置位置まで距離があり、100mのLANケーブルを引き回した。


■会場にあるネットワークを利用する

すでにネット環境の準備のある配信現場であれば非常に楽です。しかし、その場合でもそのネット環境の”質”について確認しなくてはなりません。

会場に準備されたLANケーブル。この先が、ダイレクトにプロバイダーに接続されていることはまずあり得ません。その先にはハブやルーター、社内サーバなどのネットワークを介し、何台ものPCが同時に接続され、様々なデータが行き交いしています。動画データはサイズが非常に大きいだけでなく、間欠無くデータの送受信を行うため、ネットワークにかける負荷は大きいといえます。回線速度を事前に調べたり、配信の同時間帯に、大型のデータの送受信の予定が無いかを事前に確認する必要があります。弊社が大企業の社内から配信させていただく際、ネットワーク管理者と打合せをさせて頂くことも多くあります。

また、高度なセキュリティーをネットワークに施している会社の場合、LAN回線があっても、配信用に持ち込んだPCからではネットに接続できない場合があります。過去、セキュリティーのソフトウェアを販売する会社の社内からUstream配信を行う機会がありましたが、事前にネットワークのご担当者様に申請して、配信用PCにIPアドレスを振ってもらったこともありました。

有線LANの他に、無線LANを準備している会場もあると思いますが、無線は会場の状況によって速度が変わりやすい場合があります。事前のテストでは問題なかったが、多数の来場者が入ったら通信ができなくなった、ということもあるようですので、やはり有線LANが安心できます。その際、来場者の安全確保と、ケーブル切断を防ぐために、ケーブルを引き回す導線と、マットや養生テープによる保護にも気をつける必要があります。


(写真4)数千人規模の動員ができる、大型ライブ会場の天井裏に設置されたネットワーク機器。ここから数十mのLANケーブルを配信基地まで垂らし下げた。非常に質の良い回線で、常時、50Mbps程度出ていた。会場の担当者に、過去、ネット動画のライブストリーミングをやった他社があるかどうか、その時、問題なかったかどうかヒアリングすると、非常に有益な情報を得ることも。ここの会場の場合、過去にニコニコ生中継を行ったことがあったとのことで、ネット品質には安心していた。こういったネット接続が、会場によってサービスで無料の場合と、別途費用が発生することもあるので注意。


(写真5)養生テープの例。粘着力がガムテープよりも弱く、粘着の跡が残らないため、ホールなどでは、ガムテープの使用はNGだが、養生テープであればOKの場合が多い。ホームセンターなどで手に入る。(元々、梱包や工事用のもので、写真のような緑色のものが多い。他の色や透明のものもあるが、比較的取り扱いが少ない)

■野外の山中で行う場合
かつて、結局実現しなかったのですが、ある野外音楽フェスティバルをUstreamで配信できないか、という相談がありました。会場は山奥で、携帯電話の電波も怪しい場所があるようなところのため、無線ネットワークはNG。近くに管理棟のような建物は無く、回線を引く訳にもいかない。

では、どうしようと考えたとき、思いついたのが衛生中継でした。中継車を配信基地として、一旦、衛生を介して放送センターに映像を配信し、そこからネットを介してUstream中継を行う、といったことを提案しました。衛生中継というと、膨大な費用がかかるように思いますが、見積もってみたところ1時間100万円かからずに実現できることが判明しました。(高いと取るか、安いと取るかは、考え方次第ですが・・・)

ここから考えられるヒントとしては「必ずしも現場にネット環境が無くても、他の場所に映像を送って、そこから配信する」ということも考えられる、ということでしょうか。


(写真6)中継車の例。撮影機材や衛生にアップリンクする機材が搭載されている。コンサートの収録など衛生中継が必要ない場合でも、会場に横付けするスペースさえあれば、機材の設置・撤収が効率的な上、最近では時間あたりの単価も値下がりしているため、ペイする費用で手配できる、と営業を受けたこともある。
(Photo by By Paul Williams (Iron Ammonite))

以上、Ustreamを配信する際に、確認すべきことを「ネット環境」に注目して挙げてみました。他にもいろいろ気を使うべきポイントがありますので、次回以降、さらに挙げていきたく思います。