FinTech

FinTechで変わるお金の未来、生活者の目線から企業が考えるべきこと

こんにちは、アクトゼロの山田です。
FinTechというキーワードを様々なところで目にするようになり、一種のトレンドワードのように持てはやされています。
FinTechは、Finance(金融)とTechnology(技術)が合わさった造語で、ITやスマートデバイスといった最新のテクノロジーを金融分野で活用しようとする取り組みの事を表しています。

金融とITというと、ここ日本ではオンラインバンキングやオンライントレードといったものが思い浮かびます。しかも、それらの仕組みは比較的古くからあり、iモード(懐かしい!)の初期の頃から、残高照会や振り込みなどを携帯電話で行えていたと記憶しています。

日本での取り組みも活発に

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日本でも大手の三菱東京UFJが2015年から取り組みを始めており、直球にFinTechを掲げサービスの強化に乗り出しています。
2015年はコンテスト形式で新たなサービスのアイデアを募り2016年はハッカソンを開催するなど、スタートアップを意識する若い世代にアピールする形態をとっていることも特徴です。

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他にも、既存の金融機関だけでなく、新興勢力も生まれてきており、その代表格は「マネーフォワード」でしょうか。家計を管理するサービスで、様々なメディアで取り上げられる等、注目度は高いサービスと言えます。

欧米ではかなり盛んなFinTech、日本でもようやく盛り上がってきたと言えそうです。

テクノロジーに結び付くと当然ながらリスクも

実はこのFinTech、われわれの生活を便利にするという明るい未来を描く一方、懸念される点ももちろんあります。
FinTechによって生まれてきたサービスは、テクノロジーを掲げていることから、基本的にインターネットに接続し、多くの情報がそこに保持されます。クラウドの概念がベースとしてあり、タブレットやスマートフォン、パソコンといったデバイスを越えて同じ機能が提供されているものがとても多いのです。

そこで、まず考えなければならないのが、お金という極めてプライベートかつ重要な情報を、サービスを提供する民間企業に預けることのリスクです。
既存の金融機関が始める場合は、一定の信用は担保されていると考えられますが、全くの新しいスタートアップ企業だった場合、そこに情報を預けることのリスクをしっかりと見極める必要があります。利便性を重視して、なんでもかんでも依存しすぎると、情報の流出といったデータの消失といった事態に直面した時、多大な損害を被る可能性があります。

そしてもう一つ、既存のサービスとFinTech企業が連携する場合に潜むリスクです。
例えば、お店で使うポイントカード(代表的なのはTポイント)なんかは、カード発行時に登録した情報(年齢・性別)に加え、使った場所による行動履歴、利用したお店の傾向を元にした趣味趣向が、情報として保持されています。そして今後、それにFinTech企業が持つ個人の金融データまで関連付けられる可能性が生まれてきたわけです。

この場合、購買の履歴に加え、それによって変動した個人の資産状況が判断されることになるため、その個人の近未来の購買力が指標として換算できるようになり、その情報をマーケティングに活用するといったこともできるようになります。(あくまでも可能性ですが…)
このことによる良い点としては、その人が本当に最適なものを最適なタイミング、そして、最適な価格でレコメンドされるようになるため、売りたい企業と買いたい消費者の両者にとってメリットがあります。日用品の購入などを例に挙げると、必要とされるタイミング且つ、最も安く買えるタイミングで購入を促す仕組みを作ることができ、ユーザーにとってみると貯蓄の最大化を自動的に行うことが可能になります。
ただ、悪い点も当然あり、経済的な余裕に付け込んで無駄に高いものを買わせたり、詐欺といった犯罪行為に巻き込まれたりすることも想定されます。

企業側のマーケティング視点では、必要な人に必要なものを購入してもらうことで、当然ながら効率的に売り上げを最大化できるのは大きな魅力となり、そういったサービスを提供するFinTech企業が登場する可能性もあります。
ただ、消費者側に視点を変えると、非常にパーソナルな情報を元にしたレコメンドが行われるため、プライバシー面から良い印象を抱かない人達も一定数いることは間違いありません。ここで抱かれる不信感というのは、プライバシーに絡むため致命的で、信頼の回復には相当な時間が必要になってきます。そのため、短期的な利益だけで判断するのではなく、長期的な視点に立って判断しなければ、取り返しがつかないことにもなりかねないのです。

個人と企業が直接繋がるようになったソーシャルメディア以降のマーケティングにおいては、企業視点と消費者視点を両立させることが、持続的に結果を生み出すための必須のファクターとなっています。FinTechによって金融情報を持つことになる企業、もしくは、その情報を活用しようとする企業は、自社のビジネスだけでなく、そのことによる消費者側の視点を忘れないことこそが、求められているのではないかと思います。

アクトゼロ / 山田