盛り上がるネットでの個人売買 ~Facebook Marketplaceからヤフオク・メルカリまで

Facebookは今月3日、Facebook上でユーザー個人間で物品を売買できる機能”Marketplace”を、アメリカ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランドで開始しました。

Facebook Newsroom  Introducing Marketplace: Buy and Sell with Your Local Community

PCではなく、モバイル(スマートフォン)での機能提供で、iOS・Androidともにアプリで利用できますが、近い将来、PCにも対応する予定で、利用可能な国も今後拡大していくようです。

これまでも、Facebookのグループ内においては2015年初頭から申請制で個人売買が許可されていました(参照)。既に毎月約4.5億人が個人売買を許可されているFacebookグループにアクセスしているという報告もあり、この盛り上がりに対して機能を強化してサービスを開始したのだと考えられます。

18歳以上のユーザーが利用可能。FacebookアプリでMarketplaceを開くと、自分の近所のユーザーが販売している物品の写真一覧が表示されます。

興味ある写真をタップすると、その物品の詳細情報や売り主のプロフィールや、販売する場所などが閲覧できます。また、商品を購入したい場合の発注ボタンや、売り主とメッセージで問い合わせる機能が準備されています。取引の交渉や、支払い・受け渡しの手順については、買い主・売り主が直接行うことになっており、Facebookによる取引の仲介や決済代行などのサービスは準備されていません。詐欺や規約違反をFacebookに報告することはできますが、トラブルに遭ったときの補償サービスなどは無いため、売買はユーザー同士の責任で取引を行うことになります。

感覚としては、地域コミュニティーの掲示板や、街角の商業施設の一隅にあるような「売ります・買います」コーナーのようなものでしょうか。

盛り上がるネットでの個人売買

Facebook Marketplaceのような、ネット上でのCtoCビジネスの市場規模は2013年度には2.3兆円に達し、その後も順調に成長し、2015年度には3.4兆円と前年度比で6000億円・21%増と推計している報告があります。(参考)BtoCのEC市場規模が14兆円近くであると言われている中、CtoCがその四分の一を占めるまで伸びてきており、無視できない存在感を示しています。

日本において個人売買といってまず思い出すのが、Yahoo! JAPANが提供するインターネットオークションサービスである「ヤフオク」ではないでしょうか。

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ヤフオク! http://auctions.yahoo.co.jp/

日本では1999年9月に開始され、現在では個人間売買プラットフォームではトップのシェアを誇っています。ユーザー数は、スマホからが約1800万人、PCからが約950万人で、出品されるアイテムは、1秒ごとに590個、1日で約5100万個という規模になっています。日本ではローンチ当時からヤフーの利用者が多かったため、出品者・落札者ともに集まりやすかった背景がありますが、ちなみにヤフーの利用者が伸び悩んだアメリカ・カナダ・イギリス・アイルランドでは2007年6月にYahoo!Auctionは終了されています。

参加には会員登録が必要で、出品・5000円以上での落札には有料会員登録が必要です。また、出品には手数料が必要になります。有料の分、出品者・落札者へのサービスは手厚く、お互いの個人情報が知られないように取引したり、Yahooがカード決済の仲介を行ったりする「かんたん決済」というサービスが用意されています。

その一方、オークションとは異なり、値段を確定した上で出品・購入する個人売買、いわゆる「フリーマケット」のオンライン版のような、フリマアプリが若い女性を中心に人気を集めています。

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メルカリ https://www.mercari.com/jp/

「メルカリ」は2013年7月にスマートフォンアプリとして配信が開始されました。1日の出品数は2015年で年間10万点以上で、2014年6月現在、スマートフォンからのサービス利用者数は、ネットオークションとフリマサービスを合わせたサービスの中、ヤフオク!、楽天オークション、モバオクに次ぐ4位で、フリマアプリサービスの中では最も多くのユーザ数を集めており、総ダウンロード数は2500万以上と言われています。

様々な物が出品されており、ラインナップはヤフオク!と似ている印象がありますが、手作りアクセサリーなどのハンドメイド商品も多く見かけます。アプリの利用に費用はかかりませんが、出品時に販売価格の10%の手数料が必要になります。また、支払いにも様々な手段が準備されています。

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個人間売買の市場規模の伸びを睨み、これまで様々な大手IT企業やベンチャー企業がフリマアプリのサービスに参入しましたが、大分淘汰され、現在、メルカリの一人勝ちの状況のようです。ファッションフリマに特化した「STULIO」が今年の1月に、「LINE MALL」も今年5月に撤退したりと、その競争の激しさを感じさせます。

今年3月に、メルカリは84億円という巨額の資金調達を行い、更なる成長を目指すようですが、昨年12月には、アパレルのオンラインショッピングサイトの大手、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが「ZOZOフリマ」でフリマアプリ業界に参入。業界の再編に繋がるのではないかという声も聞かれています。

 

Facebook Marketと、個人間売買の問題点

ネット上で展開される個人間売買は、欲しかったレアなものを発見できたり、相場価格よりも安く購入できたりとメリットが多くある一方、問題点も少なくありません。

Facebook Marketplaceの場合、ユーザー同士での直接取引になり、サービス提供者のような第三者が介入しないため、トラブルの可能性とどう収拾させるかが難しいところがあります。また、販売場所、つまりは個人売買なので居住地を公開する必要があり、プライバシーの観点から疑問点が残ります。

また、ヤフオクの黎明期から常に絶えないことですが、代金を振り込んだのに商品が送られてこない所謂詐欺や、不良品が送られてきて連絡が取れない、サイトに書いている情報と異なる内容のものが送られてきた、送料が着払いだった、などといったトラブルが絶えません。前述のサービスではサービス提供側がいろいろ介入することで大分改善はされていますが、個人間取引だと売買に対する意識が低く、本来法人ではありえない対応になってしまう傾向があります。

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更にいくつかのルール的にグレーな部分があることも否めません。

まず「税金」の問題。所得税法では、例外として「生活用動産の譲渡による所得」は所得税がかからないと定義しています。簡単に言えば、日常生活で自分が使用しているもの、例えば自分の衣服や本や家具、自家用車などは個人売買で売却OKです。しかし、趣味や副業としてオークションサイトやフリーマーケット等で販売して得た収入に対しては原則所得税がかかるのです。つまり、材料を購入して手作りしたアクセサリー、転売目的で購入した最新型スマートフォンなどは所得税の対象となる可能性があるのです。勿論、確定申告して税金を支払えば問題ありませんが、果たしてどれだけのユーザーがその認識を持っているでしょうか?

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そして売買する商材によっては別の法律違反になる可能性があります。大分落ち着きましたが、昨今のウイスキーブームと海外からの爆買いにより、人気の高いウイスキーが定価の数倍まで高騰した価格でオークションで取引されることが今でも見受けられます。酒の販売には酒販免許が必要であり、免許がないまま継続的に出品・販売していると酒税法違反になり、1年以下の懲役または50万以下の罰金が科せられます。

こうした課題点も多くありますが、ユーザーの人気と支持を受けているのは確かな個人売買。Facebook Marketplaceは果たして日本でもリリースされるのでしょうか?日本でサービスを行うには、決済や交渉などでサービス側が介入したり、居住地の公開は無しにするなど、日本人向けに大幅にローカライズする必要があるように思います。