MCN YouTube

YouTubeがテレビになる日。MCN(マルチチャンネルネットワーク)の現在

金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

アクトゼロでは、企業ソーシャルメディアプランニング以外にも、YouTubeやニコニコ動画など公式動画チャンネル開設や運用設計も行なっています。今回はYouTubeチャンネルのちょっとディープな話題MCNについてお送りします。MCNはMulti Channel Network:マルチチャンネルネットワークの略で、複数のYouTubeチャンネルを、コンテンツ内容などでまとめたネットワークのことです。日本語ではほとんど情報がない状態ですが、海外の最新動向についてまとめました。テレビに代わるというより、英語圏では国境を超える一大メディアとしてすでに機能しつつある現状が見えてきます。

YouTubeで最も多く見られているインディペンデントMCN「Fullscreen」

では実際にMCNがどういったものか見てみましょう。

大手映像コンテンツホルダーや、音楽レーベルもMCNを多く開設しているのですが、そういった資本にとらわれない独立系のMCNの代表格といえるのが、この「Fullscreen」です。tubefilterによると、2012年12月comScore社調べの視聴者ランキングで、Fullscreenはこれまでのコンテンツ資産やバックボーンを持たない独立系MCNとして、最も多くのユーザーに視聴されています。引用:Fullscreen Now #1 Independent Network on YouTube 

Fullscreen – The Premier Global Network for Creators and Brands

Fullscreenが抱えている人気チャンネルの多くは、YouTube上で人気を誇る個人のパフォーマーたちです。音楽家やシンガー、コメディなどで自分のチャンネルを持つ個人タレントを多く抱えています。Fullscreenは10,000の登録チャンネルを持ち、1億5,000万人のチャンネル購読者を抱え、月間視聴数は25億ビューという、まさにモンスター級のMCNです。

登録チャンネルのパフォーマーの一人「Lindsey Stirling」は、ダンスしながら演奏するバイオリニストです。彼女のチャンネル購読者数は2,560,558人(2013/06/20現在)です。彼女のようなYouTubeのカリスマを多く集めることで、Fullscreenはひとつのメディアとして成功しています。

ゲーム専門の巨大MCN「MACHINIMA」

より特定の分野へ特化して人気を誇るMCNもあります。FPS(一人称視点シューティング)ゲーム動画チャンネルとして大きな成功を収めているのが、MACHINIMAです。

Machinima

数多くの個人プレイヤーチャンネルを、傘下に抱える一方でMACHINIMA自身のチャンネルでは、ゲームの最新情報やレビューなどが行われニュースメディアとしても機能しているのがわかります。

先日行われた世界最大のゲームコンベンションE3を中継するMACHINIMAチームの動画です。既存テレビと違い放送時間に制限がないためゲーム開発者へのインタビューがものすごく丁寧に行われています。

このMCNも月間視聴数は22億ビューを数える人気チャンネルです。最後に最も巨大なMCNを紹介します。

ミュージッククリップ見放題の人気MCN「VEVO」

VEVOは、ユニバーサル、ソニー、EMI所属アーティストのミュージッククリップが見放題の人気Webサービスです。ミュージッククリップのHuluを目指して作られたサービスと言われており、最新のPVが高画質で集まっています。※ただし、残念ながら日本国内からはアクセスできません。まあいつものことです。

VEVO

VEVO上のクリップのホスティングは、YouTube上で行われています。VEVO上であがった広告収入はVEVOを運営する各レーベルなどとYouTubeでシェアされるというビジネスモデルです。その関係もあってか、YouTube上にはこのVEVOのMCNが存在しています。MCN内にはRockOnVEVOEDMonVEVOのように音楽ジャンルごとにチャンネルが開設されています。ユーザーは好きなジャンルのチャンネルを再生しておけば、延々とミュージックビデオをBGVとして見続けることができるのです。

ちなみに日本のアーティストだと椎名林檎はEMI Music Japan所属なので、公式動画はVEVO名義で配信されています。

MCNの登場で国境を超えた巨大メディア化するYouTubeチャンネル。

MCNの登場はそれまでバラバラだったYouTubeチャンネルをまとめあげることで、巨大な規模と整ったユーザー属性を手に入れました。

規模の大きなMCNは自分たちのスポンサーを集めるために、営業チームを独自で抱えていることも多く、個別のチャンネルでは有力なスポンサーを集められなかった運営者も、MCNに所属することでよりよいスポンサーに恵まれ、MCNに所属する動画間のユーザー移動で新たな視聴者を獲得することができます。

そしてすでに視聴者数だけで見れば、一国のマスメディアの規模に迫る勢いです。国境を超えて、そのMCNの持つコンテンツに魅力を感じるユーザー層へ広くリーチできる、国境を超えた巨大メディアが既に完成しているのです。

日本国内でのMCN運用はまだ事例がない状態ですが、アニメなどポップカルチャーの分野で、海外でまだ戦えるコンテンツが日本にはあります。ただしそれらが多くの場合、海賊版や違法コピー・アップロードを通して消費されているのもまた事実です。
音楽コンテンツが違法アップロードとの戦いの末VEVOに至ったように、コンテンツホルダーにとってMCNの活用はパッケージ販売以外で収益拡大できる、有望な選択肢のひとつなのではないでしょうか?

アクトゼロ/黒沼透(@torukuronuma)