現在では、インターネット動画によるライブ中継は、様々なプラットフォームで手軽に行うことができますが、その代名詞だったともいえるUstreamの名前が消滅することが発表されました。
3月21日にはUstreamのFacebookページの名称が変わっており、4月1日には公式ブログで「UstreamブランドからIBM Cloud Videoへと移行する」とのアナウンスが出ました。
概要は以下の通り。
・2017年4月1日に、UstreamはIBMへの移行が完了した
・UstreamはIBMが2016年1月に買収しており、IBMのビジネス向けクラウドビデオの柱に
・Ustreamのサービスを継承(一般向け大規模配信、クラウドでのBtoB配信、CDNとしての利用)
・Ustreamブランドをなくし「IBM Cloud Video」ブランドへ移行する
・「Ustream.tv」上の表示は、段階的に「IBM Cloud Video」へ移行まとめると「Ustreamブランドはなくなるよ、IBM Cloud Videoにするよ。サービスは以前のままだけど、BtoBメインにしていくぜ」ってことでしょう。 ついにUstreamは消えてしまうのです。
(「さらばUstream、10年で消滅。IBM Cloud Videoへ完全移行」2017.4.5 Yahoo!ニュース)
「誰でも気軽に、世界中に向けてネット生中継ができる」Ustream。2007年3月にサービスが開始され、日本では2009年末頃から流行りだし、2011年の東日本大震災ではテレビ放送の内容を配信したことで一般ユーザーにも認知されるようになりました。開始から10年でUstreamの名前は消滅し、IBMの名の元で、企業向けサービスを基軸に展開していくようです。黎明期から配信業務に携わってきた私としては、なんだか一つの時代が終わったように感じます。
何だか感傷的な雰囲気で記しましたが、上記のニュースが報じられた4月5日とその翌日、私自身、気が気でありませんでした。ちょうどその時、Ustreamによる大規模なあるイベントの配信業務を担当していたのです。まさかニュース発表のその日中にいきなりサービス打ち切り、ということは無いだろうとは思っていましたが、あまりにもタイムリーな話題だったので、満開の桜の時期、だいぶ暖かくなってきた気候の中、ひとりヒヤヒヤしながら動画配信を行っていました。結果的に事故なく無事に配信でき、ホッとしたのですが。
このような事態が予測されているのであれば、YouTubeやFacebookなどの他のプラットフォームで行えば良いのでは?というお考えは最もなのですが、クライアントが「広告を出さないで配信したい」という要望があり、こうした要望を叶えられる唯一のサービスが、Ustreamのアドフリープラスなのです。
Ustream以外のプラットフォームでは、広告による収入が収益源のため、配信前や配信中に急に動画広告やバナー広告が展開します。今回の配信の目的は、イベント会場に行けない多数の人に向けて配信する、という目的よりも、イベント会場に入りきれなかったお客さんに対し、別の会場を設けて、そこにライブ中継映像を上映するという目的の方が大きく、別会場の画面にデカデカと広告が上映されるのを避けたかったという理由があり、広告無しで配信できるUstreamを選択したのです。
無事に2017年は乗り切ったものの、すでに今年の振り返り・反省とともに、来年の準備が開始されています。(毎年、この時期に必ず行われるイベントなのです。)Ustream(IBM)が来年の今頃、今年同様のサービスを提供している確証は無いため、代替の手段を検討する必要がありました。
カスタムメイドで配信するサービスも多く存在しますが、当然有償で、見積をとったところ、費用感もなかなか高く予算オーバーで採用は難しい状況です。そこで、現在・将来考えられる、広告無しでYouTube Liveを配信する方法を整理してみました。
1.1万再生未満のチャンネルで配信を行う
つい先日、発表されたニュースから。
視聴回数が1万未満のチャンネルには広告を表示しないようにしたと発表した。
その目的は、YPP(YouTubeパートナープログラム)に登録するクリエイターの収入を守るためという。視聴回数が1万未満のチャンネルには、広告収入目的でクリエイターの人気動画や著作権を侵害する動画などを投稿するものが多いとしている。
この制限を設けることで、YouTubeはチャンネルの妥当性を判断するための十分な情報を得られるようになり、チャンネルがコミュニティガイドラインを順守しているかどうかも確認しやすくなるとしている。
(「YouTube、視聴回数1万未満のチャンネルは広告収入なしに」2017年4月7日 ITmedia NEWS)
YouTubeヘルプにも明記されている
「YouTubeパートナープログラム」を悪用し、アップロード主が権利を有さない違法なコンテンツを公開して収益を得ているユーザーが居る問題があり、その対策の一つとして打ち出されたのが、視聴回数1万未満のチャンネルに広告を表示”できない”という施策。1万を超えたら、YouTubeによる審査があり、認められれば広告表示・収益化できるようになりました。これにより、違法コンテンツに自社の広告が出稿されることを嫌って、YouTube動画広告を敬遠していたクライアントも、その態度を改めることが期待できるでしょう。
クライアント側とは逆の、コンテンツ提供側からすれば、”改悪”ともいえるこの改正は、奇して、広告を除外して配信したいという考えの私にとっては、まさに朗報でした。今回配信したイベントは今年の実績でのべ3000再生程度だったため、1万には程遠いですし、チャンネルを年間通して公開する必要が無い案件のため、1万に達する前にアカウントを取り直して、新たに再生回数ゼロから始めても問題が無いからです。
ただし、現在、スマホなどのモバイルによるライブ配信は、登録者数1万人以上のチャンネルのみが利用できるというレギュレーションがあるため、PCから配信することが前提となります。
2.受信側にYouTubeRedを導入する(現在、日本はサービス対象外)
アメリカなどで先行して展開されている、YouTubeの有料サービス「YouTube Red」。映画などのコンテンツが定額で視聴し放題になるだけでなく、無料の会員には無い付加サービスが提供されます。アメリカではAndroidユーザーで月額9.99ドル、iOSユーザーでは月額12.99ドルの利用料がかかります。
YouTubeRedで提供される付加サービスとは、YouTubeRedオリジナルのドラマや映画などの映像コンテンツが視聴できたり、Google Play Musicも利用可能、ネット環境の無い場所でもオフライン再生が可能になります。こうしたサービスの中、注目なのが「再生時に広告が表示されない」という機能です。動画再生時に流れるCMだけでなく、再生中に画面下部に表示されるバナー広告など、一切の広告が表示されなくなり、快適に動画を視聴することができるのだとか。
別会場の数だけGoogleアカウントを作成して、YouTubeRedに(1ヶ月分だけ)加入し、別会場のPCでYouTubeLiveを再生させれば、アドフリーで上映することができます。2016年中には日本でもこのサービスが展開されるのでは…と見込まれていたのですが、現在のところ残念なことにまだ展開されていません。
YouTubeRedの利用料で上がった収益の一部は、YouTuberに還元するとアナウンスされていますが、米国では、広告の表示頻度に応じて収益を上げてきたYouTuberらが、このRedに対して異を唱える人が多いといいます。一時期の影響度からはやや衰退したように思えますが、まだユーチューバーの世間に対する影響が強い日本において、ユーチューバーに配慮する結果、展開が遅れているのでしょうか。私としましては2017年度中になんとか展開してもらいたいものです。
Webサービスによるプラットフォームを利用するということは、自前で構築したシステムでない以上、サービス側の仕様に従わざるを得ず、全てユーザーの思い通りに設計できるとは限りません。逆に、サービス側から提示されている条件やレギュレーションなどを組み合わせることによって、ユーザーが実現したいことに近い環境を作り上げることが必要になります。