ご近所さんと情報交換「地域限定SNS」人気の高まり

FacebookやTwitterといった世界規模のSNSは地球上の全ての地域が対象であり、それが故に遠方や海外に住んでいる友人とも、日常のリアルな付き合いがあるかのように近況が分かり、コミュニケーションを図れることが魅力の一つです。その一方で、欧米では自分の住んでいる「地域」限定のご近所SNSが人気を高めているようです。

米国でメジャーな地域コミュニティーSNSサービスである「Nextdoor」が先月、英国に進出することが伝えられました。(参照

20161014_01

Nextdoor

Nextdoorは2010年にサービス開始し、現在では全米の65%以上を占める11.2万地区で利用されています。市町村よりも小さな地区単位ごとで運用される実名制のSNSで、アカウント登録にはクレジットカードや社会保障番号(日本でいうマイナンバーのようなもの)が必要になるので、なりすましは難しそうです。ニューヨーク市含めた650もの地方自治体がサービスに提携しているのも特徴で、防犯情報や停電や断水情報を提供しています。

こうした面から、ユーザーのサービスに対する信頼性も高いことが普及の要因の一つで、同じ地域に済むユーザー同士が、ベビーシッター探し・不用品の個人取引(◯◯売ります・無料であげますなど)・空き巣に入られた情報・塗装工や水道業者探しなど、様々な情報交換の場として利用されています。

http://abcnews.go.com/Technology/nextdoor-social-network-connecting-neighbors-reinvents-neighborhood-watch/story?id=18470589

実際、米国在住の方々のブログを覗くと、Nextdoorについての記事も少なくなく、「家のちょっとした用事でハシゴが必要になった時、Nextdoorで声をかけるとすぐに近所のだれかが貸してくれた」「ローズマリーが育ちすぎているので無料でとっていってくださいと投稿した」「みかんがたくさんなり過ぎ、かびてしまうと言う人の家にレモンを持参して交換した」「お勧めのクリーニング店を他のユーザーに教えてもらった」など、日常生活で有益な情報交換がオンラインを介してなされているようです。

このサービス、残念ながら日本ではまだ展開されていません。米国ではNextdoor内で1日500万件ものメッセージが交換されており、「ご近所SNS」として人気が高いサービスとなっています。

Nextdoorの広告展開

Facebook広告はユーザー属性データを元に、Twitterはユーザーの興味関心を元に、広告主がターゲットとしたい層に対してピンポイントに狙って出稿できることが広告主にとっての大きなメリットですが、このNextdoorは、ユーザーの評判が良いサービスの提供主の情報を広告として表示することによって収益を得ています。

Facebookでも在住地や職場の住所などといった生活の場でセグメントすることができますが、NextdoorではSNSの特性上、それがより狭くかつ的確にセグメントされています。Web広告は、それまでのテレビや新聞のように大資本が必要な広告を打てなかった中小企業でも、少額の広告費を目的のターゲットに効率的に広告を展開することができるようになった点がポイントでした。

20161014_04

Nextdoorでの広告は、中小企業よりも更に小さなビジネス、例えば個人の家庭教師やピアノ教室、個人経営のパン屋や魚屋などにも、自分の商圏に対して有効なSNS広告の機会を与えることになるでしょう。そして、これまでそうしたビジネスを対象にしていた広告、例えば街頭の看板広告、地域配布のチラシ、ポスティングなどが競合となることも意味します。

ユーザーが実際に生活を送っているエリアにセグメントし、確実なターゲットに対して打つことができる広告なのです。

日本での地域SNS

日本でも数年前、自治体が主導する形で、特に山村などにおいて地域SNSローンチのブームがありましたが、どれも立ち枯れてしまい、成功例は耳にしません。一方で、Nextdoorに似たような、自治体よりも狭いエリア限定のSNSが展開されています。

20161014_02

マチマチ

サービスのコンセプトは「ご近所さんと話そう。」近所の人と近隣のお店や、イベント・防犯などの情報交換を行うことが目的のSNSです。徒歩圏内(半径800メートル程度)の小さな地域単位でコミュニティーが形成され、2016年4月のローンチから2ヶ月間のベータ期間は、東京の10の地域のみが対象でしたが、6月からは対象が全国に広がりました。

自分の地域のコミュニティーを立ち上げるためには「リーダー」と呼ばれる存在が必要で、最低5人の初期メンバーを集めれば立ち上げることができます。登録時に住所が確認できる証明書(免許証や保険証など)と共に申し込んだり、マチマチが送ったハガキに記載されている登録コードを入力することで不正使用を防いでいるようです。7月時点で全国で500のコミュニティーが立ち上がったとか。

一方で、地域よりも更に狭い範囲である”マンション”においては、「同じマンション住民の方とは交流したくない」という回答が6割近くに上ったというアンケート結果もあります。

20161014_03

交流したくない方のご意見
・そこまで必要ない。会ったときにあいさつや立ち話必要があればメールをすればいい。
・全体に対する連絡事項等、便利なことがある反面、トラブルも起こりそうで、そうなった場合、不愉快な思いをするから。
・虚偽の事を書くつもりは全くないが、会った時に気まずい思いをしたり、顔を合わすのが億劫になる可能性が高い。会う機会が少ないから思ったことも書ける、そこが良いところ。
マンション・ラボ:同じマンションの住民と、SNSで交流したい?したくない?

核家族化・一人暮らしが増加する住環境の下、地域SNSはどのように展開されていくでしょうか。

日本では元々、井戸端会議・回覧板などといった地域ならではの情報共有手段がありました。私の母(70代)は今もご近所さんと朝夕の井戸端会議を欠かしませんし、家庭菜園の野菜が取れすぎればお裾分けをしたりしています。スマホを使いこなす高齢者が増えつつある今、地域SNSはもしかしたら、中高年・高齢者層がターゲットとなるのかもしれません。