「ソーシャルでユーザーと向き合う」マクドナルドが見せた本気。

ソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロ黒沼です。今日は、マクドナルドカナダの顧客との対話の試みについてご紹介します。

テレビに代表されるマスメディアの影響力が落ち、ネットで自発的に情報を収集する消費者が増え、消費者同士の情報交換がソーシャルメディア上や口コミなどで頻繁行われている時代です。マス広告を通して、イメージ重視の広告を大量投下し、消費者の日常に食い込んで大量消費させる、とそう単純には行かない時代となったと言えます。

広告による大量露出で世界中でファストフード界の覇権を握っている「マクドナルド」ですが、その企業規模の巨大さや、「消費社会の象徴」的な立ち位置から、様々な立場の消費者によって批判や誹謗中傷に近い都市伝説にさらされてきました。

僕が子供の頃から、「マクドナルドのパテは牛肉じゃなくてミミズを使ってるらしい」といった話はありましたし(海外ではネコとかカンガルーとか様々なバリエーションがあるようです)、最近では「ピンクスライム肉」の話(これは都市伝説じゃないか)や、いつまでも腐らないマックポテトの検証動画がYoutubeで人気になったりと、みなさんも一度はご覧になったことがあるのではないかと思います。

ユーザーの質問に直接担当者が答える「OUR FOOD. YOUR QUESTIONS.」

こういったユーザーからの疑問に、直接マクドナルドの担当者が回答するのが、マクドナルドカナダのコーポレートサイトTOPページにも大きく展開されている「OUR FOOD.YOUR QUESTIONS.」です。

マクドナルドカナダのTOPページ

マクドナルドカナダのTOPページ

 個別の質問には、担当者が名前付きでテキスト回答しているわけですが、特に多く寄せられる質問に関してはドキュメンタリー風に動画で回答ビデオが寄せられています。そこで取り上げられている疑問は主に以下のようなものです。

  • 100%牛肉って言ってるけど、牛のどこの肉使ってるの?
  • マックで使ってる鶏肉って本物?
  • ピンクスライム使ってる?
  • 店頭の写真と実際の商品の差がありすぎると思うんだけど。
  • 揚げ物の油って何使ってるの?
  • フィレオフィッシュの「フィッシュ」ってどんな魚?
といった具合で、結構ストレートな手厳しい質問が集まるわけですが、すべてに真摯に担当者から返信されています。
  • 100%牛肉って言ってるけど、牛のどこの肉使ってるの?
の質問に関しては、実際に使われている「牛肉の部位」や「食肉会社」の情報などが返答されています。最も多い、この質問は時に意地悪な問われ方をすることが多く、「100%ピュアビーフ」は社名の一部で、実際にはビーフじゃないんだろ?という質問に対しては、以下の様なビデオで返答しています。
ビデオの中では、わざわざカナダにある企業のうち、「100%ピュアビーフ」が社名に入っている企業があるか公的機関で調査を行い、その結果を郵送する様子です。ちょっと皮肉のきいた表現ですが、話題性はありそうです。
ほかにも、GIGAZINEで話題になった「店頭の写真と実際の商品の差がありすぎると思うんだけど。」には以下のムービーで、商品写真が出来上がるまでを隠すことなく共有しています。
「カメラに映るのはこっち側だけだから、後ろがわは関係ないんだよ」「ケチャップは注射器で最後に入れるんだ」といった具合で裏話を明かしつつ、Photoshopで加工して美味しそうに見せる様子まで、隠さず共有しています。
これは、消費者自らが質問しつつも、実は感じている「店頭で買うクオーターパウンダーが写真そのままな訳ないよね」という気持ちに、「ですよね。こうやって美味しそうにしてるんですよ」と回答することで、マクドナルドと消費者の間の「建前」の壁を壊すことに成功しています。その他のビデオが用意されている質問についてはこちらをご覧ください。→http://www.youtube.com/user/McDonaldsCanada/OurFoodYourQuestions
 

拡散の主なイベントとして、Facebookの存在が大きく影響している。

ソーシャルメディアや世界中のブログで、このネタは取り上げられています。ものすごい拡散力です。

ソーシャルメディアで変わるのはプロモーションだけじゃない

とかく広告キャンペーン等とセットで考えられることの多いソーシャルメディア運用ですが、最も重要な点はソーシャルメディアに代表される消費者の変化に対応するため、マクドナルドほどの巨人が「消費者との付き合い方」を変えてきているということです。より正直に、目の前の消費者と膝を突き合わせて対話を始めているということなのです。

企業の消費者に対する基本姿勢が、オープンで見栄をはらない等身大の姿に変化してきていること、従来の企業姿勢でまだ変化できない企業が多いなか、巨人の「作戦変更」に私達が学ぶことは多いはずです。