<事例紹介> 2010年祇園祭・南観音山Ustream動画ライブ中継

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じめじめした梅雨の季節、憂鬱な気分になりそうな毎日ですがいかがお過ごしでしょうか。そんな中、7月が近づくに連れて少しづつ、気持ちがウキウキとして落ち着きを無くす人達が京都に多く居ます。それは、1200年以上の歴史を持つ、日本三大祭のひとつ「祇園祭」の関係者です。7月に入ると、京都市内は祇園祭の雰囲気一色に染まるのですが、今の時期、京都では祭の様々な準備や、お囃子の練習に熱が込もってきている頃のはずです。

実は私、高寺もこの時期から落ち着きを無くし始める人間の一人なのです。かれこれ10年以上、このお祭りに関わらせて頂いており、昨年は祭の様子をUstreamで中継を行いました。

ここ数週間、Ustreamについてレポートを続けていますが、今回は、”中継ポイントを移動させながらの配信”という、一風変わったスタイルの事例として、その時の様子についてレポートしたく思います。

※レポート中に、下見・実験を省いた結果発生したトラブルについてもそのまま書いています。今回の企画はビジネス目的ではなく自社の実験コンテンツのため確認作業を省いた結果です。日常の業務で行う場合は、事前にテストや検証を何度も重ね、トラブルを起こさぬように努めています。

祇園祭を次の世代へ引き継ぐ活動にUstreamを

祇園祭とは、貞観11年(869年)に、全国的に流行した疫病を鎮めるために始まりました。(余談ですが、東北地方に3.11級の大地震が大昔に起こった、という話を聞きますが、それはこの年に起きた「貞観地震」のことで、大地震の結果起きた疫病を祓ったのが祇園祭のようです。) 現在では毎年7月13~16日に渡る「宵山」(いわば前夜祭の期間。祭情緒あふれる雰囲気になります。)と、7月17日に行われる「山鉾巡行」(32基の山や鉾と呼ばれる山車が市内を練り歩く)が祭のハイライトとして行われます。

そんな32の山鉾保存会の一つに「南観音山」というものがあります。巡行のしんがりを務める、絢爛豪華で人気のある山ですが、弊社アクトゼロでは、毎年、映像・web制作技術を、京都・祇園祭の南観音山保存会へ提供することを通し、祇園祭を次の世代へ引き継ぐ活動に貢献しています。


(写真1:巡行中の南観音山。車輪の下に割り竹を入れ、横滑りさせて90度方向転換する”辻回し”の様子)


(画像2:弊社が運営する「京都祇園祭・南観音山の一年」)
http://www.actside.com/gion/

同時に、新しいwebサービスや技術の実験の場としてとらえ、毎年、何らかしら新しい形で情報発信をしています。2010年は、Ustreamが本格的に活用され始めた年だったこともあり、以下の3項目について実験をすることにしました。

◆定点webカメラ(中程度画質)、スマートフォン(低画質)、DVカメラ/PC(高画質)の3形態でのUst中継を実験・比較
◆ワンマンオペレーションによる、移動を伴ったモバイル体制でのUst中継を実験
◆「祭」というコンテンツに対する、視聴者の反応

特設サイトを準備し、事前に告知を行いました。また、番組表を準備し、中継の概要やおすすめ度を表示しました。


(画像3:番組表。16日は「宵山」、15日は「宵々山」と呼ばれます。)

7/15 宵々山 南観音山・定点からのお囃子風景中継

部材を組み立てられて、山車の形になった山鉾は、宵山期間中、「会所」と呼ばれる、地域の寄り合い所のような建物の前に停め置かれており、一般の観光客が間近で見学できるようになっています。山鉾の上では夕方になるとお囃子が演奏され、情緒深い光景が広がります。そんなお囃子の様子を撮影するため、会所2階にwebカメラとWiMaxを備えた配信PCを設置し、19時頃から配信を開始。


(画像4:webカメラによる配信風景。興味深くPCを覗き込む囃子方のKさん。)

ところが、音声は途切れないものの、映像が途切れたり、静止画になってしまう事象が頻発。これは、会所付近は比較的高い建物が密集している地域のため、WiMaxの電波状況が安定しなかったことが原因のようでした。急遽、スマートフォン(高寺所有のXperia)で別アカウントで配信実験したところ、画質はやや劣るものの、動画で問題なく配信できていたため、8時半頃からXperiaによる配信に切り替えました。囃子が21時45分ごろ終了し、それに伴い初日は配信終了。


(画像5:Xperiaによる中継。電源が確保されているので、長時間配信でも問題なくOK。ただ、日常使用しているもののため、何度か電話が掛かってきてしまい、その度、配信が止まってしまいました・・・。)


(画像6:事前にwebで検索したところ、エリア的にWiMaxの電波は届いているようですが、現実は異なるものです・・・。画像は昨年2010年6月頃のもの。)

7/16 宵山 移動を伴う中継、のはずが・・・

 

宵山の夜、「日和神楽」と呼ばれる行事が行われます。小さな屋台で移動しつつお囃子を奉納し、明日の巡行の晴天を祈るものです。つまり、移動を伴う中継が必要となってきます。前日の反省を活かし、16日午前、実際に日和神楽と17日の山鉾巡行のルートの電波状況をWiMaxに接続したPCで実測。随時、電波状況を記録しながら歩いてみた結果、やはり会所付近のエリアは電波状況が極めて悪く、少し離れたビジネス街では非常に良好なことが判明。それを踏まえて、番組のプログラムを一部変更しました。


(画像7:ルートの電波計測の結果、山鉾町界隈(赤ゾーン)は、1~2程度の電波状況で、青ゾーンは5~6、最低でも3まで出ており安定していた。赤ゾーン内はXperia(低画質)、青ゾーンに到達したらWiMax・DVカメラによる中継(高画質)に切り替えることに。)

16日は浅い時間からお囃子の演奏が始まるため、17時頃から会所からXeriaによる定点カメラ配信を開始。20時45分頃、日和神楽の屋台が移動開始したため、Xperiaのまま中継を継続しました。やがて、三条烏丸を越し、WiMaxの電波が安定するエリアに到着したため、DVカメラ・PCによる体制に切り替えようとするものの、何故かUstream配信の設定画面が変更を一切受け付けない事態が発生。そこで止む無く、Xperiaで中継を継続しました。

この、”XperiaからPCへの切り替えがうまくいかなかった”原因は、Xperiaの配信ソフトウェア「USTREAM BROADCASTR」(当時)を、配信停止にしただけで、完全にログアウトしていないからだったことが判明。ホテルに戻った後、深夜まで実験・検証し、ようやく解決しました・・・。

7/17 山鉾巡行 DVカメラ/PCによる中継も成功!

祇園祭の最大の行事ともいえる「山鉾巡行」。ちょうどこの日、関西地方に梅雨開け宣言が出され、夏がスタートしました。   朝9時頃、南観音山の関係者が記念撮影を行う様子を皮切りに、Xperiaによる配信を開始。その後、山は移動していき、大通りである四条通りで南観音山が待機状態になったところで、DVカメラ/PCの体制に変更。その後、1.5時間程度に渡り、安定した高画質で中継できました。DVカメラで撮影しながら、ピンマイクを通して解説ナレーション。片手ではXperiaでUstreamの受信テストをしながら、Twitterのつぶやきを参照し、つぶやきの内容を中継に反映させる…、この一連の作業を一人で続けるのには非常に苦労しました。しかも、梅雨明けの夏空は容赦なく照りつけ、この日の最高気温は33℃・・・。PCやDVカメラの熱と、自分の”体力”にも気を配りながらの配信でした。


(写真8:ワンマンオペレートの装備。肩から下げたカバンの中に、エンコード用PCがあります。さすがに10年以上のお付き合いがあると、祇園祭や南観音山の知識についてはちょっとした専門家並に自信があります。途中、小ネタや豆知識、解説などを入れましたが、視聴者の皆さんにご好評をいただけました。)


(画像9:この時のシステム図。PCにIEEE1394端子があれば更に簡単・高画質で配信できたのですが・・・。ただ、UA-30にはピンマイクの音量を調整するフェーダーが備えているため、カフ(マイクのON/OFFを行う機材)代わりになり、休憩時などのピンマイク音声を切ることが簡単にできたのは良かった。)

まだ電波状況は良いエリアでしたが、PCのバッテリーの関係でDV/PCによる中継を途中で終了。その後、巡行の終わりまでXperiaで中継を行いました。観光客が多く集まる場所ではトラフィックが集中しているためかXperiaでも通信状況が思わしくなく、途切れ気味なエリアもありました。しかし、巡行の終点付近では通信状況が復旧し、フィナーレまで中継することができました。中継終了間際は、視聴者からのねぎらいのツイートが溢れ、やった甲斐があったと嬉しく思いました。最終的に3日間でのべ3000人の視聴者数と425のツイートを獲得することができました。


(画像10:中継中、Ustをご覧頂いていた女性が沿道から「カメラマンさん!Ust見てます」とお声掛け頂いた時、ソーシャルがリアルと交差した気がしました。) 

まとめ
 

机上の理論ではなく、リアルに実践することで学ぶことは多くありました。

◆高画質映像を、移動を伴いながら配信することは、当時では「できないことはないが、事故の危険性が極めて高い」といえる。京都ほどの大都市であっても、実際には電波状況の良い悪いがあり、更に良いエリアでも分断が起こりうる。
◆通信回線状況の事前確認は絶対に必要。
◆撮影/配信技術/解説ナレと、中継は全てワンマンオペレーションで行った。結果的に言うと、やれないことは無いが
 ・非常にオペレーターに負担がかかる。
 ・内容が散漫になってしまうシーンも多く見られた。
 ・配信作業が忙しく、受信状況の確認まで常時手が回らない
など、ネガティブな面も少なくなく、番組品質を考えると、やはり複数人必要である。(せめてもう一人アシスタントでも居ないと、小休憩もままならない)
◆巡行途中、Twitterの書き込みも非常に多く見られ、最後には感謝と労い・来年への期待のコメントが多く寄せられた。祇園祭という、コンテンツの良さを改めて再確認できた。

※報告動画


(行った内容をプレゼンテーションするためにまとめた動画です。実際の配信時の雰囲気を感じて頂ければと思います。)

あれから一年。Ustreamを取り巻く環境も機材も視聴者のスタイルにも大きく変化がありました。今年2011年も、祇園祭期間中に新しい実験を、視聴者の方にお楽しみ頂ける内容で企画します。どうぞご期待ください。

※以下は2009年・弊社制作の南観音山DVD(関係者に配布)に収録されている動画です。興味のある方、是非、お楽しみください!