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【書籍の一部を無料公開】ピンタレストは雑誌に代わり得るか「Pinterestビジネス講座(翔泳社刊)」より

Pinterestビジネス講座(翔泳社刊)

Pinterestビジネス講座(翔泳社刊)

ソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロ黒沼です。

先週に引き続き今日は、6/22~24あたりに発売される「Pinterestビジネス講座(翔泳社刊)」より、僕が執筆を担当させていただいた章「ピンタレストは雑誌に代わり得るか」について著者自らまとめたいと思います。先週は担当したもう一つの章「美しくわかりやすいUIの秘密」についてまとめました。そちらも良ければどうぞ。

Pinterestビジネス講座(翔泳社刊)」は、僕のほか、ガイアックスソーシャルメディアラボの井出一誠さん、ソーシャルメディアエクスペリエンスの深谷歩さん、ソーシャルメディア研究所の熊坂仁美さんなど、豪華な執筆陣ですので、ぜひお買い求めください。

ガイアックス井出さんはソーシャルメディアラボ上で、担当箇所の書籍内容を無料で紹介されています。是非そちらもどうぞ。
そうだったのか!初めてでも分かるPinterest|8つのトピックで使用方法、企業メリットなどを総まとめ【書籍を無料公開】

 では早速本題です。

ピンタレストは雑誌に代わり得るか

ピンタレストが続々キュレーター(あふれるほどある多数の情報から、価値のあるものを拾い上げる能力を持つ役割のこと)を再生産している仕組みであることは、先週お話しましたが、ではピンタレストは既存メディアにどういった影響を与えているでしょうか?ピンタレスト上で人気のあるテーマ「ファッション」について、既存メディアである「ファッションマガジン」との関わりを中心に、様々な角度から考えてみます。

キュレーションの主役は既存メディアから個人へ

ファッションの世界において、作り手であるブランドと消費者であるユーザーの間で情報を仲介してきたのは「ファッションマガジン」でした。ファッションの歴史を簡単に(少々乱暴に)説明すると、ファッションが「一部の富裕層のためのもの」だった時代から「一般消費者のもの」に変化していく歴史だと言えます。現在においては、ファストファッションに代表されるリアルクローズ志向の高まりや、ファッションブロガーの登場、日本国内においてはカリスマ店員→読者モデルへと、ファッションの日常化が進んで行きました。

ハイファッションマガジンなどの「権威」によるキュレーションから、「ブロガー」などより身近な存在へキュレーションの主役が移ってきたところで登場したのが、Pinterestなのです。

ピンタレスト上で影響のあるキュレーターは?

Pinterest上で人気のあるユーザーTOP10を見ると、その上位は全て個人ユーザーに独占されています。個人ユーザーが100万人を超える規模のフォロワーを獲得している反面、ファッションブランドや各マガジンが抱えているフォロワーは、数万人程度にとどまっています。

その理由のひとつとして考えられるのが、投稿できる画像の「著作権の壁」です。Pinterestに投稿できる画像には「画像の権利者であるか、もしくは著作権者に許可を得た画像で無くてはならない」という規約があります。これに違反することで訴訟などが起きた際には、Pinterestへの損害分や裁判費用も含めて、投稿したユーザーがその責任を負うことになります。(このあたりは、別エントリーの企業のPinterest利用を阻む「著作権」の壁を御覧ください)

先週の記事でご紹介したとおり、Pinterest上で公開されている画像の殆どはRepinされたものか、もしくは外部Webサイトから勝手に持ってこられたものです。著作権を厳密に遵守しているユーザーははっきり言って稀ですが、企業アカウント公式となると訴訟リスクを前に、画像投稿に慎重になるのも無理ありません。

企業アカウントが、「著作権の壁」の前でじりじりしているのを横目に、個人ユーザーは自己責任のもと、あらゆる画像の中から思うがままにキュレーションを発揮しているのです。

どんなものが共有されているのか

ファッションブランドの多くが、いまだにPinterest上に公式アカウントを開いていないわけですが、Pinterest上で全く画像が共有されていないわけではなりません。人気ブランドの商品画像は、公式アカウント上から発信するまでもなく、ユーザーによって外部サイトから持ち込まれる形で、Pinterest上を回遊します。エルメスの新作が発表されると、すぐにPinterst上には新作バッグの画像で溢れかえります。現実世界で人気のブランドや商品は、Pinterest上でも話題のもとであることには変わりないのです。

また、人気ブランドと同じくらいPinterest上で共有されているのが、ハンドメイドコンテンツの売買ができるサイト「Etsy」の商品たちです。Etsyの公式アカウントでは、今売買されているハンドメイドコンテンツの画像であふれています。常に新しく、2つとないユニークな商品画像が投下されているため、多くのPinterestユーザーに興味を持って共有されています。

人気ブランドの人気アイテムも、ここにしかないユニークなアイテムも、その商品(画像)に魅力があれば、ユーザーは共有してくれます。逆に魅力のない画像はどれだけ投下しても広がっていかない、厳しい世界だと言えます。

書籍ではこのあとGAPとkate spade new yorkの事例を紹介しています。

キュレーションによる過渡期を迎える雑誌メディア

VOGUE、ELLE、Marie claireなどのファッションマガジンを代表する重鎮たちも、Pinterest上においてはその影響力を強く発揮できていません。手探りで運用が始まったばかりとはいえ、フォロワーはせいぜい数千人を数えるばかりです。米のメディア調査機関PMA-The Association of Magazine Mediaの調査書では、雑誌メディアの好調さを表現する指針のひとつとして、「雑誌メディアがテレビ・ラジオ・新聞に比べて、いかに読者をウェブに誘導できているか」が、取り上げられています。もはや米国においては、ネットと雑誌は対立軸にすらなく、ネットに準じる存在になっていることがわかります。

Pinterestにおいても、その傾向は同様だと言えます。雑誌メディアが誌面で特集した商品を、改めてPinetrestユーザーはキュレーションのふるいにかけます。ネット上においてユーザーは、「雑誌」の持つ情報をも、キュレーション対象としてその他の情報とともに、ネタの一部としているのです。

 

2週に渡りまとめてきましたが、その他Pinterest活用にまつわる様々な情報が詰まったPinterestビジネス講座ぜひお買い求めください!