twitterで蕎麦屋を破産に追い込んだ学生に、5,000万の損害賠償請求は妥当か?

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アクトゼロの藤村です。火曜日のプランナーズブログをお送りします。

10月18日、国内最大手の信用調査会社『帝国データバンク』が提供するYahoo!ニュースの記事が、アルバイトによる悪ふざけで営業停止となった蕎麦屋の破産を報じました。
今年の8月中旬、厨房の洗浄機に入った写真を掲載したtwitterの呟きが問題となったこの事件、件の投稿を行ったのは、大学生のアルバイト男性です。
この男性は過去にも勤務中に撮影した不適切な画像をtwitterにアップしており、この事件をきっかけに溯って発掘されたツイートも同時に拡散され、大炎上となりました。

店主は破産管財人と話し合い、アルバイト男性への損害賠償請求を検討するとのこと。
日本大学の板倉名誉教授は「最低でも1000万円、理屈を言うと負債総額分は学生から取れると思いますが、慰謝料込みで5000万円ぐらいは取れる」と断言しているそうです。

このニュースを受けて、twitterユーザーからはアルバイトへの賠償請求を望むコメントが相次いでいます。

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私もこのニュースを読んで、この損害賠償請求が実際に成立すれば、今後の類似事案の抑止力になるかもしれないと考えました。

でも、本当にそうでしょうか…。

今夏、あれほど連日の炎上事案が騒がれる中、線路に立ち入ったり冷蔵庫に入ったり、うんざりするような続報は後を絶ちませんでした。
日頃twitterを頻繁に利用する彼ら(当事者)が、世間で問題視され、話題となっているこれまでの投稿の存在を知らなかったとは考え難いです。
にもかかわらず、非常識な行いを糾弾され、実生活まで追い込まれる前人達の現状を知って尚、彼らは思いとどまることをしませんでした。

 

 炎上のメカニズム

もう少し根本的なところから考えてみます。
本件で被害にあったのは、東京多摩市の蕎麦店「泰尚(たいしょう)」です。
最寄駅から少し離れた場所に店舗を構えており、外観写真を見るところ、こじんまりとした落ち着いた佇まいのお店です。
以前炎上した「丸亀製麺」のように日本全国にチェーン展開しているわけでもなく、わざわざ遠方からグルメ通が足を運ぶような類のお店でもない筈なので、この炎上に加担した殆どのユーザーにとっては、そもそも「自分には関わりの薄い店」で起こった事件でした。
しかし、アルバイト男性のツイートは日本全国各地のネットユーザーによって瞬く間に拡散され、複数のニュースメディアがその様子を報じ、「泰尚」は一躍、渦中の蕎麦屋として有名店となりました。
写真に写った僅かなヒントから、撮影された店舗や投稿者の個人情報を割り出したのも、恐らく店舗に直接の関係のないユーザーでしょう。

火種を撒いたのが当事者のアルバイト男性であるなら、
炎上させたのは大勢の「モラルある」ユーザーによるものでした。

 

正義感に燃えた“モラルあるユーザー”の拡散が、被害を拡大する

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これが10年前であれば、彼は経営者にこっぴどく叱られるか、バイトをクビになっただけで済んだでしょう。
もしくは、仲間内だけで語られるくだらない武勇伝となり、世間一般に広く知られることはなかったでしょう。
ところが、便利なネットワークツールを手にした少年は一晩にして世界中の晒し者となり、犯罪者と呼ばれ、莫大な額の損害賠償を請求される訴訟の渦中に立たされることになりました。
もちろん、アルバイト男性のしたことは社会性に欠く残念な行いでした。
一つの店舗を業務停止とし、店主を破産に追い込みました。
しかし、本件で店舗、アルバイト男性両者をより不幸に貶めたのは、問題行為の必要以上の拡散に他ならないのではないかと思うのです。

本当に“モラルがある”のであれば、「こいつはこんな悪いことをしています!」と吹聴するのではなく、
「問題が大きくなる前に、該当記事を削除し責任者に謝罪しなさい」と促すでしょう。
また、そのツイートが広まった末の店舗への影響を考えれば、拡散はできる限り最小限に収めようとするでしょう。

沢山のユーザーが非常識な投稿の拡散に勤しむのは、自らのモラルや品性を主張するに、またとない好機だからではないでしょうか。
モラルない投稿を祭り上げるのは、「常識ある自分」というブランディングにおいて、極めて有効だからではないのでしょうか。

本問題で5000万の賠償金を背負うことになるかもしれない、アルバイト男性への社会的制裁は、妥当だと思いますか?
それとも、ネット上に響き渡る「正義の声」が、そもそもの事態を根幹的に煽り立ててしまったことによる、ちょっと異常な結果だと思いますか?

 

まとめ

facebookが「リア充フォトコンテスト」であるなら、twitterは「面白フォトコンテスト」「140字大喜利」そして「他人の荒捜しツール」です。
24時間365日、ギリギリのラインでユーモアを競う投稿の中に「超えちゃいけないライン」を超えたものはないか、沢山の目が光っています。
SNSでの発言に課される責任において、今となっては大人子供の線引きが存在しません。
自らの発言の先になにが起こり得るのか、多角的に考えることが難しい年代が利用するには、SNSはあまりに諸刃の剣です。
老若男女のユーザー全員が「常識」という一本のラインの上に立ち、そこから一歩足を踏み外せば、本名や住所、家族構成までが一夜にして全世界へバラ撒かれる社会。
当たり前のように日々、ネット上に私生活を曝け出しているユーザーの何割が、そのリスクを正しく認識しているのでしょうか。

今後このような不幸な事故を防ぐには何をするべきなのか。
どう対処していくべきなのか。

根本的な物事の良し悪しはもちろんのこと、
「ソーシャル」の持つ驚異的な伝達力と脅威性を、これからのコアユーザーとなる子供たちの意識に、根気強く訴えかけていくほかありません。

なぜなら私たちは“モラルある大人”なのですから。