金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼です。
今日はドワンゴが提供する「ニコニコブロマガ」の一般ユーザーへの開放と、ニコニコプラットフォーム活況の社会的な背景について考えてみます。
ニコニコブロマガとは?
ニコニコブロマガとは、ニコニコ動画や生放送などと同プラットフォーム上にある、ニコニコチャンネルにおいて有料メルマガなどを発行できるサービスのことです。特徴としてその名前が「ブロマガ(=ブログ+メールマガジン)」なことからも分かる通り、ひとつのテキスト記事が、ブログ形式、メルマガ形式、電子書籍形式に同時に変換され、ユーザーは自分の読みやすいメディア形式でそのテキストに触れることがあげられます。ワンソースマルチユースですね。
また、通常のメルマガスタンドではできないこととして、映像を使った有料会員向けの生放送番組などを配信できることが挙げれられています。有料会員向けのフォロー手段が豊富なので、メルマガで盛り上がった内容について、生放送でファンのために掘り下げて考える討論会をひらくといったことが可能になるのです。
いままで、ニコニコブロマガは、運営が選んだ著名人にしか公開されて来ませんでしたが、2013年1月よりこの機能が一般開放(月525円のプレミアム会員)されることになりました。
ニコニコ”ブロマガ”が一般ユーザーに開放、広告収益型メディアの構築に対応
ニコニコはプラットフォーム上で、ニコニコ動画での様々な表現者、ニコニコ生放送での人気生主たちなど、多くの人気ユーザーを作る仕組みに定評があります。ニコニコブロマガ セクションマネージャの宮原 敏久氏によると、
宮原 :たしかにニコニコでは多くの動画が投稿され楽しまれているのですが、動画はいわばリッチコンテンツで、誰もが作れるわけではありません。でも、文字はEメールなどみなさん何らかの形で毎日書いているはずです。ニコニコからは動画の投稿をきっかけにプロとしてデビューされるような方も生まれていますが、テキストの世界でも同じようなこと――つまり、作家としてデビューできるような場ができないかなと考えて、「ブロマガ」を立ち上げました。
かべ :なるほど。踊ってみた、歌ってみた、に続く「書いてみた」みたいな感じ!
宮原 :そうですね。誤解もあるところなのですが、メルマガをはじめたかったというよりも、ニコニコ動画同様、文字によるプラットフォームを作りたかったというのが大きいですね。でも、いきなり電子書籍だと何万文字も書かないといけませんから、今回のメールマガジンというのが、これから文字で何かを表現していこうという人には適しているのではないかな、と考えました。
「まつもとあつしのそれゆけ! 電子書籍」 【第19回】ニコニコ動画はなぜ有料メルマガ事業「ブロマガ」を開始した? | ダ・ヴィンチ電子ナビ
と、ニコニコ動画における映像表現、ニコニコ静画におけるイラスト表現などに加えて、言葉を用いた表現を行う人達のためのプラットフォームに踏み出したのです。
何者かになりたい人たちの時代と収益モデルの変化
インターネットの登場は、情報の受け手と発信者の一方向性を破壊し、誰もが情報発信できるように社会を変化させました。
「普通の人」と「特別な人」の距離がずっと縮まったように感じ、自分も向こう側にいけると考える普通の人が増えているのです。
ソーシャルメディアの登場や、ニコニコプラットフォームなどのコンテンツの発表の場の充実は、人々の何かを発表するハードルを下げ、そこでプラットフォーム上で「成功者」を生み出す事ができるほどの豊かさを持ちつつあります。
ニコニコ動画においては、初音ミクに自作の曲を歌わせる「P」や、人気の歌い手がメジャーデビューしたりと目立つ成功例が多く、プラットフォームに「有名になりたい」という若年層が集まりやすい空気感があります。若者のなかでも、目立ちたい、なにか表現したい、認められたい「何者かになりたい」と考えている層にとって、ニコニコプラットフォームの存在は最も優先度の高い選択肢になるのではないのでしょうか。
今回のニコニコブロマガの一般開放は、一部読者を多く抱える著名なユーザーから手数料を取るだけではではなく、最もボリュームのある「何者かになりたい」圧倒的多数のユーザー層から、薄く利益(今回で言うと、月額525円のプレミアム会員費や広告など)を上げることでも収益化するねらいがあると考えられます。
多くのブログサービスにおける有料プランの存在や、多くのビジネス書や有料セミナー、なども「何かになりたいという思いに課金する」という意味では同じことではないかと考えています。
ビジネス書ばかり読んでいても、デキる人には絶対になれない : J-CAST会社ウォッチ
もちろん今回の、ニコニコブロマガ上で新しい才能が数々と発掘されることでしょう。彼らは、有料読者を獲得しそれだけで生きていけるくらい、成功するかもしれません。
そしてプラットフォームは、成功した彼らを目指す、新しい挑戦者の参加費から収益を上げていくのです。