拡散後こそ、つながりを。白熱する地方自治体PRとSNS活用のゆくえ

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最近、地方自治体のPRがぞくぞく話題になっていますね。広島県呉市の新キャラクターが懐かしの曲で踊る「クレーシーゴナクレーシー」、大分県別府市の夢と温泉愛に溢れた「湯~園地計画」、動画再生回数200万回を突破した滋賀県の「石田三成CM」など、枚挙にいとまがありません。
こうしたプロモーションが広まる一方で気になったのが、拡散後の“つながり”について。拡散で地域の魅力を知ってもらった後の受け皿として、一過性ではなく継続的なコミュニケーションがとれる接点、ひいてはソーシャルメディアの活用という点もやはり重要性を帯びてくるように感じます。
そこで今回は、PRに向けた地方自治体のSNSアカウントについて実態を調査してみました。

そもそも、地方自治体がPRに力を入れる理由

それはやはり、地域経済の活性や人口増加を目指す点が大きいでしょう。

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ニッセイ基礎研究所/明暗が分かれる地方移住の促進-国勢調査からみる5年間の都道府県別人口移動の状況

上のグラフでは、総務省統計局「平成27年 国勢調査」をもとに各都道府県の人口の増減がまとめられています。日本全体で人口が減り、都市部以外の多くの県で人口が減少。しかしそんな中、宮城県や岡山県などでは社会移動による人口の流入も見られ、県外からの移住者を一定数獲得しているようです。
「一度来てみてほしい」、そしてできれば「移住しにきてほしい」。地方自治体のPRには、人口増加に向けた切実な内情が感じられます。

Facebookページの人気は、ユーザー数に比例しない

さて、まずは各都道府県のFacebookページをみてみます。以前の記事で県ごとのFacebook潜在ユーザーを比較した際、ユーザー数で最も多いのは東京都、大阪府、神奈川県と都市部がつづき、下部では四国や中国、東北地方の県が多く並びました。
しかし各県の広報課などによる公式Facebookページをみると、ファンが多くページが活性化しているのは意外な県となりました。

※各ページのファン数は2017年2月13日時点で計測した数値です。

福島県:ファン数 64,518人

ふくしまから はじめよう。

facebook.com/FutureFromFukushima/

都道府県別では福島県のFacebookページがファン数最多に。
2011年に被害のあった地域の復旧・復興状況やそれを支える人々の様子、季節の伝統行事・イベントやグルメ、お出かけ情報、ゆるキャラの「キビタン」など、県内外の人に向けて福島の活気や魅力を発信しています。記事の更新も1日1投稿以上と多く見ごたえも十分。
各投稿における写真の質も量も充実しており、非常にうまく活用されている印象でした。

熊本県:ファン数 63,133人

熊本県広報課「気になる!くまもと」

facebook.com/kininaru.kumamoto/

つづいて、僅差で熊本県がランクイン。
アイコンとカバー画像に大人気ゆるキャラのくまモンが登場し、親しみやすい第一印象に。
また投稿記事でもくまモンが熊本名所に訪れたり、イベントやキャンペーンをお知らせするなど大活躍。キャラクターの愛らしさと、熊本県内で事業利用しやすくした広報戦略がこういった場でも功を奏しているように感じます。
県外と思われる人からのコメントも多く、一時期よりゆるキャラブームは落ち着いたといっても人気は根強いようです。

秋田県:ファン数 55,175人

あきたびじょん

facebook.com/akitavision/

県別のFacebook潜在ユーザー数では43位だった秋田ですが、Facebookページでは人気を多く獲得。
秋田美人とかけた「あきたびじょん」というページ名で、県のイメージアップに向けて様々な魅力を発信しています。
冬の時期ならではの雪国の日常や伝統文化など、幻想的で美しい写真の投稿が中心となり、特に県外のファンに向けた訴求で成功しているページと言えそうです。

 

ちなみに今回は都道府県を中心に調べましたが、市単位ではこんなFacebookページ事例も。

佐賀県武雄市:ファン数 34,989人

武雄市役所

facebook.com/takeocity/

先進的な政策の取り組みなどで注目されることが多い武雄市。
投稿内容では県外へのPRというより行政からのお知らせが中心であり、例えばインフルエンザによる休校のお知らせや積雪への注意喚起情報など、市民生活に関わる情報発信が細やかに行われています。
リテラシー教育に力を入れているとはいえ、人口規模が5万人程度の市でFacebookページでこのようにファンが多いのはとにかく驚きです。

広島県呉市:ファン数 2,743人

呉市役所

facebook.com/kure.city/

ロングヒットをとばす映画「この世界の片隅に」の舞台地でもある呉市。
冒頭でもご紹介した新キャラクターのPRがこちらにも展開されています。上記の県や市と比べてファン数が少ないのには、各告知からFacebookページへあまり誘導されなかったのではと推察されますが、投稿に対するエンゲージメント数は高く、呉市を応援するコメントが多く見受けられます。
キャッチーなPRで認知や人気が高まった後、これからの取り組みに期待が高まります。

Instagramアカウント開設はまだ少数

次にInstagramの状況も調べたところ、アカウントを設けたり、フォロワーを多く集めている自治体はFacebookやTwitterなどと比べてかなり少ない傾向にありました。
そんな中でも、運用に力を入れている自治体をピックアップしてみました。

※各ページのファン数は2017年2月14日時点で計測した数値です。

三重県:フォロワー数 4,503人

観光三重(三重県観光連盟)さん kankomie • Instagram写真と動画

instagram.com/kankomie/

三重県観光連盟による公式アカウントで、山々に囲まれた自然風景や由緒ある神社、地元グルメなど県の魅力を美しい写真で発信しています。また写真は過去の写真コンテスト応募作品を掲載するなど、県の保有するコンテンツをうまく活用されている印象。更新頻度は1週間に3~4回投稿と多く、投稿へのいいね!も上々な数値となっています。

和歌山県:フォロワー数 4,071人

Insta_Wakayama 和歌山県オフィシャルさん insta_wakayama • Instagram写真と動画

instagram.com/insta_wakayama/

こちらでは、インスタならではのユーザーとの交流に注力している点が特徴的です。
和歌山に関する投稿にはハッシュタグ「#insta_wakayama」をつけてもらうよう呼びかけ、他のユーザーが投稿した写真を紹介するなど、行政と市民が一体となって和歌山を盛り上げようとしていく姿勢が感じられます。

愛知県田原市:フォロワー数 5,829人

愛知県田原市さん tahara_kurashi • Instagram写真と動画

instagram.com/tahara_kurashi/

県ではなく市のアカウントながら、写真の質も更新頻度も高く、かなり力を入れているのが伺えます。
田原市の美しい景観や「#たはら暮らし」のなにげない日常写真など、ゆったりとした世界観に思わず住んでみたい気持ちに。
最近ではライブ配信も行うなど、新機能を柔軟に取り入れて運用されているようです。

調査まとめとこれからのSNS運用に向けて

今回調べてみた感想を以下にまとめてみました。

地方の熱意と都市部の温度差

各都道府県のいずれもFacebookページを設けていましたが、Facebook利用がさかんであるはずの東京都・大阪府・神奈川県などでは意外と盛り上がっておらず、上記でご紹介したような地方の県との温度差を非常に感じました。
既に人口が集中している余裕などもあるかと思いますが、行政と市民が一体となってSNSでも交流していこうという他県と比べて、希薄な関係性が見えてくるようです。
これから地方移住に関心が高まってきた際、都市部ではどのように市民とコミュニケーションをとっていくのか一つ課題となってくるのではないでしょうか。

異様に細分化されるSNSアカウント

今回は広報課が運用するものを中心にとりあげましたが、実際には各県で数多くのアカウントを設けており、「どれとつながったらいいかよくわからない」というケースも多々あるのではと推察されます。

(参考)青森県埼玉県栃木県

担当課が分かれるなど運用面での課題が関係していると思いますが、優先すべきはやはり市民目線。この県のお知らせが受け取りたいとき、わかりやすい総合アカウントを設けておくことが重要と考えます。更新内容を充実させるという点でも、複数のアカウントを整理・統合した展開が求められるのではないでしょうか。

”拡散”から”つながり”まで至る導線設計を

今回様々な事例をみて、コンテンツ発信だけでなく、その投稿に対する県民のリアクション・温度感もみえるSNSは、最も県のリアルな魅力が伝わるPRツールになりうると改めて感じました。
冒頭でのPR施策のように「面白い!」「いってみたい!」と興味を拡散させていくのと合わせて、「いつか住んでみたい」という気持ちを醸成させていくSNSのつながりを増やしていくことは今後のテーマになってくるのではないでしょうか。
施策ごとに縦割りで運用するのではなく、点と点を結ぶ、柔軟な自治体PRの展開を期待していきたく思います。