前回、基本的な「新浪微博」とはどういったサービスなのかをご紹介しました。今回はすでにアカウントを開設している日本企業側の視点に立って、どういった目的で「新浪微博」を活用しているのかを考えてみたいと思います。
業種で違う活用目的
中国市場に対するソーシャルメディアを活用する目的といっても、いくつかの事例を見てみると、実は業種によってかなり異なっています。では、実際の企業アカウントをご紹介しながら、その目的を探っていくことにしましょう。
■商品・サービス等、企業のプロモーション
今開設されているアカウントを見た時に、最も多い目的として考えられるのが、商品やサービスの中国内向けのプロモーションとしての活用になります。
とにかく、中国での販売拡大を目指す企業にとって、人が多く集まる中国内最大のSNSにコンタクトポイントを置くという戦略は理にかなっていると言えます。
■中国人観光客の誘致
一方こちらは、日本国内でのビジネスを主とする企業や自治体が多く、中国からの観光客の誘致を目的としています。
以前は富裕層が主だった中国からの観光客ですが、最近は一般層の海外旅行者も増えている傾向にあるようです。そういった、増え続ける観光需要に対し、その旅行先として選んでもらうべく、活用しているケースになります。
■来日した中国人観光客に向けたプロモーション
上記項目の延長線上にあるもので、実際に来日した観光客を想定し来店へ結びつけることを目的とした活用方法です。ホテルや旅館、飲食店や小売店などのアカウントがこれに当たります。
■学生の誘致
教育関連の企業もアカウントの開設を行っています。現在、日本語の語学学校を経営している企業のアカウントが多く目に付きます。また、それ以外にも日本への留学を考えている学生向けに情報発信をしているアカウントもちらほら出てきているようです。
■SEO対策
そして、もうひとつ忘れてはいけないのが、SEO対策としての役割です。前回の記事でもお伝えしたように、中国では独自のネットの検閲・規制が行われています。そのため、日本企業が中国市場を見越して、Webサイトの中国語対応を行ったり、独自のページを作成したりしても、日本のサーバーに置いているために、きちんと表示されないケースや、中国の検索エンジンではヒットしないケースが多いのです。そういった背景から、中国内のSNS上にアカウントを作成して情報を発信していくことで、上記の問題はクリアされ、効率的な情報発信のツールとしての役割を担っているのです。
「新浪微博」にアカウントを開設するにあたっての懸念点
このように日本企業が多く取り組み始めている「新浪微博」ではありますが、FaebookやTwitterとはまた違った点を注意する必要があります。
■言葉の壁
まず、何と言っても一番の懸念点は、中国語という言葉の壁です。TwitterやFacebookといった英語圏のサービスであれば、基本的な英語力があれば何とか理解可能でした。当然、日本語化もされましたので、大きな障害にはならなかったと思います。
しかし、中国語の場合は、漢字ではあるものの一般にはあまり馴染みのない言語ですので、使いこなせるだろうか・・・という不安が頭をよぎります。また、中国人をターゲットにするからには、当然コメントの投稿やユーザーからの返信にも中国語で返答する必要がでてきますので、一定の中国語力が求められるのは言うまでもありません。
言葉の問題は、翻訳サービス等を使うことで解決することは可能ですが、スピード感が求められるコミュニケーションにどれだけ対応できるのかは、まだまだ未知数だと言えます。
■政治的背景
そして、もう一つ注意しなければいけない点が、日本と中国の間にある政治的な背景です。非常に重要な要素として、中国国内の対日感情をきちんと理解する必要があります。
歴史に基づいた日本に対する国民感情への配慮から始まり、歴史的な出来事に由来する記念日などを把握し、それを踏まえた情報発信が求められます。もし、このような配慮を怠った場合、日本国内の比ではない“炎上”は当然のこと、日中間の政治的な問題に発展するリスクも秘めています。
一見すると非常にリスクが高い中国でのソーシャルメディア活用ではありますが、やはり中国のネット事情を考えると頼らざるを得ない状況と考えることも出来ます。
中国に向けて独自のWebサイトを構築したり、未経験のプロモーションプランを立てるよりも、中国の人々が多く集まるソーシャルメディア上にアカウントを開設して直接コンタクトする方が、リスクの少なさや効果の実感を得ることはできる状況だと思われます。日本国内で、すでにソーシャルメディアのアカウントを運用している企業にとっては、そのノウハウを生かすこともできる点は、非常に効率もいいでしょう。
まだまだ、中国でのソーシャルメディア展開の効果は未知数ではありますが、すでに多くの企業が走り始めていることも事実です。
この状況を、みなさんはどうお考えになるでしょうか?