何故あなたのソーシャルキャンペーンサイトがバイラルしないのか

こんにちは、アクトゼロの黒沼です。 

ソーシャルメディアインサイトです。今日は、ソーシャルメディア上での拡散を目論むキャンペーンサイト(プロモーションサイト・スペシャルサイトなど呼び方は様々ですが)の多くが、犯している失敗について考えます。

大きな予算をかけて、大量の広告を売っている割に、実際それほどバイラル(口コミによって感染が広がるようにネット上を広がる情報拡散)しないWebキャンペーンサイトは多く存在します。もし、あなたがそういったサイトの制作者、もしくは発注者で、ユーザーを楽しませる仕掛けが満載なのに、思ったほどネット上で拡散しないなら、「ユーザーの離脱ポイント」について真剣に考える必要があります。 

キャンペーンがバイラルするかどうかは、キャンペーンサイトを訪れるユーザーが、「キャンペーンを知り、コンテンツを体験して、拡散してくれる」まで、離脱ポイントを乗り越えられる形でコンテンツ体験フローをうまく作れているかどうかにかかっています。ユーザーの興味レベルの上下を棒グラフにすると、その軌道は、飛行機の飛ぶ姿のように表現できます。どこかで、デッドライン(地上)を一度でもクロスしようものなら、それ以降ユーザーの乗った飛行機は、二度と浮かび上がることはありません。コンテンツを体験する事なく途中でブラウザのタブを閉じてしまうでしょう。

一般的によくあるソーシャルキャンペーンサイトの流れを図にすると、以下のようになります。はポジティブ要因、はネガティブ要因です。何もないのに右肩下がりになっている部分は、ユーザーの興味維持の自然減衰です。重力で徐々に高度が下がるようなイメージですね。ユーザーは刻一刻と飽きていきます。一定で保っていることはできません。これは忘れがちで重要なポイントです。

ユーザーの体験フローのなかで、高度を上げる要因があるものは以下のようなものたちです。

  • 口コミによる前評判の高さ (影響大)
  • コンテンツパッと見の第一印象 (影響小)
  • コンテンツの面白さ (影響大)
  • コンテンツ体験後に得られるインセンティブ (影響大)

逆に高度を下げる要因としては、以下のような要因があります。

  • 個人情報を登録するような作業 (影響大)
  • ソーシャルメディアとのコネクト (取得内容で影響上下)
  • コンテンツ体験後のバイラル作業 (影響小)

ポジティブネガティブのそれぞれの要因は、ユーザーそれぞれによって感じ方が違うので、定量化できませんが、フローを改善していくことはできます。実際にソーシャルキャンペーンサイトの成功例を見ていきましょう。

intel “The Museum of Me”

Intel® The Museum of Me 

先月くらいに話題になったサイトなので、概要について細かく紹介しませんが、未体験の方はまず体験してみて下さい。この体験フローを図にすると、このようになります。

初見のユーザーにとってのスタート高度は、決して高くはありません。未来的な建物のパッと見のインパクトと、意味ありげなタイトルで期待感を高めています。ソーシャルコネクトは何とか乗り切れるくらいの高度だと思います。

その後の、博物館体験の新鮮さは多くのユーザーにとって未体験なレベルでしょう。ここで一気に高度が上がります。コンテンツ体験後のバイラル時点で、ユーザーはかなりポジティブな印象を保てているため、その印象をメッセージに込めて拡散します。

結果その口コミからコンテンツを訪れたユーザーは、もっと高い高度からスタートすることになるのです。

Google Chrome Experiments “All Is Not Lost” 

Google Chrome Experiments All Is Not Lost

GoogleとOK Go(音楽)、Pilobolus(ダンス)のコラボレーションで制作された、Google Chrome専用のHTML5コンテンツです。未見の方はまず体験しましょう。この体験の流れを図にすると以下のようになります。

スタートは、GoogleChromeでしか見ることができないという時点で、かなり低調です。更にメッセージの内容をユーザーは用意する必要がありますが、ここはソーシャルコネクト不要の入力フォームで乗り切っています。

複数窓によるHTML5での動画再生で、これまでにないコンテンツ体験をユーザーに与えますが、このキャンペーンのうまいところはキャンペーン全体がメッセージカードとして機能するということです。バイラルをしたくなる仕組みとして、キャンペーンサイト全体が設計されているのです。通常、ユーザーの「手間」となるはずのバイラル作業が、このサイトでは、ユーザーが喜んで自らの意思で行うインセンティブとして機能しているのです。

 

ダメなフローと、その対策

バイラルまで至らないダメな実際のキャンペーンサイトを上げることは、誰の得にもならない気がしますので、陥りがちなパターンとその対策を、以下に紹介します。

極端な例ではなく、このパターンがもしかしたらほとんどじゃないかと思うダメな例。知名度の低い企業がプレゼンターで期待度を高めにくい場合や、一般に受け入れられなさそうなコンテンツ内容だと、ソーシャルコネクトすらしてもらえません。当然バイラルしません。第一関門のソーシャルコネクトはせめて超えられるだけのキャッチーさを、イントロで用意しましょう。

同じパターンで、複数人のユーザーを集めないと始めることすらできないキャンペーンも、余程のインセンティブを用意しないとバイラルは難しいでしょう。(余談ですが、フラッシュマーケティングは、「激安」であることで、そこが何とかカバーできているビジネスモデルといえます。)

ゲーミフィケーションと言う言葉が流行っていますが、キャンペーンサイトをゲーム風にした場合のコンテンツで多くみられるのがこのパターンです。ソーシャルコネクトまではうまくいったものの、じっくり遊ぶゲームにしてしまった結果、コンテンツの面白さのピークが、ユーザーに伝わる前にユーザーに飽きられてしまうというパターンです。MobageやGreeなどでソーシャルゲームを遊んだ方ならわかると思いますが、じっくり遊ぶタイプのゲームだとしても、はじめるとすぐに、ユーザーはレベルアップしたり、アイテムを手に入れたりします。その後も小刻みに、成長を実感できるイベントが続きます。開発者が「ユーザーは飽きやすい」ということをわかっているからです。10分プレイして、何も起きないようなゲームだと、多くのユーザーはその場でプレイをやめてしまいます。いかにその後感動的な大エンディングを迎えるとしても、それは作り手の独善といわざるを得ません。

ユーザーに多くのことを求めたい時は?

では、ユーザーに多くの「手間」を求めざるを得ないキャンペーン内容だったときは、どうすればいいでしょうか。複数人数をどうしても巻き込む必要のあるキャンペーンや、複雑な登録作業や特殊な作業を、ユーザーに行わせたい場合などです。

その場合は、ユーザーに手間なことをさせる前に、それに耐えられるだけのポジティブな体験を与えることです。先にユーザーに求めてはいけません。まずは与えることで高度を高めない限り、ユーザーはすぐにランディングしてしまうのです。

まとめ

結論としてまとめると、どれだけユーザーに楽しいポジティブな体験をさせられるかが勝負ということです。「頭にソーシャルコネクトを持ってくるとユーザーは離脱しそうだ」ということがわかっているなら、まずはユーザーにポジティブな体験をさせましょう。充分にユーザーの高度を上げてから、ソーシャルコネクトをすればいいのです。コンテンツの内容はかえなくても、体験の要素の前後を変えるだけで、ユーザーの離脱は減るはずです。順序をどうしても変えられないときは、その見返りを先に提示することで、高度の低下を和らげることができるかもしれません。

人に何かしてほしいときは、まずはその人のために何かしてあげる。

これ、ネットに限らず、ビジネスでもプライベートでもつかえる、コミュニケーションの基本なんじゃないかなと、僕は考えています。