LINEビジネスコネクトの登場で加速する、顧客アテンションの奪い合い

金曜日のプランナーズブログをちょっと早めにお送りします。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

先週のFacebookによるメッセージングアプリWhatsAppの買収にひき続いて、今週もメッセージングアプリ業界が熱いです。

LINEは新サービス発表会「LINE Showcase 2014 Feb.」内で2月26日今後進める3つの新展開を発表しました。

・LINEから国内外の固定・携帯電話番号へ低料金で電話をかけることができる「LINE 電話/LINE Call」
・公式アカウントのAPIを活用し、様々なカスタマイズが可能になる「LINE ビジネスコネクト」
・ユーザーが制作したスタンプを販売できるオープンプラットフォーム「LINE Creators Market」

【LINE】LINE、グローバル市場での更なる成長に向け、「BEYOND LINE」をテーマに3つの新サービスを発表 

今日はこれらの中から「LINEビジネスコネクト」の詳細と、その未来についてお送りします。

LINEビジネスコネクトの概要

LINEビジネスコネクトの概要詳細はこちらをご覧ください。

【LINE】LINE、グローバル市場での更なる成長に向け、「BEYOND LINE」をテーマに3つの新サービスを発表

以下抜粋です。

「LINE ビジネスコネクト」を活用することにより、従来の企業公式アカウントのような、LINEユーザーへの一方通行のメッセージ配信だけでなく、特定のユーザーに対してより最適化されたメッセージを送り分けることができるようになります。

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例えば、これらの機能を応用することによって、公式アカウントへピザのスタンプを送信するだけで宅配ピザの注文ができたり、レンタルしていた商品の返却日前日にLINEで通知を送ったり、LINEから位置情報を送信してタクシーの手配をしたりするなど、様々な可能性が広がります。

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従来のスタンプやクーポン配布を前提とした、「企業→消費者」一方向のメッセージ機能ではなく、双方向でしかもそのユーザーにあわせてカスタマイズ自由度の高いコミュニケーションツールとして活用できるということです。LINEが自ら言うとおり、この機能は従来のメッセージ送信による「情報提供」だけではない様々な可能性を秘めています。ポイントごとに解説します。

ユーザーのスマホ上に「プッシュ」でお知らせ

2000年代前半、飲食店やカラオケ店では会員のガラケー向けにメールマガジンを配信していました。雨天時や客の入りが少ない時を狙って、割引情報をメール配信することで、その空席・空室を埋めることができていたからです。この手法が有効だったのは、ガラケーの迷惑メールフィルタがそれほど優秀ではなかった(到着率が高かった)ことと、メール着信時に即座にアラートが発され、ユーザーの目に届いていたから(情報到着の即時性)です。

その後、迷惑メールフィルタの高機能化でほとんどのメールマガジンは読まれる前に捨てられ、ユーザーの目に届かなくなり、ガラケーからスマートフォンへのシフトは、メールボックス方式がデフォルトの設定として採用されることで、情報到着時にすぐそれに気付かせることを困難にしました。

それらの欠点をかいくぐる事ができるのが、LINE公式アカウント運用の利点であり、今回のLINEビジネスコネクトにも採用されている、おおきな強みのひとつです。何しろ日常的には友人同士のやりとりに使用されているツールなので、ユーザーはすぐに新着情報を受け取れる設定を保っているのです。

メッセージの「既読」確認ができる

「既読スルー」という言葉が流行したとおり、LINE上でのコミュニケーションは相手の「既読状況」を取得することが出来ます。これはグループウェアなどタスク管理系アプリケーションでは標準搭載されていることも多い機能ですが、この既読確認が即時に取れるからこそ、単にメッセージのやりとり以外の使用用途が広がると言えます。

ビジネス活用時に、「相手がその情報をもう読んでいるか」どうかは、とても重要なシグナルです。LINEの発表会で発表があった利用例として、「タクシーの手配」がありましたが、手配場所の急な変更や、必要台数の変更などが必要となった時、ユーザー側が送る情報をドライバーが「既読」したかどうか状況がわかることで、ユーザーの安心感は大きく変わりそうです。

強力な情報到達力だからこそ「体験」を強化する用途に

しかし、いくら情報到達力が強力だからといって、従来のスパム認定されたメールマガジンようなメッセージを送ることには賛成できません。LINE公式アカウントでも、受け取るユーザーが「宣伝うざい」と感じた瞬間に離れていきます。
せっかくのビジネスコネクトなのですから、ユーザーの商品・サービス利用「体験」をより豊かにするために、これまでのユーザー体験の一部を、LINEビジネスコネクトに置き換えることで、より「便利」と感じさせることがゴールなのだと思います。

その、参考となりそうなのがスマホソーシャルゲームからのプッシュアラートです。

スマホを舞台とした顧客アテンションの奪い合いの時代へ

スマートフォンで遊べるソーシャルゲームの多くは、「スタミナ」システムをとっています。ゲームをしばらく遊んでいると自分の遊べる回数が尽きてしまい、ゲームを次に再開できるまでしばらく待たなければいけません。(すぐはじめたければスタミナ回復アイテムを購入することで再開可能)。ところが、ゲームから離れて数時間すると、ゲームからプッシュアラートで「ゲーム再開の準備が整いました!」という情報が届きます。そのアテンションで、プレイヤーはまたゲームに復帰するのです。

これには、ゲームのスタミナ状況を単に伝える以外にも、プレイヤーを「ゲームから離脱させない」という効果があります。多くのプレイヤーはゲームのことが「嫌い」になって離脱するのではなく、ゲームの事を「忘れて」離脱してしまうのです。

このソーシャルゲームの手法は、ビジネスでも利用できそうです。例えばコンタクトレンズのように定期的に購入が必要な物の場合、ユーザーの利用状況を元にした定期アラートをLINEビジネスコネクトで送ることは「店舗からユーザーを離脱させない」ために有効そうですし、顧客の記念日記念時間情報を元にしたレストラン予約のレコメンドなどは、ユーザーにとってもメリットのある「体験の強化」となりそうです。

スマートフォンシフトが今後ますます進んでいく中で、ソーシャルゲームやSNS・メッセージングアプリ間ではすでに、ユーザーアテンションの獲得合戦となっています。消費者の持つ有限な可処分時間のうち、どれだけの時間シェアを獲得できるかが、ゲームの売上・SNSの広告媒体力につながっていくのです。

今回のLINEビジネスコネクトの登場は、その競争に企業活動を参入させることなのです。消費者により近づくための企業戦略が今求められています。

 

アクトゼロ/黒沼透(@torukuronuma)