LINE新展開後の未来予測

ソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼です。

今回は、カンファレンス「Hello, Friends in Tokyo」で発表された情報を元に、LINEが今後どのように変化していくのか考えてみたいと思います。まずLINEのこれまでについてはじめましょう。

LINE使ってますか?

少しプライベートな話になります。仕事柄この手のサービスは、とりあえず触ってみることにしているのですが、LINEサービススタートして早々にインストール後、特に使うことなく放置していました。

本格的に普及しているんだなと感じたのは、1年ほど前にガラケーユーザーでネットにさほど詳しくない妻がLINEを使いこなしていることを知った時です。「友だち同士の連絡を取るときに便利だから使ってる」とのことでしたが、当時彼女はFacebookの存在すら知らず、mixiをたまに覗くくらいで、twitterもやってない、ネットサービスについては「レイトマジョリティー」くらいに位置する存在でした。その友人たちも、僕の知る限り、似たようなタイプだったので、彼女たちがLINEを日常的に使いこなしていることは、僕にとってちょっとした驚きだったのです。

ネットサービスに詳しい同業者周りに話を聞いてみても、「FacebookだTwitterだといった最新ネットサービスに興味のない人」にこそ、普及している印象が共通していました。みなさんの印象はどうですか?

僕達がFacebookで連絡を取りあっている間、彼女たちはLINEでコミュニケーションを取りあっていたのです。これは、「LINEが通常のネットサービスとは異なったサービス普及の流れ」をとったことを意味していると僕は考えています。

LINEはどのように普及したか。

LINEはスタンプがあったから普及したのか?

LINEがこれだけ普及するにあたって、他の類似サービスとどう違ったのでしょうか?無料通話であれば、Skypeでもカカオトークでもよかったはずです。一般的に多く語られるストーリーは、LINEのメッセンジャーとしての特色の一つで有る「スタンプ」の存在です。通常の絵文字などと違い、テキストと切り離された形で登場する表情豊かなスタンプの存在が、コミュニケーションを便利にしていることがユーザーに評価されたといった評価です。

たしかにその要素もあったでしょうが、僕の考えはちょっと違います。LINEがここまで登録ユーザーを増やしてこれたのは、LINE上における「友だち」管理スタイルのせいだと考えています。

LINE上でのユーザーの扱いは「電話番号」が中心になっています。携帯端末からの登録時に自身の電話番号がLINEサーバーに記録されるのはもちろん、オプトインで「アドレス帳の連絡先を利用する」を選ぶと、携帯端末に入っているすべての電話番号がLINEに渡ります。LINEはここで集めた電話番号で、ユーザー同士の「友だち・知り合い」関係を判断しています。(2012/1/27の規約改定前までは、利用規約の中に埋もれていたので、無意識に同意していたユーザーも多いはずです)

図に簡単にまとめましたが、LINEユーザー同士でお互いの電話帳に番号が入っているユーザーは「友だち」として処理されます。片方の電話帳にしか番号が入っていない場合は入っているユーザーからは「友だち」、入っていないユーザーからは「知り合い?」と判断されるわけです。(ユーザーは、「自動友だち追加」機能を外すことも可能です)

つまり電話番号での「現実世界でのつながり」が、LINEを使い始めるとそのまま、「LINE上のつながり」として再現されるということになります。多くのメッセンジャーサービスのように、IDで友人登録したり、友人申請を送って許可を待ってみたりといった従来のやり方を、「電話番号による一括管理」という少し乱暴でそれゆえに有効なやり方で、スキップすることに成功しているのです。

僕はこれこそが、LINEユーザー拡大の核心だと考えています。

LINEのプラットフォーム化と未来予測

先日の記事の通り、LINEは他ユーザーのアクティビティの共有や、ゲームアプリの投下などで、よりFacebook、mixiのようにプラットフォーム化していこうとしています。膨れ上がったユーザー数を、どう活かすか考えた時の選択肢としてありうる形だと思いますが、今後この決定がLINEにどのように影響を与えていくか考えてみます。

◆SNSとして、Facebookと張り合えるだけの存在になるか。

ロジャーズの採用者分布曲線(@ITより引用)クリックで引用元へ

僕は結構いい勝負するのではないかと思います。理由は、FacebookとLINEのユーザー層の違いです。先ほどお話した通り、LINEは通常のサービスの利用開始の時に想定される「ロジャーズの採用者分布曲線」に当てはまらない形で、なかば強引にユーザー数をふくらませています。Facebookは各メディアや利用者の伸びが、イノベーター、アーリーアダプター、と順序良く伸びてきている印象がありますが、同じ図を使うなら、ラガードやレイトマジョリティ側からLINEはユーザーを増やしてきている印象があります。つまり、FacebookとLINEは現時点でユーザー獲得という意味では競合となっておらず、食い合う前のシェア拡大段階だと言えます。mixiのアクティブユーザーの割合が低い割合を推移する仲、僕はmixiの次のプラットフォームとしてLINEが選ばれる可能性は低くないと考えています。

 

◆LINEの強み「電話番号によるソーシャルグラフ再現」の限界

ただプラットフォーム化をすすめる一方で、LINEは従来のように電話番号を使ったユーザー拡大を行いにくくなっていく可能性があります。「電話に置き換わる無料通話サービス」であったからこそ、ユーザーは電話帳の情報を共有することを許してきたのです。これが、プラットフォームSNSサービスであれば、ユーザーはさすがに躊躇するでしょう。いま、Facebookやmixiが、「友だち管理をおこなうために、電話帳の電話番号情報を全部ください」といえば、ユーザーの猛反発を招くはずです。
LINEがプラットフォームSNSだという社会認知が進むにしたがって、 LINEを見るユーザーの視線は変化していくはずです。

 

◆サービスの多機能化をユーザーが求めているか

LINEを日常的に利用しているユーザーにとって、今後のLINEの変化は望ましい変化と映るでしょうか?メッセンジャーやグループチャットとして単機能アプリとしてLINEを使っていたユーザーにとって、今回の変化は必要な物でしょうか?
答えは「今後LINEがユーザーに何を与えるか」ということに、すべて集約されますが、これまでのメッセージアプリから大きく舵を切る事になることは間違いなさそうです。ユーザーに新しい価値を感じさせることができないまま、提供終了になったサービスを僕たちはいくつも知っているはずです。Googleにも山ほどそういったプロジェクトがあるし、Appleも同様の過ちを犯しています。もちろんFacebookも。NAVERはサービス事業者としての真価を問われることとなります。

NAVERまとめ」などで発揮しているNAVERの高い企画力や技術力で、この難題をどうクリアしていけるか、まさに腕の見せ所だと思います。

 

まとめ

個人的には、NHNグループのウェブサービスブランド「NAVER」「Livedoor」は、ともに日本を代表する「実戦的」なサービスブランドだと感じています。ユーザーのニーズに直球でサービスインしてくる姿勢は、腰の重い老舗ネットサービスブランドにはないもので、いちユーザーとしても楽しく使っています。世界と勝負できそうな日本発のサービスとしては間違い無く筆頭と呼べる存在の「LINE」。期待を込めて今後に注目です。