”ネット環境が使えない現場”からのUstream配信について整理

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過去に書かせて頂いたwebの記事等を通して、当社に頂くお問い合せが多くなってきていますが、その中でも、ネット環境が使えない現場からのUstream配信に関するご相談が多くなってきています。今日は改めて”ネット環境が使えない現場”からのUstream配信について整理してみましょう。

1.現場にネット環境がある場合

現場に使って良いインターネット回線があれば最も簡単に配信できる、と思いがちですが、その回線の”質”を見極める必要があります。例えば、会社のオフィスの場合、通常業務の回線と共用の場合、業務によってはUstream配信できる余裕が無かったり、逆にUstream配信のために、業務を妨げてしまう可能性もあります。また、下見時にはOKでも、本番時に偶然大型ファイルの送受信を行う業務が発生…といった事態も考えられるため、事前に調整しておく必要があります。

また、Ustreamは大量のファイルを送信し続けるため、会社のネットワークのセキュリティーに引っかかってしまったり、持ち込み機材をネットワークに接続する際には事前に許可申請が必要だったりすることもあります。

2.少し遠くにネット環境がある場合

例えば、イベントホールのような会場にはインターネット回線が無いが、裏の事務室になら使って良い回線がある、という場合。勿論、1で挙げた事項の確認が必要ですが、回線品質がOKの場合、そこからケーブルを引き廻す必要があります。これが一仕事で、セッティングの時間の殆どがこのケーブルの引廻しに費やされることもあります。人に踏まれたりつまづいたり、ドアや扉などに挟まって断線しない配慮が重要です。

LANケーブルの場合、規格上100mが最長のケーブル長になりますが、スイッチングハブを介することでそれ以上に延長できます。ですが、どうしても減衰してしまうため、長く延長するほど回線速度が落ちてしまうことを考慮に入れなければなりません。光ケーブルを用いた場合、最大10kmといった長距離でも減衰することなく通信できるようです、

 Buffalo 光メディアコンバーター

ネットワークを引き回すのではなく、逆に映像信号をネット環境の近くまで引き回す方法もあります。SDI信号は5Cの同軸ケーブルであれば最長100mまで伝送することができますし、光ケーブルを用いた機材を利用すれば最長2kmまで映像を伝送することができます。ただ、この場合、現場から離れた場所に、配信のシステムを組む必要があるので、映像チームと連携が取りづらくなってしまうマイナス点も生じます。

HDTV Optical Transmitter / Receiver

3.建物に光回線を引ける場合

自由に使えるネット回線は無いが、イベント用の光回線を引いても良い会場もあります。こうした会場では、配電盤まで光回線が這わせられているので、NTTによる10~20分程度の簡単な工事で光インターネットを準備することができます。NTTにイベント用に当日だけ使える光回線を引きたいと問い合わせれば相談に乗ってもらえます。3週間程度の期間と、数万円の予算で準備することができます。

しかし、会場の状況によってはもっと大規模な工事が必要だったりするため、必ずしも引けるとは限りません。また、大抵は工事をするための配電盤は、ビル内の管理室や防災センターといったところにあるため、そこから現場までケーブルの引廻しが必要になります。 

4.無線通信で行う場合

有線インターネットの利用・手配がNGの場合、無線通信で行わざるを得ません。WiMaxやE-mobileの利用になりますが、電波状況を予めチェックしていたとしても、本番時に多くの観客が入る現場では、状況がどう変わるか想像できません。WiFiも含め、無線通信は、有線インターネット回線よりもはるかに信頼性は劣るので、配信ができなかったり、中断するリスクが伴います。この点を事前に関係各所と共有しておく必要があります。

会場によっては電波が入らない場合も考えられます。以前、半地下のような会場で行った際には、USBケーブルを延長して地上の電波がある場所までWiMaxの端末を這わせたことがあります。USBケーブルは規格上、5mが最長ですが、ブースター付きのもので10mや20m延長できるものもあります。

Arvel AUR09GR
3本接続した先に、WiMaxの端末を接続して問題なく通信できました。

5.専用の無線通信機材を使う場合

無線ネットワークしか準備できないが、確実に配信を行いたい。そんな場合に活用すべきなのが、TVUPackやLive-Uといった専用の無線通信機材です。
<参照>
無線回線で映像伝送・どこからでもUstream可能な「TVUpack」 
移動を伴ったUstream配信システム~祇園祭中継の機材~
移動を伴ったUst配信が可能な「TVU Pack」がMiniになった!
いつでも、どこでもHDでライブ中継機材「LiveU」

写真上:TVU-Pack  写真下:Live-U

もともと、放送局が生中継放送時に取材現場の映像をスタジオに送信するための機材です。生中継を行うには、中継車や衛星回線を使わなければ実現できなかったのですが、それを3G等の携帯電話によるインターネット通信網を利用することで低コストで生中継を実現させたソリューションです。送信機には10本程度のUSBモデムを接続し、それらを束ねることでHD映像も送信できるような太い回線を擬似的に作って伝送します。複数のキャリアを利用できるので、電波障害などのリスクを軽減することができます。受信側も自動的に複数の回線のデータを一つの映像データに復元し、中継先の映像を受け取ります。

Live-Uの資料より

これらの機材のメリットは、

1.ネット回線が準備できない場所でも安全・確実にUstream配信が行うことができる。
勿論、各種携帯電話/データ通信サービスの電波が届いていることが前提ですが、どこからでも配信が可能です。また、カメラを持って移動しながら配信することも可能です。ただ、コンサートホール等では観客の携帯電話を鳴らさないために妨害電波(ジャミング)を出している会場もあるので、事前の確認が必要です。

2.現場でUstream配信の準備をする必要がない。 
現場は様々な準備や調整、突然の変更など、予想以上に忙しいものです。これらの機材は、一旦収録映像を別の場所に送り、そこからUstream等に配信することになります。忙しい現場でなく、落ち着いた場所で、インターネット回線が確実な別の場所からUstreamを配信することで、事故率を減らすことが可能です。 

これまでにTVUPackによってさまざまな場所や地域から配信を行って来ましたが、これまでに事故は一度も無く配信してきました。下手に品質の悪い現場のネット回線よりも、よほど信頼性が高いと言えます。当然、予算はある程度必要になりますが、ネット環境が無い場所から確実に配信する必要がある場合、非常に有効な機材といえるでしょう。

余談ですが、通信事業者も複数回線を利用することで高速回線を作り出す機材・サービス、もしくは回線速度を保証するサービスはできないものでしょうか。ある程度費用がかかったとしても、ビジネス用途で需要があると思うのですが…。

Photo by By Phillie Casablanca