企業の信頼を崩壊させるスイッチを、僕もあなたも持っている

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金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。秋っぽくなってきましたね。

遅まきながら、あるニュースを知りました。今日はこの話題から。

有料ツイート広告でブリティッシュ・エアウェイズと戦った消費者

newyorkpostFlier pays $1,000 to bash British Airways on Twitter | New York Post 

J-castニュースが、日本語でも報じています。企業へのクレームは有料ツイッターが効く 荷物紛失で会社員がBAに「勝利宣言」

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事件の概要です。ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の乗客ハサン・サイードが、フライト中に父親の荷物を紛失されたことに腹を立て、「BAには乗るな。BAはあなたの荷物を追跡することも出来ない」という内容のツイートを、自腹で$1,000かけてTwitterの有料広告ツイートを使って拡散をした結果、Twitter上で広く共有されネットメディアや大手ニュースメディアを動かし、BAからの正式な謝罪となくした荷物を取り戻すことに成功したという出来事でした。

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TOPSYAnalyticsを使って、British Airwaysというキーワードでツイート数推移を見ます。すると、このハサンのツイートに対して11,000を超えるリツイートが行われ、2013年でダントツのリツイート数を記録することがわかります。後日ハサンは、インプレッション数(=ツイート表示数)は76,800あったと公表しています。(※有料広告ツイートには解析機能が付いているため、出稿主にはどういう影響を与えたか分かる)もちろんこれはツイッター上だけの数字で、他メディアでの露出を想定するとこの案件でBAが失った信頼は計り知れません。

BAは比較的ソーシャル活用に意欲的な企業でした。ソーシャルメディア上でのキャンペーンなどを通して、フォロワーやファンを多く獲得し、日常的にコミュニケーションを通してエンゲージメントを深めようとしている企業です。しかし、この事件を通して普段のソーシャル上のコミュニケーションとは比べ物にならない影響力で、一瞬でネガティブツイートの大波に飲み込まれてしまったのです。もちろんこの経緯は、Google検索結果でも社名の数段下にいまも表示され「ブランドについてまわるバッドニュース」として記録されています。

有料広告という武器を使って、ネガティブツイートを拡散することで企業と互角以上に戦い、正式な謝罪を引き出したということになります。ハサンは特別に影響力のあるアカウントというわけではありません。$1,000準備出来たことをのぞいては、僕たちと全く変わらない「いち消費者」なのです。その気になれば、僕もあなたも彼と同じことが出来ます。その気になれば広告だって必要有りません。告発のスイッチは無料でも押せます。

バイク販売・ロードサービス「レッドバロン」の場合

2013年2月、あるバイクユーザーのブログ記事上での告発から、レッドバロンの顧客対応をめぐって激しい炎上事件がおきました。

レッドバロンにレアバイクを預けたら事故を起こして廃車、しかもノーヘル運転→隠蔽し虚偽の説明がバレると「弁護士を通して話すわ」で炎上中 ハムスター速報

 

ユーザーのはじめ氏が、レッドバロンに希少なバイクを預けたところ、店員に事故を起こされてしまい、追求していくも「修理はできない」「本部から一切話すなと言われた」「お客様窓口は存在しない」「弁護士を通して話します」とクレーマー扱いされてしまったとブログ上で告発したのです。そのあまりの対応のひどさに一気にTwitter上を話題が拡散。大手2chまとめサイトを中心に大炎上案件となりました。

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ツイート数もご覧のとおりで、「レッドバロン」についての言及内容はほぼこの一件絡みのツイートのみとなってしまいました。

BAの件と同様、結局レッドバロン側の弁護士との会談の結果、なんとか修理可能なレッドバロンではない外部の専門業者へ依頼することで、ユーザーのバイクは修繕され、その修繕費はレッドバロンによって持たれることで和解しました。話題の拡散が電凸や取材攻勢を呼び、妥協点を引き出すことにつながりました。

かつてであれば泣き寝入りするしかなかったこれらの事例のように、消費者は「問題」を解決に導くだけの強力な力を動員することができるようになったのです。では、何でも消費者の思い通りかというと、そういうわけでもないようです。

しまむら土下座事件と、Twitterの反応

9月3日、あるツイッターユーザーが、ショッキングなツイートを公開しました。

1ea4e_588_502b4b3d0bb1c8fcb4716f5ff4e6d01c【炎上】しまむら店員を土下座させツイッターにアップした女性に批判|| ^^ |秒刊SUNDAY

事件の詳細についてはツイートの中では触れられていないものの、画像公開サービスなどを遡ると、購入したタオルに穴が開いていた写真が公開されていたことから、これが土下座を強要した利用なのではないかと想像されています。

企業の落ち度を告発するという意味では前者2社のケースと共通点もあるようにみえるのですが、Twitter上の反応は完全に逆でした。

この写真を投稿したユーザーはアカウントを削除しています。しかし、本件を問題視する多数のユーザーによって個人情報の特定が進められています。炎上バイト案件と同様、この投稿者に社会的な「罰」を与えようとする動きが進んでいます。

まとめ

まとめます。前者2例からわかることは、企業と消費者の関係が変化し、これまで表沙汰にならなかったような「不誠実」に対して、ソーシャル上(ネット上)の共感を動員することで、その責任を追求することができるようになったということです。

しかしその一方、しまむら土下座の件からは、消費者の立場がただ一方的に「強く」なったわけではなく、ソーシャルという集団によって個別に「告発」の妥当性が検討・評価されているということがわかります。たとえ事の発端が特定できていない今回の状況下でも「店員に土下座をうながし、その写真をTwitter上に公開する」という非人道的な行為は「やりすぎ」だという判断が行われ、件のユーザーはモンスタークレーマーとして非難を浴びることになりました。

企業に考え方を改める必要があるとするならば、「個別の消費者」というものはもはや存在しておらず、背後にはソーシャルメディアでつながった膨大な消費者たちのネットワーク「消費者群」が存在しており、「1人の消費者」と対面しているその時、実際にはその1人に紐付いた「消費者群」のモラルと対面しているということを知っておくことであり、企業の「誠実」も「不誠実」も常にウォッチされその情報はいままでにないスピードで拡散していくということなのだと思います。

黒沼(@torukuronuma)/アクトゼロ

photo by mhogan35