人って案外ドライなものです。ことInstagramに関しては。
はじめまして、アクトゼロのたまゆと申します。いきなり不穏にはじめてしまいましたが、私がそう感じたのは、表参道で行われたファッションイベントでInstagramの投稿キャンペーンに友人と参加したときのこと。
フォトブースで写真を撮り、ハッシュタグ付きで投稿すればドリンクやノベルティがもらえるという内容で、参加者も多くイベントは大盛況。私も楽しく参加していたのですが、衝撃を受けたのは投稿後…もらえるものをもらったら、「ラッキー♪」と削除ボタンを押す友人たちの姿でした。
投稿設定から、さくっと削除。
こうしたイベントでの写真投稿キャンペーンは、気軽に楽しく参加できる一方で、特典目当ての方には”帳消し”にされてしまうことも少なくないようです。Instagramといえば写真を通じて自身の価値観やセンスを表現するSNSですから、「自分の趣味と違う」「やっぱり恥ずかしい」といった人が出てしまうのは仕方ないことかもしれません。
つい目をつむりたくなるところですが…やはり、参加人数と実施後の投稿数に乖離があるのは、キャンペーンの費用対効果を考える上でも避けたいところではないでしょうか。
”その場限り”ではなく、タイムラインに載せたい写真投稿とするために。企業としてどんなことを留意し工夫すべきなのか、僭越ながら見解を述べてみます。
どうして、投稿は消されてしまうのか
先ほども少し触れましたが、Instagramはユーザーのセンスに合致するかどうかがデリケートなSNSです。
タイムライン映えする投稿とするために、ファッションや流行への感度が高いユーザー層を意識して、キャンペーンにおいてもデザイン性やおしゃれな世界観が重要、という点は言うまでもないでしょう。その一方、今年アプリ利用者数が1,000万人を突破(ニールセン調査)し益々勢いづく中、裾野が広がったことでユーザーの嗜好・利用スタイルがより多岐に渡っていることにも注意が必要です。
たとえば、自分ではあまり投稿しない「見る専」のInstagramユーザーは半数以上に上ります。(マイナビ調査)
他のSNSよりも数値としては良好のようですが、投稿に対して受動的、消極的とも言えるユーザーが一定数はいるため、こうした投稿削除につながりやすい層に向けてもいかに乗り気にさせるかが鍵になってきそうです。
また、Instagramへのこだわりや意識が高く、独自でクリエイティブに使いこなすユーザーともしっかり向き合いたいものです。自らテーマを決めてコレクションを作り上げてきたのに、いきなりキャンペーン色の強い投稿はなるべく載せたくないものでしょう。写真のセンスが自己のアイデンティティにつながるSNSですから、どんな写真であれば載せたいか真摯にユーザー目線となることがなによりも重要だと考えます。
具体的な打ち出し方については、業界や企業・商品のブランドなど様々な要因が関わってきますので、今回は”すぐ消される”点に着目してどなたでも実現しやすそうなアイデアを次に挙げてみます。
1. 投稿への心理的ハードルを下げる
撮影時、投稿に対し消極的なユーザーへ余計なストレス・プレッシャーを取り除けるように配慮します。
例えば、モノや家族・友人などの写真は投稿できても、自分の顔を載せるのに抵抗がある人。そういう人にはイベントでフォトブースなどでビジュアル映えのする被写体を用意し、本人が写るかどうかを選べるようにするのも手でしょう。
またInstagramユーザーといっても、パーティのイケイケな雰囲気が苦手だったり、「おしゃれすぎる」写真を挙げるのは違和感がある…という人も当然います。男性に多そうですが、意外と女性もこうしたナイーブな感性の人は多いです。そこで、撮影を盛り上げるフォトプロップスにおいても、おしゃれアイテム以外にゆるい・面白系を組み込み、その人らしさが発揮できるようにするというのも有効だと考えます。
2. 投稿してくれた記事に反応を返す
投稿した記事に反応をもらえると、誰しもやっぱり嬉しいもの。友人などからはもちろんですが、企業から思わぬ反応をもらえた場合もユーザー的に満更ではないはずです(宣伝色は避けた方がよいでしょうが…)。
そこで単純ではありますが、参加者に投稿してもらってから極力すぐに、記事へ「いいね!」やコメントを入力するというのも対策の手としてありそうです。
キャラクターアカウントから可愛らしいコメントをもらったり、旅行や遊園地など特別な日に嬉しいコメントをもらったら、一気に好感度が高まりそうですよね。オペレーションとしての負荷は懸念材料としてありますが、企業アカウントの活用としてぜひキャンペーンと併せての展開を検討してみるのもいかがでしょうか。
3. リアルと連動した演出
Instagramに投稿すると、その場で印刷された写真がもらえるという仕組みが以前から広まっています。最近の事例では、今年7月に渋谷LOFTで実施された明光義塾『サボローの部屋』が大きな反響を得ていたようです。
このイベントでは、ハッシュタグ(#サボローの部屋)をつけてInstagramまたはTwitterに投稿すると、記念フォトカードがその場でプリントされるという特典が用意されました。プリントまでは多少タイムラグがありますから、投稿してすぐに消すと印刷できない恐れがあり、多少の時間稼ぎはできそうです。それになにより、写真を自宅に持ち帰ってもらえることで、投稿のみならずブランドとの関係性づくりに役立てられています。
また、イベントスペース全体で写真を撮りたくなる空気をつくりながら記念写真までの導線を設計している点も要注目です。愛嬌のあるキャラクターをうまく活かしながら、細部までユーモアのある演出で、こどももおとなも楽しめる世界観に仕上がっていますよね。写真投稿ありきではなく、どこを切り取っても写真映えする空間演出と体験の提供こそ、「タイムラインに残したい」というモチベーションにつながるのではないでしょうか。
写真投稿は、思い出とセットに行うもの
スマートフォンのカメラ機能により、写真を撮ることは日常と密接した気軽な行為となりました。その重みは昔よりも薄れつつあるのかもしれませんが、やはり根底にある「思い出を残したいから撮る」という想いはこれからも変わらないのではないかと思います。
写真投稿キャンペーンを企画するにあたっては、まずユーザーにどんな思い出を残してもらいたいかという点から考え、さらに投稿への意欲を高める、もしくは意欲を削ぐ要因を排除する工夫が重要となりそうです。