日本でも普及を始めたシェアリングエコノミー ~Airbnbで民泊を体験

近年、「シェアリングエコノミー」というキーワードをよく耳にするようになりました。これは欧米を中心に拡がりつつある概念で、ものやお金・サービス等の交換・共有を基にして成立する経済の仕組みを指すワードです。具体的に言えば、使っていなく遊休資産になってしまっている住居や自動車などを貸し借りすることです。

こうした仕組みは借り主・貸主の信頼関係が必要なため、これまでは身内や友人間だけでしか成り立ちにくいものでしたが、近年のSNSの発達を背景にして着実に普及しつつあります。SNSを通してお互いの情報を交換したり、マッチングすることにより、その機会や質が変わってきています。こうしたシェアリングエコノミーは、2013年に約150億ドルだった市場規模が、2025年には約3,350億ドル規模に成長する見込みだという調査もあります。

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242110.html

宿泊施設を貸し借りする「Airbnb」

最近、日本でも「民泊」というキーワードをよく耳にするようになってきています。空いている住居や部屋を、旅行者などに提供する個人間の仕組みのことです。近年、外国人観光客の増加により、ホテル不足が叫ばれており、2020年までこの傾向が続くとも言われている中、注目を浴びています。

そんな宿泊施設の貸し借りを行うことができるWebサービスがAirbnb (エアビーアンドビー)です。

20160420_01Airbnb https://www.airbnb.jp/

宿泊施設を貸し出したいオーナーと、それを利用したいユーザーをマッチングするサイトで、予約システムや代金の決済の代行まで準備されています。2008年8月にサンフランシスコを本社として設立され、世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供しています。日本では2013年9月に日本語版でのサービスが開始されています。

先日、仕事の関係で出張に行く機会があったため、このAirbnbを利用して実際に宿泊してみました。オーナーさんともお会いして借り主・貸主双方の立場からの民泊についてレポートしていきたく思います。

まずは宿探し・登録と予約

まずは希望の宿を探します。今回、私が訪れるのは山梨県・小淵沢。その周囲で検索するといくつか候補の宿が出てきます。値段や建物の概要など、いろいろ情報が出てくるので比較検討します。それらの中で、一棟貸しというのと、新緑のシーズンが始まるので森の中に泊まってみようと思い、Tomoさんというホストが提供する宿「静かな森の暮らし 八ヶ岳小淵沢」を選択することにしました。
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続いてアカウントを作成・登録します。Facebookなどのログイン情報を使うことができます。続いてカードにて宿泊代金を支払います。こちらの宿は最低2泊からとなっています。2泊1人利用で8189円(安!)とサービス料1010円で9199円でした。(※曜日やシーズン、人数により変動します) 恐らく、サービス料がAirbnbのフィーになるのでしょう。

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ホストの方に到着時刻などについてメッセージを送ります。当日のあいだまでに変更などがあった際にはこのメッセージ機能で連絡を取ることが出来ます。また、宿ごとにハウスルールがあるので、それに従って利用することが求められます。

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最後に、政府が交付した正式な身分証明書の提示が求められます。PCのwebカメラに向かって身分証明書を掲げ、撮影した画像でチェックされます。基本的にはパスポートが良いようです。世界で展開するサービスならではのIDですね。日本の場合、自動車の運転免許でもOKのようですが、電話での確認が入るようなので、急いでいる場合にはお勧めできません。画像をアップするとしばらく待たされますので注意が必要です。

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こうして、予約・カード情報・IDの確認が済むと、そのデータがホストの元に届き、宿泊のオファーを受け入れるか否かが判断され、ユーザーに連絡されます。私の予約も無事承認され、メッセージを頂くことができました。ハウスルールに関する書類と、建物に行くための具体的な行き方手順の書類が後日送られてきました。

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いざ宿泊

新宿から中央本線の特急あずさに揺られること2時間で小淵沢駅に到着。(ただ、私が行った日は強風の影響&架線にビニール袋付着による遅延で、4時間以上かかりました…。特急料金2600円位は払い戻され、何だか少しだけラッキー?)都心から車でも3時間かからない程度で行けるので、気軽に高原を楽しむには良い場所です。また、小淵沢はホテルや観光地などが、駅や高速道路のインターから車で数分程度の場所にあるので、アクセスがとてもよい場所だといえます。

駅からタクシーに乗って10分弱、太い通りから細い山道を奥へ奥へと入っていくことに若干不安を覚えつつ向かった先には、別荘が数件立ち並ぶ別荘地が。そこにTomoさんの宿がありました。白い外観が可愛らしい建物です。別荘地の奥に位置して、すぐ裏は森で、まさに静かな森の暮らしが期待できそうです。

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事前に到着する時間をお伝えしていたので、オーナーのTomoさんが待っていてくださいました。初対面のはずなのに、Airbnbを通してお互いが何となく紹介し合えていたことと、何度か連絡を取り合っていたため、あまり初めての感じがしないのが少し面白い感じがしました。webやソーシャルネットワークを介して構築した、今っぽい人間同士の関係性を感じます。

ホストのTomoさんは、念願だった森の暮らしを旦那さんとこちらでお過ごしだったのですが、現在、別の場所に引っ越しを行っている最中で、Airbnbでこちらを貸し始めたのだとか。

まずは建物内部と設備を見ていきましょう。

室内は木材の木目を活かした内装になっており、とても別荘の雰囲気がします。現在もこちらで寝泊まりしているとのことですが非常に綺麗にお手入れをしているため、全く嫌な感じはありません。むしろ、その延長上で私も宿泊というよりは生活させて頂く感じでとても便利で快適でした。ちなみにWi-Fi完備です。

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機能的で清潔なキッチン。調理道具や食器もすべて揃っていて自炊も十分に楽しむことができます。出張・旅行が続くと食生活が乱れがちですが、このような設備で自分で料理をすることができるのも民泊の醍醐味です。実際、私も2泊目に簡単な料理を行って食べましたが、自宅と変わらない感覚で楽しめました。

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1Fはリビング・キッチン・お風呂・トイレがあり、少し急な階段の上に2Fがあります。

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2Fはベッドルームになっています。朝は様々な鳥のさえずりが聞こえ、天窓から外の新緑も望め、非常に清々しい目覚めでした。書斎にもなっており、私物が少し置いてありました。

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2Fから1Fの出入り口方向を見下ろした風景。2Fは1Fの半分くらいの面積で、その分吹き抜けになっておりとても開放感を感じます。

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タオルとドライヤーが準備されていました。2日分と余分で数枚のタオルがバスケットに入っていました。歯ブラシ・髭剃りなどは自分で準備する必要があります。お風呂は、窓を開けながら入っていると、森からの風が心地よく、いろいろな森の音を聞きながら楽しむことができました。

20160420_162泊3日間、この施設に宿泊したのですが、感覚としては、一言で言うと「友人が所有する別荘に泊まりに行った感じ」です。持ち主が使ってない日だから使っていいよ、と言われ滞在しに行く。勿論、そこには持ち主の荷物や滞在に使う用具が備えてあるので、最低限のものは少しの遠慮がありつつも使わせて貰いながら、プライベートな荷物は触らないようにしたり、備品なども壊して弁償になったら気まずいので慎重に扱ったり。そんな感じで過ごさせてもらいました。

勿論、Tomoさんとは訪れた初日が初対面で、家をお借りするのも当然初めてだったのですが、事前にIDチェックを行っていたり、Airbnbの機能で事前にやり取りの中でFacebookアカウントを提示していることもあり、お互いがある程度人となりを知り合った上で契約になるので、貸主・借主ともにこのような感覚になるのではないかと思います。

一棟貸しということもあり、プライベートを守りつつ、自分のペースで過ごすことができ、宿泊するというよりも生活することができ、非常に快適でした。また、緑に囲まれた森の中での生活を過ごすことができてリフレッシュすることもできました。朝、爽やかな気候の中、近くを散策し、家に戻ってコーヒーを淹れて窓の外の緑を眺めながらぼーっとする贅沢な時間。Tomoさんの宿が大当たりだったからこそな気もしますが、結果的に個人的には非常に満足な滞在になり、”民泊”、これはけっこうアリだぞ、と思いました。

Airbnb貸主にインタビュー

オーナーのTomoさんにお忙しい中、淹れて下さったコーヒーを頂きながらお話を伺いました。

Q.いつからAirbnbを利用しているのですか?どんな人が宿泊で利用していますか?
以前に海外在住の友人からAirbnbの話は聞いていて、長期で滞在する時に良さそうなサービスだと思い、アカウント登録だけはしていましたが実際宿泊で利用したことはありません。この家を貸出始めたのは実はまだ1ヶ月半位なんです。ゲストはShingoさん(筆者)で6組目です。2組くらい外国人の方で、全く日本語が話せないフランスからの観光客の方もいらっしゃいました。あと、海外に住んでいる日本人の方も多いです。日本に住んでいる人でAirbnbやっている人はまだあまり多くない印象です。海外の方が利用率高そうです。

Q.どんな人が泊まりに来るか不安ではないですか?
どんな方が来るのかは、やっぱり毎回不安ではあります。でも、ちゃんとAirbnbの機能で、貸主による承認制になっていますし、IDなどで顔も分かるので、今までは良い方ばかりです。逆に、借りる方も宿泊先の情報がオープンにされているので安心なのではないでしょうか。Airbnbでやってみてすごく良かったですよ。いろいろな方と出会えるのが楽しいです。

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Q.Airbnbに情報を掲載(”リスティング”と呼ばれているようです)する際に工夫していることは?
Airbnbの貸主側の人達のコミュニティーがWeb上にあり、そこで情報を収集しています。リスティングに掲載する時もその情報に従って掲載したら、普通に予約がありましたし、レビュー文章も頂けました。

Q.Airbnbを活用している貸主の事例をご存じですか?
個人のビジネスとして本格的に行っている人もけっこう居るようです。東京とかで部屋を複数持って貸したりとか。また、日本でも行政などに働きかけて、ただ自分が部屋を貸すだけでなく、もっと大きな規模で活動している人も居て、町や村に観光客を呼び込んで活性化させるためのツールとしてAirbnbを活用したり。つまり「まちおこし」ができる可能性があるのだと思います。

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Q.Airbnbのサービス自体をどう思いますか?
例えば、うちの部屋のウェブサイトを作って告知したところで、膨大なgoogle検索などでは埋もれてしまって予約に繋がらないと思います。SEO対策やネット広告の手間や費用を考えると難しいと思います。でも、Airbnbのリスティングの中に自分の部屋があれば、このサービスを通して人目に付くのでとても合理的だと思います。

Q.今後、民泊はどのように普及していくと思いますか?
実際、Airbnbがオリンピックのスポンサーになったりしていますが、これから東京もオリンピックに向けて、観光客が増えてホテルが足りなくなることから、こういうシステムに頼らざるを得ないみたいですよ。今、大阪もビジネスホテルが足りないみたいですし。これから先、日本も人口が減って行って、海外からの観光客から外貨を稼ぐことが国としても重要になってくるでしょうから、今後より注目されていくと思います。

ホテル・旅館・民宿といった、既存の宿泊施設とは異なり、個人同士が不動産などの貸し借りを行うシェアリングエコノミー。今後、他にも様々なものだったり、個人の得意なスキルなども共有される時代になっていきそうです。是非、皆さんもまずは体験してみるといかがでしょうか。

ただ、今回私が宿泊した、Tomoさんが提供する宿「静かな森の暮らし 八ヶ岳小淵沢」、ここまで絶賛しておきながら残念なことに5月末で一旦、貸出を終える予定なのだとか。もしかしたら夏のシーズンまで数ヶ月延長しようか悩んでいる…とも仰っていましたが。確実に森の暮らしを体験したい方は、是非早めにどうぞ!

ですが、恐らく日本中・世界中に、他にも素敵な宿がいっぱい控えているはずです。まずは滞在予定の場所の宿をどうぞ検索してみてください!

Airbnbが提供する、熊本地震の被災者支援

最後に更にご紹介を。現在、熊本県が地震で大きな被害を受けていますが、Airbnbでは被災者を対象に緊急宿泊場所のマッチングを通して支援しています。

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https://www.airbnb.jp/disaster/southernjapanearthquake

福岡などの、被災地の周辺の空室を持つホストは被災者に無料で部屋を貸し出すことができ、Airbnbへの手数料も無料になります。これまでも2012年のアメリカ東海岸で起きたハリケーン被害以来、様々な災害時に同様の支援を行ってきたのだとか。被災者の皆さんがほっと安心できる宿泊先を見つけられますよう心から祈念しています。