週の真ん中、水曜日のソーシャルメディアインサイト、アクトゼロの山田がお送りします。
すでに何度かお伝えしているように、7月上旬から下旬にかけて、Instagramを活用した祇園祭の取り組みをFacebook上で行いました。
多くの方がご存じのとおり、Facebookページには、インサイトと呼ばれる機能があり、そこでFacebookページに関しての細かなデータを見ることができます。
祇園祭のFacebookページで、そのインサイトを眺めてみると、今年のデータと昨年のデータの比較から、ある一つの傾向が見えてきました。それは、コンテンツにより広がりとユーザーの反応に関わることです。
今回はそのデータを見ながら、Facebookページのタイムラインのマイクロビデオの現状について考えてみたいと思います。
「いいね!」は増えているのにリーチが減少
まず、Facebookページの「いいね!」数は、昨年から2~300いいね!ほど増加しています。特に有料の広告などを使用しているわけではなくオーガニックな増加になります。
そこで、投稿ごとの平均リーチ数を今年と昨年で比べてみると、ページの「いいね!」数が増えているのにも関わらず、全体の平均値でおよそ2割ほど減少していることが分かりました。
さらに、コンテンツごとに見てみると、昨年の写真と今年の写真の投稿比較では、ページ全体の「いいね!」数の増加と連動する形で、リーチも増えています。
しかし、今年初めて取り組んだInstagram動画においては、写真投稿の6割程度しかリーチしていないことが分かりました。
つまり、写真に関しては昨年よりもより多くの方にリーチしているものの、Instagramのリーチ数がかなり少なく、これによって全体の平均リーチ数が昨年より下がる結果となったようです。
「話題にしている人」も少なく
また、「話題にしている人」の数も同様の傾向で、全体の平均値では昨年に比べて下がっているものの、同じ写真というコンテンツを切り取ってみると、昨年よりも高い反応を得ています。
今年のコンテンツで比べてみると、Instagram動画の話題にしている人の数は写真の投稿の半分にも満たず、これが大きく全体の平均値を下げていることになります。
ここから分かるのは、今年の投稿が全般的に反応が少なかったのではなく、コンテンツごとに大きな差があったということです。
「反応率」は大きく変わらず
それでは、リーチしている人の中で「話題にしている人」がどれくらいいるのかを、「反応率」として見てみましょう。この「反応率」は、「話題にしている人÷リーチ数×100」%という数式で集計しました。
実は、全体でのリーチが減少し、話題にしている人も減少しているにも関わらず、反応率の値は昨年よりむしろ高くなっています。これは、“リーチ数”だけ、もしくは“話題にしている人”だけ下がっているわけではなく、双方が減少しているために、その割合に大きな変化が生まれなかったと考えられます。つまり、リーチさえすれば、話題にしている人の割合は、昨年と変わらないのです。
今年のInstagram動画は、昨年の写真投稿と同程度の割合でユーザーが反応していることが分かりました。
まとめ
以上、3つほどインサイトのデータを引用してみてみましたが、この数字の傾向から、いくつか結論付けられることをまとめてみたいと思います。
==========
①話題にしている人の数が写真よりも動画の方が少ない=あまり見られていない
動画は時間が拘束されるため、写真に比べて閲覧のハードルが高まっている可能性が高く、「話題にしている人」の絶対数が減少している。
②話題にしている人が少ないことで、投稿のリーチも減少
「いいね!」やシェアといった「話題にしている人」の数が減ることで、間接的な波及効果も生まれず投稿ごとのリーチ数が減少している。
③拡散のループが生まれにくい
①と②の負のループによって、拡散の連鎖が起こりにくくなっている。
④リーチ(閲覧)さえすれば反応率は写真と変わらない
話題にしてる人の割合は変わらないため、閲覧してもらうことで、「話題にしている人」の絶対数を増やし、リーチを増やすことが可能。
==========
以上の点を見ると、タイムライン上での動画の投稿は、現状では、強力な広がりを生み出すにまだまだ難しい状況であるように思います。そのひとつの要因として、Facebookの閲覧にスマートフォンを利用するユーザーが多いことが考えられます。
実際、電車での移動中やちょっとした空き時間に、スマートフォンでFacebookを閲覧するシチュエーションを想像してみると、動画をクリックし再生するという“立ち止まる”アクションを取るユーザーは非常に限定的なのではないかと思われます。現に、一度再生してもらえさえすれば、きちんと「いいね!」やシェアに繋がることは、投稿ごとの反応率において、写真も動画も大きな差がないことが大きな裏付けとなっています。
こうした点から、今後のマイクロビデオの広がりは、ユーザーが自身のニュースフィード上で動画を見るという行動が定着するかどうかが、鍵になると考えます。
Youtubeやニコニコ動画の盛り上がりを考えると、インターネット動画を見るという文化は根ざしているわけですから、ちょっとしたきっかけでSNS上での動画を発信するということと、フィード上で閲覧するということも、そう難しいものではないように思います。また、そもそもニュースフィード上にたくさんの動画が流れているとも言えない現状ですから、可能性は大いにあるのではないかと個人的には考えています。
アクトゼロ / 山田佳祐