ペニーオークション報道で考える、テレビで踊れる人踊れない人

金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼です。

「ペニーオークション」で逮捕 詐欺容疑、入札ごとに手数(日本経済新聞)

ペニーオークション詐欺がやっと問題化され、摘発されました。

ペニーオークション詐欺とは、ユーザーに人気商品を格安で落札できるように見せかけ、実際には運営者が作った架空ロボットプログラム(架空落札参加ユーザー)によって落札させることで、参加者に商品を落札させることなく、参加者の入札手数料をかすめ取る手法です。
以前より、2chなどでは芸能人ブログ上で紹介されているペニーオークションの落札成功体験記事の真偽について、疑問視されていました。実際にペニーオークションを体験した人の多くは落札できていないにもかかわらず、明らかに芸能人の落札記事が一時期に集中していたからです。

ペニーオークション運営で4人逮捕。しかし、実際に激安で落札したと主張する芸能人23人をまとめてみた – NAVER まとめ

今日は、2極化するメディア消費の傾向について考えてみます。

進む情報リテラシーの格差

僕達の会社アクトゼロの仕事は、企業プロモーションのためのWebキャンペーンサイトなどを企画・構築する仕事です。現在ではその企画中にソーシャルメディア上での拡散を前提とするのが「あたりまえ」となっています。

ここでいつも頭を悩ませるのは、キャンペーンに巻き込みたい消費者像が、「情報を探し出し、自ら取捨選択できるような、情報リテラシーの高いユーザー」と、「情報を受動的に消費し、受け取った情報を取捨選択せずにそのまま丸呑みにしてしまう、情報リテラシーの低いユーザー」の2つにはっきりと別れてしまっているということです。

今回のペニーオークション詐欺のいっけんで言うと、前者は「こんなの有り得ないだろ」とすぐに感づき被害は受けません、後者はいつもよく見る芸能人の成功体験になんの疑いもなくペニーオークションに参加してしまうのです。

・情報リテラシーの高いユーザーは、

興味のある情報に対し、多面的な理解を図るため可能な限り多数の情報ソースや、情報の背景、他者の意見を知ろうとします。
これまでの一次ニュースソースであった新聞・テレビのニュース報道も、すべてが真実ではないと考えています。

・情報リテラシーの低いユーザーは、

受動メディアに好んで多く触れ、もたらされる情報の波に自ら流されていきます。
ブームやトレンド、業界の権威を愛し、その流れにこそ価値を見出しているため、その情報の真偽についてはあまり興味がありません。 

ネット利用時間が長い=情報リテラシーが高い?

インターネットは、情報の深掘りに適したメディアであるため情報リテラシーの高いユーザーが多いわけですが、ネット利用時間がながい人が必ずしも、情報リテラシーが高いわけではありません。今回のようにペニーオークション詐欺に引っかかってしまう人は一定数いるし、未だにスパムメールをクリックする人もいるわけで、怪しげな情報商材に大枚はたいてしまう人も多くいるわけです。

テレビも同様で、受動的なメディアではありますがそれを情報ソースのひとつとして、批評的に(あるいは適当に)見ているユーザーと、そこからもたらされる情報を丸呑みするユーザーでは同じ時間視聴消費していたとしても、受け取った情報の内容はまるで違うものになるのです。

傾向として、ネットは情報リテラシーが高い人が好むメディア、テレビは情報リテラシーが低い人が好むメディアと言えなくはないのですが、その内実はもう少し複雑です。では、情報リテラシーの格差はどこで生まれたのでしょうか?

ぼくは、マスメディアからもたらされる情報を受容的に消費し続けることが「習慣になっているかどうか」で、はっきりと分かれてしまったのだと考えています。
そして、年齢が上がるほどその傾向が強くなるものと思われますが、その親世代のライフスタイルに影響を受けた若年層にも一定の割合でそのスタイルを選択している人達がいるのです。

それでも、テレビで踊れる人は減っていく

いつも、興味深いデータを提示してくれるGabagenews.comにこんなデータがあります。

増えるモバイル利用……メディアへの接触時間推移をグラフ化してみる(2012年発表版):Garbagenews.com 

今年のメディア消費傾向を示すデータですが、中でも傾向として顕著なのは以下の点です。

・男女とも歳の経過と共に、全体に占める既存4大メディア(4マス)の割合が増え、新メディア(インターネット)の割合、時間が減る。
・男性若年層の「テレビ離れ」が目立つ。
・女性50代のメディア接触総時間は女性の中ではもっとも長い値を示している。テレビ視聴時間が極めて長いのが原因。
・20代男性ではパソコン経由のネット接続単独で、テレビの視聴時間を上回っている。30代男性もほぼ同時間。
・男性は10代~40代まで、女性は10代で「パソコンと携帯電話のネット接続総時間」が「テレビ接続時間」を上回っている。

生まれた時からネットに接触できる大多数の若い世代にとって、テレビからの情報は絶対的なものではなくなってきています。テレビ消費時間をネット消費時間が上回り、テレビはネット上の話題のひとつとして消費されていきます。ネットコミュニティやソーシャルメディア、に当たり前にふれる生活をとしている世代は、若い時期から情報を取捨選択して受け入れざるを得ない世代といっていいでしょう。テレビに踊らされると言うより、もはやテレビでは踊れない世代なのです。

インターネットという批評の場の登場は、これから徐々に情報リテラシーの低い人達を減らしていくと考えられます。だれもが、情報を批評的に消費していくのです。誰かの仕掛けの元、同じトレンドを許容し、同じブームに熱狂し、同じ音楽を口ずさんだ時代は去り、ソーシャルメディア上で繋がりつつも、それぞれが多様なものをそれぞれの小さな集団で愛する、「つながっているけどバラバラな時代」になっていくのだと、僕は考えています。