スマホビューを意識、動画は縦型が主流へ?

現代人にとって、通勤・通学のような時間潰しのツールとしてスマートフォンは必須で、電車の中でその画面を覗き見てみると、動画を視聴している人が多いのは皆さんもお気づきだと思います。私自身も数年前と比べるとスマホで動画を視聴する機会は着実に多くなっています。

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2017年10月3日に博報堂DYメディアパートナーズが発表した、「第5回動画サービス利用実態調査」の結果によると、動画サービスの利用率は着実に増加していることが判明しています。

動画サービスの利用率(調査日より1カ月以内の利用)では、無料サービスで75.2%、有料サービスで13.5%といずれも増加傾向にあり、前年同時期に比べ約9%伸長していることが判明しました。

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また、同調査の報告では、民放キャッチアップサービス(テレビ局によるネット動画サービス)全体と、その中でも特に人気の高い「AbemaTV」の利用率を見てみると、いずれも今回初めて約10%となり、前年同時期と較べて大幅に上昇したことも報告されています。

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近年、スマートフォンなどによるモバイル通信の高速化や、格安SIMの出現などによる低価格化、また、街中・公共交通機関や飲食店・カフェなどでの公衆WiFiサービスの普及で、高速通信が手軽に可能になったことや、スマホのスペック向上・画面の大型化などによって、手軽・気軽に動画を視聴できる環境が整い、スマホで動画を見るカルチャーが定着した結果であるといえるでしょう。

受動的に視聴する動画とは別に、ユーザーが能動的にSNSでシェアする対象も、写真から動画に変化しつつあります。

フェイスブックジャパンは10月3日、写真・動画共有サービス「Instagram」の日本国内の月間アクティブユーザー数が2000万人を突破したと発表した。2015年時点(810万人)と比べると約2.5倍に増加。全世界では月間8億人のユーザーを抱える。そうした成長の中、投稿内容にもさまざま変化が起きているという。
(ITmedoa「Instagram、国内月間2000万人が利用 2年間で2.5倍、「動画」投稿にシフト」2017.10.3)

上記記事中によると、日本では特に、昨年夏に追加された機能「Instagram Stories」を使った投稿が増えているのだとか。これは写真や動画を基に最大10秒のスライドショー的な動画が作成・投稿でき、公開から24時間後に消えるという機能です。通常の投稿よりも気軽に投稿・シェアでき、1日あたり世界中で約2.5億のユーザーがこの機能を利用していると報告されています。

ちなみに、ニールセンによる最新(2017.10.2発表)の調査では、Twitter・Facebookのユーザー数に比べてInstagramユーザーは、前年同月比43%増(1,706万人)と、飛躍的なユーザー数の増加率となっています。

ユーザーの日常の姿や行動が、動画によってSNSで気軽にシェアされるようになった今、その動画の形態に変化が出始めています。

SNS動画は縦型へ

2017年8月に、トレンダーズ株式会社が行った調査によると、1分以内の短尺動画を視聴する時、女性の6割以上は、スマートフォンを横にせず縦向きのまま視聴していると回答したと報告されています。

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ちなみに男性は44.2%がタテで視聴すると回答しています。縦視聴する女性を更に調べると、若い層ほどタテ型動画を視聴している傾向にあっただとか。「横にするのが手間」「横よりも縦の方が見やすい」などといった意見があったようで、動画視聴時にわざわざスマートフォンを持ちかえて向きを変えることをしない女性が多数派となっています。

こうしたニーズを基に、YouTubeも縦型動画に対応したり、若い女性がユーザーの中心層であるC CHANNELは縦型動画によってサービスを提供しています。

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C CHANNEL

縦型動画に限らず、動画はその構成や演出などをしっかり考え、撮影・編集しなければ視聴者の耳目を集めることができません。SNS向けの短尺動画であれば、展開のテンポが非常に重要なポイントとなります。

Facebookなどを中心に展開している動画メディア「THE PUBLIQ(ザ・パブリック)」。”スマホ世代に向けた縦動画メディア”としてサービスを展開していますが、そのコンテンツにいろいろ縦型動画のヒントが隠されています。

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是非、スマホからご視聴ください

テレビやPCを前提とした動画は通常16:9の画角で、その中でテロップ文字やデザインを配置することが定石ですが、縦型ならではのテロップ配置など非常に凝られています。縦型動画だと、テロップ文字を縦に置くと非常にフィットします。縦書きで表現できる日本語ならではの演出です。また、材料や手順を上から下へずらりと並べて表示するのも新鮮です。

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また個人的には、動画を早送りして1分程度で料理の手順を紹介する大量のレシピ動画に、最近やや食傷気味だったのですが、上記動画は、登場人物が視聴者に話しかけながら調理を進めていく演出が逆に新鮮(テレビの料理番組だと通常なのですが)で、編集のテンポも早くて非常に良く、総尺3分とスマホ動画にしてはやや長めではありますが、十分視聴しきれるコンテンツとして仕上がっていると思いました。

スマホビューを意識した縦型の動画は、横型の動画と比べると、撮影できる範囲が狭いですが、それはデメリットである一方、余計なものが映り込まないというメリットもあり、被写体に視聴者が集中しやすく、動画への没頭感・被写体への親近感を狙うことが可能です。

勿論、全ての被写体やテーマに縦型動画が向いている訳ではありません。自動車など、どうしても横長の被写体は横型の方がフィットするでしょう。しかし、スマホファーストで設計されるウェブサイトも増えている中、縦型動画はもしかしたら今後の動画制作での中心になっていくかもしれません。