こんにちは、アクトゼロの山田です。
毎年この時期になると、ある事を思い出します。それは、クルマの点検を受けるために訪れた自動車ディーラーの担当者との会話で、かれこれ10年ほど前の事です。
点検が終了し、整備内容の項目の説明が一通り済んだあと、「お住まいの近所には猫は多いですか?」と、唐突に担当者は切り出しました。
その質問の意図をうまくくみ取れなかったため、質問に対して「猫もいますが、犬の方が多いかもしれませんね。」と答えると、「そうですか、冬になると猫の事故が多いので、ぜひ気を付けてもらいたいのですが、その方法として、クルマに乗り込む前にボンネットを叩くことをおすすめします。」という担当者。
その後、詳しく説明してくださったのはこういうことです。
冬になると野良猫が、エンジンがまだ暖かい、帰宅後のクルマのエンジンルームに暖を取るために入り込む。そのまま、ぽかぽかのエンジンルームで眠ってしまい、翌朝、外出のためにクルマのエンジンを始動した際に、その猫が巻き込まれてしまうことが良く起こるようです。エンジンルームだけでなく、タイヤと車体の間などにも入り込むようで、そういった事故を防ぐために、クルマに乗り込む前に、ボンネットをたたいて猫を追い出すのが効果的ということなのです。
以降、冬の寒い時期には、ボンネットを叩いてみたり、ちょっと強めにドアの開け閉めをしてみたりすることが、身についています。
#猫バンバン
こうした冬に多い猫の事故について、多くの人がまだまだ知らないようで、それを広める運動をしている自動車メーカーがあります。
その自動車メーカーとは日産自動車で、「猫バンバン」プロジェクトと銘打ちTwitterやFacebookを活用しながら、広める活動を行っています。
#猫バンバン プロジェクト開始!寒い時期にエンジンルーム等に猫がいないか確認しましょう、という活動です。フォロワーの皆さんの声にお応えし、ステッカーを作りました!#にっちゃん情報局https://t.co/3ueCBFFUkQ pic.twitter.com/HnKdV7hLVW
— 日産自動車株式会社 (@NissanJP) 2016, 1月 26
特設ページに啓蒙的なコンテンツを設置し、「#猫バンバン」というハッシュタグを設けて、一般のユーザーの参加による広がりも作り出すという手法は、特に目新しいものではありません。しかし、自社製品が絡む社会的な問題(あるいは業界的な問題)のひとつを解決しようとする日産の姿勢が、大きな共感を生んでいます。 このハッシュタグを付けた一般ユーザーの投稿は、毎日数十~数百にもおよび、ライバル企業である、ホンダ、スバル、三菱、そして、海外メーカーのフィアット、ボルボも賛同し、自社のアカウント上で発信を行っています。
今日も寒いですね!お出かけ前の #猫バンバン 忘れずに ^^ https://t.co/k0ksbAJBxD — Honda 本田技研工業(株) (@HondaJP) 2016, 1月 30
猫の日には早いですが、にゃんにゃんの日なので猫の話題を。日産@NissanJP さんの #猫バンバン プロジェクトのご紹介です!SUBARUも猫バンバンに大賛成!寒い季節はクルマに乗る前にボンネットをバンバン!猫がいないか、確認を。 https://t.co/QdZVmPF9Jj — SUBARU/富士重工業株式会社 (@SUBARU_FHI_PR) 2016, 2月 2
日産自動車さんが始めた #猫バンバン プロジェクトに共感し、シェアします!冬になると、寒さをしのぐために猫がエンジンルームなどに忍び込むことがあります。乗車前にボンネットをバンバンとたたいて、猫がいないか確認しましょう!お出かけ前のちょっとした思いやりで、猫はもちろん、ドライバーにとっても悲しい事故を減らしたいですね!
Posted by Mitsubishi Motors/三菱自動車 on 2016年2月1日
#猫バンバン プロジェクトに、FIATも共感します。冬の日、エンジンルームに猫たちが忍び込んでいないか、ボンネットをバンバン!日本らしい思いやりが、イタリアにも、世界中にも広まりますように。 @NissanJP pic.twitter.com/jwnkgicuFD
— フィアット (@FIAT_JP) 2016, 2月 2
(=^・ω・^=)。oO(ボルボも #猫バンバン 推奨~! 世界中のねこさんを救うぞ!) — VolvoCarJapan (@VolvoJapan2012) 2016, 2月 4
ヒューマンスケールという視点
こうした社会を巻き込んだ企業活動において、ソーシャルメディアの可能性を感じずにはいられません。
CO2排出量を削減する環境保護的な視点や、高齢化社会に向けた取り組みなど、企業が社会に貢献する活動は昔から積極的に行われています。もちろんこれらの取り組みは非常に重要なことではあるのですが、一消費者、もとい一個人として考えた時に、その活動の効果を日常生活で感じる機会はとても少ないはずです。
では、視点を変えてみてはどうか?実はよくよく考えてみると、日常生活の中には大小さまざまな問題が転がっていることに気付きます。そういった日常に近く存在する問題に対して企業としてできることを見出し、取り組むことが求められているように思います。実はソーシャルメディア全盛のこの時代では、企業の社会貢献活動は消費者を巻き込んでこそ、大きな成果を生み出すと考えられるのです。すなわち、グローバルだけを見据えるのではなく、ヒューマンスケールの身近な問題に取り組むという事です。
こうした背景には、ソーシャルメディア特有の繋がりにおける距離感が大きく影響しています。マスメディアを中心とした既存の関係が一対多数だとすると、ソーシャルメディアは、一対一の集合体と言えます。そうした点から、実感の持てるヒューマンスケールのアクティビティでないと、その価値を伝え広めていくことは難しいのです。
ここ最近、企業としてソーシャルメディアをどう活用していくのか迷っているという声をよく耳にします。例えば、企業の負う社会的責任を果たす役割であったり、自社を取り巻く環境の中にある問題を解決したりする手段として、再度見直すことも必要なタイミングなのかもしれません。
今回の日産のように、あまり知られていない猫の絡む事故があることを周知し、その事故を減らそうとする活動はまさにそうしたヒューマンスケールでの取り組みだと言えます。これから将来、こうした社会的責任を無視してビジネスを展開する企業は、消費者から見放され、淘汰されていくことになるでしょう。信用や信頼、社会の一員として企業が果たす役割は何なのか、しっかりと向き合わなければなりません。
アクトゼロ / 山田