海外旅行で直面する、言語の壁。でも最近はそんな不便も解消されつつあるようです。
私事ですが、今年の夏初めての一人旅でNYにいってきました。海外なら学生の頃何度か行ったし、読み書きも多少はいけるし(多分)…とたかをくくっていたら、予想以上に英語が喋れず…お店で注文する際も、ちゃんと伝わるのかハラハラしてばかりの旅でした。
そんな滞在中によく助けられたのが「CUPS」というスマホアプリです。
元々はNYの独立系コーヒーショップの応援を目的としたサービスで、定額飲み放題プランや回数券プランを前払いでクレジット購入すると対象店舗のどこでも利用することができます。スマートなUIで楽しくお店を探せて、通常よりもかなりおトクにコーヒーを購入できる点が魅力なのですが、個人的に最も助けられたのが注文の仕組み。
①各店舗のページで注文内容を入力し、②店員さんにアプリ画面を見せて特定の番号を入力してもらうと、③購入完了!あとは商品を受け取るだけ…と本当にシンプルなフローで注文が完結するのです。「スマホ見せるだけで買える…!」という便利さに感動し、お恥ずかしながら旅行中はちょくちょくお世話になっていました。
アイスコーヒーとクロワッサンも買えて一安心…
この他にも、自動運転タクシーが話題の「Uber」やブロードウェイのチケットが格安で買える「Today TIX」など、スマホで注文から購入まで完結できるアプリがNYでは主流の様子。これらは現地で暮らす人に便利なだけでなく、観光客にとっても注文時の不安を取り除いてくれるとてもありがたいサービスに感じました。
これを、日本に置き換えてみるとどうでしょうか。高い接客レベルに定評のある日本ですが、未だ外国語に苦手な人が多いこともあり、「言語の壁」をフォローしてくれるアプリは観光客にとっても接客する側にとってもニーズの高い分野といえそうです。そこで今回は、インバウンドの視点をおりまぜつつ、スマホ決済アプリの現状と今後の展開について考察してみたいと思います。
便利なスマホ決済アプリ、続々
日本国内でも、実はスマホ決済アプリが今年次々登場しています。
まず有名なものでは「スターバックス ジャパン公式モバイルアプリ」。
(参考:http://www.starbucks.co.jp/mobile-app/)
スターバックスカードをアプリ内で登録しておき、お好みのドリンクを入力して画面のバーコードをレジでかざせば購入が完了するという仕組みです。クレジットカードではなく、人気のギフトカードで購入というのが特徴的ですね。また、SNSを通じて友だちにドリンクを贈れる『eGift』など、ユーザー同士のコミュニケーションを楽しませてくれる点もニクい演出。こちらは元々海外で展開していたアプリを日本版でついにリリースしたという流れのようです。
次に、ネットショッピングと店頭のスマホ決済に対応する「Origami」。
(参考:https://origami.com/)
提携店でOrigamiを使うと、レジ端末などにスマートフォンをかざすだけで支払いがさくっと完了。財布いらずで簡単に買えて、しかもお買い物がおトクになったり、好きなショップや人をフォローしてほしい商品を見つけたり。新たな買い物体験を提供してくれる画期的なアプリです。すでに英語表記にも対応しており、様々な大手ショップと提携して商品や店舗情報を発信していることから、日本でショッピングを楽しみたい外国人観光客にも今後人気が高まりそうです。
最後に、中国観光客向けに展開されている「日本美食」。
(参考:http://www.japanfoodie.jp/)
中国におけるスマホ決済サービスの大手3社「銀聯(Union Pay)」、「Alipay」、「WeChat Pay」と提携し、観光客へ日本の飲食店案内と予約、そして決済までをアプリ内で完結できるという仕組み。中国語対応なうえに美味しいお店探しから決済までこのアプリ1つでまかなえるというのは、観光客にとってやはりありがたいもの。「爆買い」の波がやや落ち着き、モノよりも体験重視にシフトしつつあると言われる中国観光客へ、新たなおもてなしのサービスを実現しています。
これからの展開予想
最近のスマホ決済アプリを3つみてきましたが、いずれも決済だけでなく「お買い物体験自体の充実」や「注文から決済までスマホ完結」という点が特徴として見られました。また飲食店や販売店向けのサービスが中心となっていましたが、冒頭で触れた「言語の壁」を取り払うという点を鑑みると、今後はより”対話重視サービス”にこうしたスマホ決済アプリの可能性があるように感じます。
それは例えば、美容室(床屋)やエステなどの美容業界。
美容関連の施術レベルが不安定なアジアなどでは、日本の高い技術と接客が提供できるこれらのサービスは関心が高いとされるものの、利用する際言語の問題にやはり不安がつきまといます。そこで、あらかじめ注文したい内容や細かな要望を入力しておけるなど、双方のコミュニケーションを仲立ちしてくれるスマホアプリがあるとより利用客層の幅も広がるのではないでしょうか。
また、病院や薬局など医療分野においても言語の問題がこれまで多く取り上げられており、2020年に向けて受け入れ体制が見直しされる中、アプリを通じた新たなアプローチも期待できそうです。
観光客に店舗へ足を運んでもらうきっかけとなり、購入までをシームレスでサポートするスマホ決済アプリ。インバウンドにおける展開に今後注目していきたいところです。