Facebook「F8 2015」の発表で読むメッセージングアプリ戦争のこれから

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アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

米国時間2015年3月25日と3月26日にかけて、Facebookのデベロッパー・カンファレンス「F8」が行われました。そこで発表された初日の内容のなかで、注目を集めたのがFacebookメッセンジャーのプラットフォーム開放でした。Facebookメッセンジャーがどう変わるのかを中心に、競合のメッセージングアプリの戦略と比較しながら見て行きたいと思います。

Facebookメッセンジャーのポテンシャル

Facebook内のチャットツールとして提供された「Facebookメッセンジャー」ですが今は独立したアプリとしても提供されています。日本でメッセージングアプリと言うと「LINE」がまず浮かびますが、「Facebookメッセンジャー」を日常のメッセージングアプリとして活用している国も多いのです。以前の記事「WhatsAppを買収したFacebookがメッセージアプリ市場を丸呑みに。LINEは生き残れるのか。 」でも紹介したグラフを見てみましょう。

少し古くなりますが、スマートフォンの通信データ量チェックアプリを提供するONAVO社による2013年6月時点のメッセージングアプリのグローバルシェアを示したグラフです。WhatsAppが多くの国でトップメッセージングアプリとして活用されているのに加えて、Facebookメッセンジャーもまた一定のシェアを確保しているのがわかります。実質的には、FacebookがWhatsAppを2014年に買収していますので、実質的にはどちらもFacebookグループのメッセージングアプリです。

今回のF8でFacebookはメッセージングアプリとしてグローバルシェアNo.1のWhatsAppではなく、Facebookメッセンジャーのプラットフォーム化を発表しました。

Facebookメッセンジャーのプラットフォーム化とは

img_7d7da5e02d55bbe6923c8f9677b2ceb3185540F8の直前、Facebookはメッセンジャー内でお金をやりとりするペイメント機能をアナウンスしたばかりだが、F8では、「Messenger Platform」を発表し、開発者が自社のアプリやサービスにメッセンジャーでの共有機能などを組み込むことができる仕組みを用意した。
Facebook、「メッセンジャー開放」の破壊力 | インターネット | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト 

Facebookのプラットフォーム上でアプリを開発することが出来るように、今後は「メッセンジャー用のアプリケーション」をサードパーティの開発者が制作することが可能になります。これによって、今まで単純チャット機能しかなかったFacebookメッセンジャーを外部の力で多機能化していこうというわけです。

そして、メッセンジャーに関してはもう一点、大きな発表が有りました。

顧客と企業間のコミュニケーションへの対応

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従来厄介者だった顧客-企業コミュニケーションを取り込んでプラットフォームへの囲い込みを推進できるだけでなく、FacebookはEコマースの価値ある洞察を得ることができる。Facebookは、誰が何を買いどの企業と接触しているかを知れば知るほど、広告のターゲットやニュースフィードコンテンツの調整が正確になる。

Facebook、Messengerプラットフォームを公開。コンテンツ作成や企業との対話に利用 – TechCrunch 

Facebookメッセンジャーを通したビジネスコミュニケーションへの対応です。Facebook幹部はメールが中心となっているビジネス上のやりとりを、メッセンジャー上で簡単に済む新しい形に変えたいと発言しています。

生活プラットフォーム化で先行する微信(Wechat)、LINE

と、ここまで見てきて、日本の私達は既視感を覚えるはずです。Facebookメッセンジャーの動きが、LINEが2014年に発表した「LINEを中心とした生活プラットフォームサービスへの転換」と「LINEビジネスコネクト/LINE@を中心としたビジネス利用」を追従しているように見えるためです。グローバルシェアで先行する米国発のWhatsApp、Facebookメッセンジャーがどちらかと言うとシンプルなチャットアプリを目指したのに対し、中国で大きなシェアを持つ微信(Wechat)やLINEなどアジア初のメッセージングアプリは、チャット機能以外へのサービス拡張を進めてきました。

とくに微信は、LINE以上に独特の進化を遂げています。近くにいるユーザーにメッセージが送れる「Look Around」機能は出会い系っぽく使われる以外にも、店舗によるO2Oマーケティングでも活用されていますし、不特定多数にメッセージを届ける「メッセージボトル」機能などは、他のチャットアプリでは見ないものです。微信の決済機能にはお年玉をグループ内でランダムな金額で配布できる「微信紅包」という機能があり、ゲーム感覚のこの機能を多くのユーザーが楽しんでいます。

この「お年玉」の仕掛けは簡単。「普通お年玉」と「運試しグループお年玉」があり、特に人気なのが後者。お年玉をあげたい人は、例えば10人のフレンドからなるグループに対し、総額と配る人数を設定し、自分の銀行デビットカード情報を入力する。10人中の5人に対し100元(=約1680円)を配ると設定すると、5人に対し金額がランダムに振り分けられ、早くお年玉を取りに来た人5人に配られる。
対象グループ内で、ある人の「お年玉」は1元で、別の人は50元、全くもらえない人も出るという仕掛けだ。金額は一人当たり100元(=約1680円)以内と設定されているが贈られてくるお年玉は遊び感覚なので数元(日本円で数十円)と少額が一般的だ。勿論、グループ全員の10人に配るようにも設定できるが、金額はランダムに差がつけられる。
中国春節:遊び心で大ヒット!WeChatのスマホ「お年玉」 | ニュースマガジン PUNTA – プンタ

このお年玉アプリの大流行で、微信は中国国内で決済機能利用者の数を大きく伸ばしたと言われています。

まとめ

メッセージングアプリで大きくシェアを確保しているWhatsAppとFacebookメッセンジャーですが、コンテンツ力で差別化を図っていたWechatやLINEの機能を、いよいよ自らのメッセージサービス内に取り入れていこうと動き出しています。

今回の発表はFacebookのメッセージングアプリ上の覇権を確固なものにすると同時に、実名SNSであるFacebook上の個人情報とメッセンジャープラットフォーム上の利用状況を掛け合わせることで、Facebookプラットフォーム全体でさらなるユーザー動向の把握を可能にする思惑があると考えることが出来ます。

これまで独自の進化で差別化を目指したWechatやLINEは、さらなるスピードと、エッジの効いた差別化でユーザーに選ばれるメッセージングアプリとして変化していく必要に迫られています。

 [アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]