こんなものまでサブスクリプション型サービスで!?

「サブスクリプション型」によるビジネスは、製品やサービスなどの一定期間の利用に対して殆どの場合には定額の代金を徴収するものです。期間中、製品・サービスは何回使ってもOKという契約になります。居酒屋などの飲食店でよく見られる、時間内なら何杯お酒を飲んでも一定額である”飲み放題”が分かりやすい例でしょう。

このサブスクリプション型ビジネス、インターネットやスマートフォンのようなデバイスの発展・普及により、ユーザーの管理が可能・容易になったことが普及の背景に挙げられます。2011年頃にアメリカを中心に展開されはじめ、今では日本国内でもさまざまなサブスクリプション型ビジネスが展開されています。

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ユーザー側にとっては、

・多くの場合、月額使用料のみで利用が可能のため初期費用を抑えることができる
・普通に購入してしまうとやがてその製品の機能は時間経過に伴い、古くなってしまうが、サブスクリプション型の場合だと常に最新のものを使用できる。
・サブスクリプション契約期間内は費用が一定のため、想定外のコストが発生しなく、予算管理が楽。

などのメリットが挙げられると思います。企業側としても、毎月の売上額が固定で見えてくるというメリットがあると思います。

サブスクリプション型のサービスは、Microsoft Officeや、Adobeなどといった「ソフトウェア」や、AWA・Amazon Musicなどのような音楽だったり、Hulu・Netflixなどのような映像などといった「コンテンツ」に対して展開される例が多いですが、最近では私達の日常生活を支えるものや、”こんなものまで!?”というようなものに至るまでのサブスクリプション型サービスが始まっています。

身だしなみ・コスメ・ファッション

特に男性の皆さんなら経験があると思いますが、T字と呼ばれる髭剃りの替刃、ストックを切らすとうっかり買い忘れてしまいませんか?また、替刃って意外と高かったりするんですよね…。この髭剃りの替刃が定額で毎月送られてくるサービスが「Dollar Shave Club」です。

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Dollar Shave Club

剃刀の刃は、定期的に交換したほうが良いのだそうです。このサービス、値段は刃の形状によって異なり、2枚刃5本で月額たったの1ドルです。4枚刃4本の場合は月額6ドル、6枚刃4本の場合は9ドルです。なかなか魅力的な値段だと思いませんか?更にストックを切らすこともありません。米国で多くのユーザーを獲得し、成功しているようです。今年の7月にユニリーバが10億ドルで買収したことも報じられました。(参考)また、日本国内でも同様のサービスが始まっています。(参考

「BIRCHBOX」は、2010年にスタートしたコスメのサブスクリプションサービスです。

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登録時に髪や肌タイプ・ファッションスタイル・美容の悩みなどをプロフィール情報とともに入力し、ユーザー一人一人にあった、5つの高級ブランドのコスメサンプルが毎月届きます。何が入っているかは毎回届いてからのお楽しみなのだとか。費用は月額10ドル。そして送られてきたサンプルを実際に使って気に入れば、BIRCHBOXのサイトからフルサイズのものを購入することができます。男性向けには身だしなみグッズのサンプルを詰めあわせた「BIRCHBOX Men」が準備されています。こちらは月額20ドル。

「Rent the Runway」は、米国で開始されたサブスクリプション型のハイファッションレンタルサービス。

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Rent the Runway

いくつかのプランが準備されていますが「無制限プラン」では、月額139ドルでサイト上のほぼ全ての高級ブランドのドレスやアクセサリーをレンタルできます。ただ、点数には限りがあって一度に3アイテムまでとなっています。

しかし、返却期限は無いので、何度も様々なアイテムを試したり、気に入ったものを1シーズン着続けるといった使い方も可能で、そのまま割引価格で購入することもできます。返却する際にクリーニングに出す必要もなく、送料も無料なのだとか。結婚式やパーティーなどに参加する度、ドレスを用意しなければならない場合などに最適ですね。

嗜好品

「VINEBOX」は、グラス1杯分のワインがサブスクリプション型で提供するサービス。

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VINEBOX

1ヶ月契約では35ドル+送料、年間契約では1ヶ月あたり30ドル+送料の費用で、世界中のワイナリーで作られたグラス1杯分のワイン3種類が届けられます。選ばれるワインは、1本あたり20~50ドル程度の価格帯なので、気に入ったワインがあれば気軽にボトルで購入しやすそうですね。その月のワインやワイナリーについての情報と共に送られてくるので、好きなワインを探したり、普段選ばないものを試したりと楽しめそうです。箱やミニボトルもスタイリッシュですね。

お店で飲むような、美味しい生ビールが自宅で飲めれば…。でもディスペンサーは大きすぎてまさか家に置けないし、樽は飲みきれない…。ビールファンなら一度は考えたことがあるはず。そんな夢を叶えてくれるのがこちら。

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HOPSY

アメリカ・カリフォルニアで展開しているサービスです。専用のディスペンサーは個人宅でも十分置けるサイズで、提携する地元のマイクロブルワリーのビールが2リットルのボトルに入って提供されます。ビールが空気に触れない構造になっているため、最長で2週間の賞味期限があるのだとか。費用は、ディスペンサーのレンタルで59.99ドル、買取の場合、299ドルからスタートすることができます。ビールのボトルは一本あたり22ドル程度。ボトルのお届けにサブスクリプション型のプランが準備されています。

そして我が国日本では、日本酒のサブスクリプションサービスが提供されています。

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SAKELIFE

日本全国に蔵元は5,000以上、日本酒の銘柄は20,000酒以上あるのだとか。こうした日本酒の中から厳選した1,000以上の銘柄から毎月、日本酒が届けられるサービスです。ユーザーの好みをフィードバックすることで、よりユーザーの好みに合わせた酒を提供しているのだとか。月額3,150円(四合瓶)の「ほろ酔いコース」か5,250円(一升瓶 or 四合瓶2本)の「ぐい呑みコース」が選択することができます。また、日本酒にあった酒器や酒の肴が隔月で送られてきたり、試飲会などの会員限定のイベントへの特別招待もあります。

こんなものまでサブスクリプションで

自動車が必要な時にだけ時間単位で利用する「カーシェアリング」が大分定着しましたが、月額定額で様々な自動車を選んで乗れるサブスクリプション型のサービスが開始されました。

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NOREL

自動車関連では有名なIDOM(旧:ガリバーインターナショナル)が提供するサービスです。定額で自動車を利用するというと、法人向けのリースでの提供を思い出しますが、このサービスは個人向けであることと、車種を自由に変更することができる点がリースとは異なります。

月額49,800円には、自動車の利用料だけでなく、自動車保険(任意保険)も含まれます。必要なのはガソリン代と駐車場だけで、自賠責保険料や登録費用、取得税等はかかりませんし、車検費用や自動車税も不要だとか。1台のクルマに90日間乗車後、次のクルマを予約申し込みすることができ、軽自動車から高級車まで100種類以上の車種が準備されています。中には高級外車も!勿論、費用は変わりません。

「夏休みにはSUVで子供とおでかけ」、「彼女とデートにはスポーツカーでドライブ」など、その時その時のシーンに応じて自動車を乗り換えられることができるこのサービス、なかなか魅力的かもしれません。

そして定額での乗り放題は自動車だけでなく、なんと飛行機まで!

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SURFAIR

「Surf Air」は、アメリカ・カリフォルニアで2011年に操業を開始し、カリフォルニアを中心とした12都市間で運行する路線を、月額固定のサブスクリプションサービスで提供しています。こちらのサービスが今年の10月からヨーロッパの各国で開始される予定です。入会に1,000ドル(約10万円)、月額2,500ユーロ(約29万円)でヨーロッパ圏内の路線が乗り放題になります。路線は、ビジネスの中心都市であるロンドン・カンヌ・ジュネーブ・チューリッヒなどに加え、2017年までにはドバイ・パリ・アムステルダム・バルセロナなども加わる予定だとか。友人や家族のためにゲストパスを片道750ユーロ(約8.5万円)で発行してもらうことが可能です。

ヨーロッパを飛び回るビジネスマンには安い金額なのかもしれませんね。

普及を続けるサブスクリプション型サービス

こうしたサブスクリプション型のサービスが普及しつつある裏には、「若者の◯◯離れ」といった言葉のように、無駄な消費を抑えたいという現代の人々の考えがあるように思えます。それでも企業は経済活動を続けるためにはこうした人々を相手にビジネスを展開していかなければならない。そのような状況で月額定額で初期費用が少なくて済む、サブスクリプション型サービスが受け入れられているのだと思います。

そして、モノの売れない時代、ライトに商品・サービスをユーザーに試してもらい、永続的な利用や、商材によっては買い切りの契機となるように企業側は考えているのだと思います。

サブスクリプション型のサービスの課題点としては、月額費用で提供されるサービスが永続的でないのかもしれないという点です。つい数日前から、月額980円で書籍・雑誌が読み放題になるAmazonの「Kindle Unlimited」で、人気の本のラインナップが消え始めています。(参照:2016.8.31 朝日新聞 アマゾン読み放題、人気本消える 利用者多すぎが原因?

Amazonは出版社側に利用料を支払っていますが、一部の出版社を対象に、年内に限り、規定配分に上乗せして利用料を支払う契約を結ぶことによって書籍の提供を促したのですが、「Kindle Unlimited」で想定以上のダウンロードがあり、出版社に支払う予算が不足したためなのだとか。

ユーザーとしては、毎月同じクォリティーのサービスが、毎月定額で受けることができるから利用する訳で、サービス提供側にそのムラがあっては本来ならないことです。もしかしたら確実に利用するためには、サービスの種類によっては買い切りを選択するべきなのかもしれません。内容を見極めて、賢く利用していく必要があります。