「人をダメにするソファ」で考える、どうやって「話題」は拡散されていくのか

金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

「人をダメにするソファ」と言って何を思い浮かべるでしょうか?これは、今週ツイッターを中心に話題になった無印良品「体にフィットするソファー」の別名です。

体にフィットするソファ | 無印良品ネットストア

今回はこの話題を例に、どのようにネット上で話題拡散が行われるのかを検証してみようと思います。

体にフィットするソファを「人間を駄目にするソファ」と名付けたのは誰か?

体にフィットするソファ=人間を駄目にするソファ:よりぬきトトロさん~ととろぐ~:So-netブログ

はじめに、体にフィットするソファを「人間を駄目にするソファ」と紹介したのは誰だったのでしょうか?ウェブ上で調べるかぎり最も古いのは、体にフィットするソファ=人間を駄目にするソファ:よりぬきトトロさん~ととろぐ~:So-netブログによる紹介記事(2009-08-21)です。拡散にあたって「人間を駄目にするソファ」というキャッチーな名付けが大きな役割を果たしたことは疑う余地がありません。

その後、このソファが紹介されるにあたり、快適すぎて起き上がれない使用感を伝えるために駄目人間クッション的な表現は散見されるようになります。

無印良品「体にフィットするソファ」新装発売へ、このソファはマジでヤバイ|ピカピカニュース2ch(2011/09/17)

 

日記帳: 人間をダメにするクッションを買った(2012/10/17)

話題の商品なのですが、この時点ではまだ大きな拡散は起きていませんでした。

3年前の記事をリバイバルさせたのは誰か?

では、今回の拡散のキッカケはどこで生まれたのでしょうか?

無印良品の「人をダメにするソファ」が快適すぎてヤバイらしい – NAVER まとめ

誰でもまとめ記事を簡単に作成できる「NAVERまとめ」上でnarumi氏(@narumi)がまとめた「無印良品の「人をダメにするソファ」が快適すぎてヤバイらしい – NAVER まとめ」がすべての始まりでした。narumi氏は、かつてもNAVERまとめ上で、自身のダイエット記録を克明に記録した「1カ月半で10.5kgダイエットした人の全食事記録」で、1,000万Viewを叩きだした人気まとめ作成者です。フォロワー数も3,000人を超え、その質の高いまとめは多くのTwitterユーザーに注目されています。

TOPSYによる解析

今回のまとめが投稿された5/27日にはTwitter上での言及数は8,000ツイートを超える人気記事となりました。(TOPSYによる解析)

さらなる二次拡散を生む「ブログ」

NAVERまとめ上の一次的な拡散の後、次の拡散はブログ上でおきます。

【気をつけろ!】無印良品の「人をダメにするソファ」が快適すぎて本当にダメになると話題に

ツイッター上での話題拡散を受けて記事に起こすブログが現れ始めます。人気ブログ「はちま起稿」もその一つです。ここでまた改めてはちま起稿の読者によってソーシャルメディア上での拡散が広がっていきます。NAVERまとめ公開後、その翌日の5/28のことです。

TOPSYによる解析

また、このタイミングではてなブックマークホットエントリ入り、Gunosyによる再拡散も合わせて行われ、それぞれのサービス利用者のネットワークにもこの話題が広がっていきます。

まとめ

今回のケースでは「個人ブログ」で発見された「人間をダメにするソファ」という話題が、数年の時を経て「NAVERまとめ」の利用者によって取り上げられるに至りました。それによりこの「話題」はTwitterを中心に広くユーザーに再拡散され、それがまた大手ブログ「はちま起稿」の目に止まり、はてなブックマーク上やGunosyなどでさらに大きく紹介されることとなりました。

現在のネット上の「話題」の拡散は、個人ブログ・ソーシャルメディアといった「話題を発見する機能」と、はてなブックマークやNAVERまとめ大手ブログやWebメディアなど「話題を選別し再拡散する機能」の内を相互にキャッチボールされる中で行われていきます。10年前のブログブームの時には、ブログとはてなブックマークくらいしかありませんでしたが、今はこれにソーシャルメディアとキュレーションサービス、大手Webメディアが加わることで、当時とは比べ物にならないほど情報の流動化と、価値ある情報の表出化が行われているのです。

アクトゼロ/黒沼透(@torukuronuma)

[おまけ]そして、最後にやってくるマスメディア

2013/05/30の時点で、拡散は一度落ち着きを見せています。今回の事例は当てはまりませんが、ネット上で大きな話題となったあと、最後にやってくるのがテレビ・ラジオ・紙媒体などのマスメディアです。「ネット上で話題!」という形で、改めて情報番組などで取り上げられることで、ネット上の話題は世間一般の認知するところとなっていきます。

ニュース等一次取材が必要な情報においては、[報道機関による取材→マスメディアでの発表→ネット上での拡散・論争]という流れになりがちですが、こと日常のトレンドや社会現象に関しては、[一般ネットユーザーによる発見→話題拡散→マスメディア上での再拡散→一般化]という逆の流れを踏むことも多く、トレンドの源流がマスメディアからネット上に移ってきているとも言えます。

そりゃ若い人がテレビ見ないわけだ。と、改めておもいます。

photo by Ardonik