映像をテレビで見続けてきた世代にとって、動画といえば横長が常識だと思いますが、これが覆されつつあり、今、”縦型”の動画が注目されています。
これは大方の皆さんの想像通り、スマートフォンの普及によるものです。片手で操作できるようにスマートフォンは基本的には縦長な形状をしていますが、スマホで動画を見る機会が増えている今、わざわざ横に倒して見なくてもいい縦型動画が受け入れられているのです。
実際、今年8月に行われた20~50歳代の男女700人を対象にした調査によると、動画を”縦向きのみ”で視聴している人は全体の34.7%を占め、昨年の27.6%に比べ増加しています。また逆に”横向きのみ”で視聴している人は28.4%と、去年の38.9%から大幅に減り、縦向きで視聴する人が、横向きで視聴する人を上回ったという報告があります。(Internetcom:スマホの動画、「タテ向き」視聴派が「ヨコ向き」派を上回る)
また、30秒以内の動画を見る人は「縦向きのみ」で見る傾向が強く、長時間の動画を視聴する人ほど「横向きのみ」で見る人の割合が高いという報告もあります。(MOBERCIAL:動画は縦?それとも横?スマホ動画の“6つ”の視聴傾向が明らかに!『モバーシャル調査』)
こうした縦向きのトレンドは、視聴だけでなく、ユーザーの撮影スタイルにも見られます。縦向きのまま動画を撮影するユーザーも多くなっているのです。
最近、ニュースをはじめとしたテレビ番組の中で、視聴者が撮影した動画を提供素材として使われることが多くなっていますが、実際、10月13日~20日の間、NHK・民放の報道番組を無作為に36本録画し、こうした一般からの提供素材動画を私が独自に調べてみたところ、約65%が縦型で撮影された素材となっており、縦型で撮影された素材が多かったことがわかりました。
一般からの素材41本中、27本が縦型動画でした。
動画の視聴・撮影ともに、確実にスマホシフトの影響で、「縦型」に向かいつつあるのです。
Webサービスやコンテンツ制作側も縦型を意識
こうした現状を踏まえ、サービスやコンテンツ提供側も、縦型動画に対応してきています。
YouTubeのモバイルアプリは昨年7月、Android版で縦型動画の画面をタップすると全画面表示できるようにアップデートされました。翌月8月にはiOS版にも提供されました。
動画の投稿も多く見られるソーシャルメディアサービスも縦型動画に対応しています。Facebookでもタイムライン上では正方形での表示になりますが、タップすれば縦型動画を全画面表示できるようになっています。また、かつては画像・動画は正方形での表示だけだったInstagramも、今では縦型での表示ができるようになっています。LINEでも縦型動画を推奨する動きが強まっているようです。
Webメディアでもこの潮流が見られます。C CHANNEL(シー・チャンネル)は国内初の縦型動画によるサービスを提供しています。
このサービスでは、10~20代女性が主なターゲットで、ファッションやメイクなどのように女性が興味を示すようなコンテンツを配信しています。SNS用の画像や、自撮りなど、日常スマホカメラで写真や動画を撮影する機会の多い女性にとって、縦型動画は相性が良いのでしょう。
また、既にローソンをはじめとする企業が、C CHANNNEL上で縦型動画によるプロモーションに活用しつつあります。
さらに、ミュージックビデオや映画コンテンツなどでも縦型表示を前提に制作される事例も見受けられます。
女子6人組アイドルグループの「lyrical school(リリカル・スクール)」が今年4月にリリースした、メジャーデビューシングル「RUN and RUN」のミュージックビデオは非常に話題になり、公開から一晩で5万回再生されたとか。動画のアイデアや演出も斬新で、まるで自分のiPhoneが乗っ取られたような感覚に陥ります。
7月に公開された、映画「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」。その記念に公開された縦型動画は、前掲のミュージックビデオ同様、スマートフォンユーザーにはおなじみの画面や動きによって構成されており、完全に日本向けの動画になっています。
縦型動画によるプロモーション
このように、縦型動画が今後より普及していくと、縦型動画による広告プロモーションの必要性も高まってきます。縦型動画といって想起しやすいのは、街頭で見受けられるデジタルサイネージではないでしょうか。
これまでのポスター広告から徐々に取って代わりつつありますが、特に鉄道の駅構内で複数の画面による掲示場をよく見かけます。Webスマホ用動画をサイネージへ、サイネージからWebスマホ用動画へと、一つの縦型動画によるコンテンツのマルチユースが可能になってきます。また、スマホはGPSにより位置情報が取れるため、サイネージの設置エリアに近づくと、サイネージとスマホが連動した縦長動画によるプロモーションなどもこの先考えられるのではないでしょうか。
動画のターゲットと、視聴デバイスにより、今後、動画の縦横の形状についても重要なポイントとなってきます。近々、私もTwitterキャンペーンの動画制作の提案の機会があるのですが、縦長動画にチャレンジしてみようと思います!