2013年YouTube人気動画で考える、企業のYouTubeプロモーション戦略

金曜日のプランナーズブログをお送りします。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

先週GoogleJapan公式ブログで、2013年の人気動画を紹介する記事が公開されました。きょうは2013年の音楽を除くグローバル再生数ランキングで上位トップ10入りした動画のなかから、企業によって投稿されたプロモーション動画3本をご紹介しつつ、2014年の国内企業のYouTube活用のこれからについて考えてみたいと思います。

年間再生数第5位 baby&me / evian

企業投稿ビデオ再生数の中で、もっとも多くのユーザーに視聴されたのは、ミネラルウォーター大手ブランドevian(エビアン)の「baby&me」でした。

街なかを歩いていた男性が、鏡に写る自分の姿が赤ちゃん姿になっていることに驚き、思わず鏡の向こうの赤ちゃん姿の自分と一緒に踊りだしてしまう。待ちゆくその他の人たちにも同じ現象が起きて…。という動画です。

エビアンはこれまでも、CG処理された赤ちゃんの動画シリーズを投稿してきましたが、その人気シリーズの最新版です。エビアンはブランドメッセージとして「Live Young(若々しく生きる)」を掲げており、そのメッセージをYouTube上で拡散が行われそうな驚きのある形=「ダンスを踊る赤ちゃん動画」で表現しています。

年間再生数第6位 Volvo Trucks / Volvo Trucks – The Epic Split feat. Van Damme 

Volvo Trucks(ボルボ・トラックス)の投稿した「The Epic Split feat. Van Damme」は日本でも大きな話題となりました。ハリウッドスターのジャン・クロード・ヴァンダムといえばアクション俳優として有名ですが、トレードマークとも言えるアクションの一つに彼の股割り(split)が有ります。英語圏では特にネタとして扱われるほどの共通認識になっているようです。

split-jcvdsplit jcvdのGoogle画像検索結果(jcvdはジャン・クロード・ヴァンダムの略称)

Volvo Trucksは今回の動画で、自社のトラックの持つダイナミックステアリング技術の正確さと安定性の証明を行おうと考えました。YouTube上で最もシェアされる見せ方として、そのテストを「2台のトラックの上でジャン・クロード・ヴァンダムに股割りをさせる」というストーリーを選択したのです。

年間再生数第8位 Telekinetic Coffee Shop Surprise

再生数第8位は、今年クロエ・モレッツ主演でリメイクされた伝説的なホラー映画「Carrie(キャリー)」のプロモーションで作られたサプライズ動画でした。

ニューヨークにあるカフェを改造し、客を装った役者を配し、テレキネシス(念動力)現象を様々な仕掛けで再現することで、何も知らずに店を訪れた客の反応を隠し撮りするという内容になっています。そのクオリティの高さで多くのユーザーにシェアされました。

1976年に公開された「Carrie(キャリー)」は、ホラー映画の金字塔として永く愛されている作品です。キャリーは学校で日常的にいじめを受けている女の子です。母子二人暮らしですが、母親は狂信的なキリスト教信者で、家庭でもキャリーは問題を抱えています。彼女には隠された能力が有り、念じるだけで物を動かすことができるテレキネシスの力を持っています。あるいじめ事件の罪滅ぼしとして、キャリーはクラスでも人気の男子生徒からプロムパーティに誘われます。そこで悲劇的で屈辱的な事件に遭うことで、彼女は自分の力を開放させ、パーティを、街を、全てを破壊し尽くしてしまうというストーリーです。

多くの人にとって馴染みのあるこの作品を、どのように知ってもらうか。ソニー・ピクチャーズは「CarrieNYC」という匿名アカウント上に、作品内の超常現象の世界観を「テレキネシスを再現したサプライズ動画」という手法で、YouTube上で共有したのです。視聴者がキャリーのプロモーションだと知るのは最後の数秒です。

YouTube上で企業が取るべきプロモーションの好例

国内でもYouTubeの企業活用がもりあがりを見せつつ有り、ネットマーケティングを生業とする各社はYouTube公式アカウントの運用サービス開始を続々と発表しています。FacebookやTwitterなど、ソーシャルメディア上での公式アカウント運用はかなり一般的になった感があります。しかし、YouTubeの企業活用で重要な事は、単にアカウントをTVCMのアーカイブとして「運用」しチャンネル登録数の増減に一喜一憂することではないと僕は考えています。

年間ランキングで上位に入ってきたこれらの動画はいずれも、企業が伝えたい、消費者と共有したいメッセージを、ただ単に映像化するのではなく、YouTubeに代表されるネット動画を楽しむユーザーたちが受け入れやすい・シェアしやすい「形」に変換させ、成功しています。他のソーシャルメディア運用と異なり、圧倒的に「コンテンツの作り方」が重要なプロモーション手法なのです。見ている側が思わずシェアしたくなる、そんな動画が出来上がった時、もはやシェアされる場はブログ・ネットメディアや、Facebook・TwitterなどのSNS上や、1to1のメッセンジャーアプリとなり、その時点で最初に投稿されたプラットフォームがYouTubeであることは、もはやそれほど重要なことではなくなっているのです。

赤ちゃんをリアルなCG表現で踊らせ、話題づくりに成功したエビアンも、ヴァンダムの股割りというネタに合わせてきたボルボトラックも、サプライズ動画(リアリティショー)の文脈にキャリーの世界観を落とし込んだソニーピクチャーも、消費者の「友だちに教えたくなる」心理をよく理解しています。YouTube上のプロモーションの成功とはすなわち、企業と消費者の「相互理解」の成功なのです。

僕たちは、クライアントとともにそういった動画コンテンツづくりを始めています。

アクトゼロ/黒沼透(@torukuronuma)

 

※蛇足
ちなみに2013年話題になったYouTube動画を見返していた時、一番腹抱えて笑ったのはこの動画でした。

 How Animals Eat Their Food → 動物はどうやってモノを食べるか。