NHN JAPANが開発している日本国産メッセージアプリ『LINE』の人気が絶好調のようです。8月、ユーザー数は世界で5500万人、日本でも2500万人を突破したと発表されました。企業の公式アカウントやスタンプのリリース、タイムライン化など、このところSNS業界でも話題が絶えないサービスとなっています。
「LINE公式ブログ」より
通常webサービスは、なんでも早い段階でを購入・採用・受容する人々(層)である、イノベーターやアーリアダプターから徐々に広まり、やがて大衆層に普及していく図式が一般ですが、以前、弊社の黒沼の記事にあった通り、『LINE』はラガードやレイトマジョリティ側からユーザーを増やしてきている印象があります。利用者の中心が10代男性や20代女性であることも、この印象を裏付ける一要因ではないでしょうか。
ロジャーズの採用者分布曲線(@ITより引用)
元々、skypeのような無料電話が中心のサービスが、こうした普及を果たした理由として、ガラケー文化のエッセンスをうまくスマホの世界に持ち込んだからという指摘があります。以下、引用です。
持ち込まれたガラケー文化のエッセンスのひとつは「電話番号」であり、もうひとつは「スタンプ」だ。
LINEはスマホのアプリだが、スマホっぽいところが全然ない。たとえば普通のスマホアプリだと、アカウントを取得するのにIDやパスワードを設定したり、フェイスブックやツイッターと連携させたりといった登録作業が求められるが、そういう面倒さはLINEからは排除されている。そもそもログインという概念さえ排されていて、即座に使い始められるようになっている。
(佐々木俊尚の「ITインサイド・レポート」 第51回 「LINE」爆発的普及の裏にあるガラケー文化の巧みな利用法)
携帯の電話帳を核とした親交度の高い友だち同士のSNSだからこそ、盛り上がった理由なのでしょう。逆に、電話番号情報が全てサービスに提供されてしまうといった”セキュリティー面の不安”が、リテラシーがあるからこそイノベーターやアーリーアダプターは二の足を踏み、この層におけるヒットの波が小さかった理由かもしれません。
電車内でLINEを使っている女性を多く見かけるようになりましたね・・・。
もしや?と思ったあいつもLINEユーザーだった
私たちアクトゼロの社員は、仕事柄上、SNSのサービスは一通り触ってみる必要があります。私も、随分前に自分のAndroidにアプリをインストールし、社員同士で利用実験を行いました。その後、特に活用することなく放置していました。
ふと、数日前、久々にアプリをたちあげてみると、見慣れた名前が”友だち”の欄に出現していました。
「結婚したのに旧姓のままかよ・・・」とツッコミそうでしたが、
私の電話帳登録がそのままだからであることに気付きました。
私の妹、Nです。彼女は、典型的なレイト層に属している一人です。以前、突然スマートフォンに機種変更した際に、その使用感をインタビュー記事にまとめたところ、大きな反響を頂きました。(参照:レイトマジョリティに聞く、スマートフォンに代えて思った・感じたこと)
アイコンがデフォルトのシルエットのままであるところを見ると、友人に言われてインストールさせられ、結局使わず終いではないかと思いながらも、試しにメッセージを送ってみることに。すると、間髪入れずに返信が!!
N、なかなかやりますな。早速、後日、LINEの使用感や、周囲の仲間におけるLINEの利用度などをNに聞いてみることにしました。
Nに”LINE”についてインタビュー
妹のN。底抜けに明るい元ギャル(31歳)。
高卒で某ゴルフ用品店に入社し、地元埼玉の店舗で販売員として働く。
デジタルデバイス等のリテラシーはあまり高くない。
◆先日はLINEで失礼しました。
「いいよー。私、LINE使いこなしてるでしょ?すごいでしょ??」
とは言っても、チャットで少しやりとりしただけなのだが…。
「私ね、ぽんち(我が家の猫、ポンすけの愛称)の写真、撮ってここに貼りたいのよ。シルエットのところ。何かいい写真あったらくれない?私んちが飼ってる猫ですって感じでオシャレじゃん?」
後ほど、設定してやりました。
◆LINEはいつから使い出したの?
「Sって私と仲の良い友達が教えてくれて。Sはすごいのよ、今時だから。昔っからiPhoneとか使って、あれ何だっけ?ほら?あれだよ。何っつーんだ?自分のページとかあるじゃん?あのー、芸能人とかよくやってるやつ。」
ブログ?
「ブログ、ブログ。ブログやったりとかさ、もういっこなんだっけ?ブログに似た奴。」
Twitter?
「ツイッター!そう。それやったりとかさ、あと何だっけ?もういっこ。そんな感じのあるじゃん?」
facebookのこと?
「あ、フェースブック!笑 全然名前が出てこねぇ。とかやってるからさ、すげぇんだよ。美容室がいつも一緒に行くんだけど、その時にSがNに「ちょっとさ、LINE入れてくれない」って言われて、何それ?って聞いたら、スマホ同士だと電話が無料だから入れて、って言われて、そういうの興味ないからって言ったんだけど、いいから入れなさいと強引にやらされて、そっから始まり。そして、LINEやってからSの家族とコンサートとかよく一緒に行くんだけど、その時とかも全員で話せる(チャットができる)のね。そんな感じ。はじめてやったのは、5月。けっこう最近。」
◆Sちゃん以外の人はやってないの?
「ちょっと前、一緒にC(Nの友人)と遊びに行った時、電車で移動中にピローンって鳴って見たら伸(筆者)からのメール(チャット)が来てて、Cに、これLINEって知ってる?って言って「何それ?」ってなって。無料なんだってー、って言ったら、じゃあ、私もやるーって言って、Cもその場で入れて、それからしょっちゅうやってる。SとCくらいかなー、やり取りしてるの。」
この層のユーザーは、自発的にサービスを探して導入する例は少ないと思います。エバンジェリスト的な友人・知人からサービスの存在を知り、導入していく流れが自然なのだと思います。そして、誘われた自分自身がエバンジェリストとなって、新たなユーザーを増やしていく図が思い浮かびます。
学生時代からの友人である当社代表。Nはかつて何度か会ったことがあり、
電話番号を知っていたため、チャットを送ってみました。
N:「なんで敬語?」大爆笑。
◆友だちリストに他にもLINEユーザーが出てくると思うけど。
「なんかさー、面倒くさいんだよねー。あんま知らない、上っ面だけの人とやりあうのって。私、いい顔しいだし。私、基本、私で終わっちゃう人なんだって、メールとか。その後も続けようとしない子。あんま仲の良くない子も携帯に入りっぱなしで、ああ、この子入ってたんだって言う子もいっぱいいるじゃん?私、仲が良い子以外は連絡取るのめんどくさいタイプ。」
「C、ちょっと前に教えてあげたばかりなんだけどさ、私よりも使いこなしててあいつさ、『LINE、海外でも無料だねぇ。飛行機モードでも送れるか実験中』とかいって、オンにすると料金がかかるからどうするんだろう?って言いながらも、WiFiで繋げばいけるみたい、って。いろいろやってるみたい。海外でもそーするとタダなんでしょ?」
うーん、ホテルとかWiFiが無料で使えるところならね。町中だったらちゃんと設定しないと、パケット定額とか。
「そうなの!?じゃあ、Nみたいな素人の考えで、無料だと思ってバンバン気にしないで使ってたらすんげー金額になっちゃうじゃん?危ねぇー。タダだと思ってた。絶対、そう考えてる人いるよ。でも私、海外に行ったら結局ずっとオフにしていると思うけどね。」
Cちゃんはもともと、リテラシーが比較的高いタイプだったのでしょうね。一方、Nのように『無料』という印象だけが先走り、サービスの利用が無料ということと、通信費用は有料であることを結びつけて考えられない初心者も少なくないような気がします。こうしたユーザーへの注意喚起が必要に思います。
左はダンナのO君。未だにガラケーを使い続けており、スマホには興味が無い模様。
◆LINEは何が楽しい?
「メール(チャット)がシュっと(素早く)行く。何%とか待ってなくてもシュっと行くじゃん。楽ちん。私、加藤ミリヤちゃん好きだから、ミリヤちゃんのこういうの何か入れてる。」
ちょうど一年前の記事でも加藤ミリヤが好きとの発言が…。
◆スタンプとかどう?
「スタンプはカワイイのが無いよね。カワイイのが良いの。面白系が多いけど、ダサいのしか無いよね。有料のにもカワイイのが無い。あんま好きくないかな。昔、普通の携帯のとき、絵文字とか買ってたけど、今思うと何であんなに買ってたんだろうと思うね。もう年だね。あ、エヴァンゲリオンとかあるよ!これ100円くらいなんでしょ?それくらいなら買ってもいいかなって気になるよね。でも、結局、買わないで無料なのばっか使うから、変なやつしか無いんだよね。Sもね、見ると無料のばっか取ってるよね。この間、「なっちゃん」とかあったからさ。」
私から見ると、十分ラインナップが揃っているように思われる現行のスタンプショップでもカワイイのが無いという評価をバッサリ。この辺りの”カワイイ”感覚を的確に捉えることは、非常に難しそうですが、サービス提供側としてはクリアしなければならないハードルなのでしょう。
◆簡単・直感的な使用感
「でね、Sに教わった時、なんかフリフリなんとかしてって、スマホを振ってって言われて、そしたら、Sの携帯番号かなんかが入ってきた。やるなー、お前ーっつって。振ってると相手の情報が、パッと来るの。ここに。」
「このO(会社の同僚)の「関塚ジャパン」がどうこう言ってるの、これって何なの?」(以下、タイムラインについて解説する)
「パスワードとか、なんつーの?名前みたいなやつ (IDのこと?) そうそう。そういう面倒なのがないから簡単に使えてる。」
確かにお使いの方はお気づきでしょうが、LINEのサービス利用は本当に簡単で良く考えられて作られていると思います。「ふるふる」の機能により、加速度センサーとGPSを基にその場で友だちになる。「いいね!」や友だち申請の必要が無くタイムラインに表示する。ID・PWが無くサービスを利用できる等、まさに引用して前述した、ガラケーの文化が導入されているように思いいます。
◆結局、LINE使ってみてどう思った?
「楽だよ、Cとかに頻繁にメール(チャット)送るようになった。ほんとにそう。今までの普通のメールとかだと、次の休みに遊ぶ約束をして、その約束日まで全然しないとか。LINEだといっつもやってる。何か入ってくるし。簡単になったからその辺はいい。でも、本当に仲が良い子だからかなー。」
以上、Nのインタビューでした。いかがだったでしょうか。LINE人気の震源地であろう層の人間が、何を考えLINEを使っているかの一端をご紹介できたのではないでしょうか。