僕が選挙参謀ならネット選挙をどう戦うか [前提編]

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金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼です。
(※Twitter個人アカウントいまさら始めました!フォロー歓迎です@torukuronuma)

予想より早く、今夏の参議院選挙よりネット選挙が解禁になる見通しとなりました。[前提編][運用編]の二部に分けて、ネット選挙解禁時の選挙戦で僕が選挙参謀なら、どのように戦うかについて考えてみたいと思います。

僕たちの会社アクトゼロは、企業・官公庁のWebプロモーション(※含むソーシャルメディア)を企画し、Webサイトのクリエイティブまで行うことを主業としています。クライアントは大規模~中規模のB2C企業が中心なのですが、ここ半年くらいで自治体や官公庁の案件をいくつか担当させていただき、中には政権とかなり近い官庁とご一緒させていただく機会も何度かありました。

今回は、ネット選挙解禁後に選挙応援の依頼を候補者から頂いたと仮定して、どのように戦うかという仮想戦略を行います。当然、候補者の所属政党や知名度、出馬する地域などの諸要件よって、大きく戦略は変わります。今回はできるだけ、どの候補者にも当てはまりそうな汎用的なかたちで検討していきます。選挙戦については「素人」なので仮説だらけですが、次回の更新「運用編」で企画書としてまとめ、公開する予定です。

誰に投票するか「選べない」有権者

まずは、有権者の現状分析からです。

安倍氏は「選挙の広報活動にネットを使うことが求められている。それは投票率の上昇にもつながる」と述べた。自民党は衆院選で、ネット選挙の解禁を公約として掲げていた。 
時事ドットコム:参院選までにネット選挙解禁=「投票率向上につながる」-安倍総裁 

ネット選挙解禁で、投票率が上がるという意見と、あまり変わらないという意見があります。僕は、実際はあまり変わらないのではないかと考えています。先の選挙の際もそうでしたが、選挙期間中も実質的にはネット上での議論が広く行われていました。もちろんネット上に候補者の生の声はなかったわけですが、各候補者の検討や議論という点では十分に行われていたのだと考えています。

竹田 そもそも、「投票率が低い」イコール「政治に無関心」ということではないと思いますよ。
山本 そうですね。ここ5年くらいで、投票率というものが政治関心を決定的に示すわけではない、あまり関係ないということがわかってきました。
竹田 今回の選挙は何かと争点が多く、決められないからと投票を回避した有権者も多かったということでしょう。
山本 実際、投票率が低下したとされる30代男性にヒアリングしてみると、「投票で意思決定する能力が自分にはないから棄権した」という人もけっこういるんです。
竹田圭吾(ジャーナリスト)×山本一郎(投資家・ブロガー)「ネット解禁で日本の選挙はもっとヒドくなる?」 – インタビュー – 週刊プレイボーイのニュースサイト – 週プレNEWS  

「投票に行かない」という人は、「自分には決定する能力」がないから投票に行かない可能性があるのではないかというプレイボーイ誌上の対談ですが、僕もそう感じています。投票に行かないおおくの人にとって、誰に投票するか決めることは「複雑で難しすぎる」のではないでしょうか?

前回選挙の際も「消費税増税」「脱原発」「TPP」などの主要な選挙争点について、ネット上にはそれぞれの賛否についての情報があふれていました。

まじめに政策内容で候補者選定を行おうとすると、有権者は膨大な資料と考察の中から確からしい情報を見つけだして、自分なりにそれぞれの政策について賛否の結論を出し、最も合致度が高い政党・候補者を選びだすという、こう書くと果てしなくすら感じる「ゴール」にたどり着かなくてはいけません。’05年郵政選挙、’09年政権選択選挙に比較すると、争点が複雑だった今回は、より「投票の難易度」が高かった選挙なのではないかと考えています。

その「ゴールに達するまでの困難さ」を超えられない言い訳が、「私が一票投票しても、どうにもならない」「どうせ政治は変わらない」と言った自己防衛発言につながるのではないでしょうか。

ネット選挙での想定ターゲットは、3タイプに向けた展開を行いたいと思います。

タイプA=自分で政策検討でき、選挙の度、日常的に投票を行う「意識の高い」有権者
タイプB=政策検討が困難で、投票までたどりつけない、「選挙難しかった」有権者
タイプC=ただただ「めんどくさいから投票しない」有権者 

ネット選挙解禁、「有料ネット広告」はどうなる?

次にネット上の集客・露出最大化戦略について考えます。

 与野党協議では民主党のほか、みんなの党や共産党も一般有権者の電子メール利用も認めるよう求めたため、解禁する範囲を再調整する。与党案に盛り込んだ政党によるネット有料広告の利用や、なりすましなどに対する罰則規定についても野党側は持ち帰った。
ネット選挙、参院選から解禁で与野党一致  :日本経済新聞 

13日、ネット選挙解禁が与野党間で大筋合意に至りましたが、有料ネット広告の使用範囲ついては15日に継続審議となりました。Twitter・Facebookなどソーシャルメディア上での活動や、ウェブサイトの開設、候補者によるメールの利用などは認められています。

有料ネット広告が利用可能になれば、選挙費用内の限られた予算の中での広告運用となる可能性が高いので、決まった予算の中でどの広告技術を使えば最も効率がいいのか?という選択になります。ネットユーザーのうちどういった層が政党支持者なのかとしらべるオーディエンス分析や、候補地ごとの年齢・性別などエリアターゲティングなどを組み合わせ、予算内で最大のコンバージョンを得られる手法を選択する必要があるのです。既存広告配信プラットフォーム内の属性データと「選挙」がつながるのです。
また同時に、これらの広告と連携してWebサイトの内容自体がターゲットごとに最適化されるはずです。

政策一覧ページが存在していたとして、高齢者がWebサイトを訪れた場合は「社会保障」を強調的に表示する。子育て世代が来たら「育児補助」を強調表示するといった具合に、Webサイトを動的に変更させることが可能です。見せたいものも、見せたくないものもターゲットごとに動的に切り替えることが可能になります。

もし、有料ネット広告が使用不可能になった場合、政党・候補者サイトへの集客は「どれだけネット上で話題になるか」の一点にかかることになります。Yahoo!やlivedoorなどのポータルサイトからは「◯◯党の選挙特設サイトがオープン」などとしてのトラフィック流入がはかられるでしょう(PR会社のうでの見せ所ですね)。政治と関連の強いBLOGOSなどのコミュニティからも動員が期待出来ます。Youtube・ニコ動・Ustreamなど動画メディア上、はてななどのソーシャルブックマークや、ソーシャルメディア上でのシェアによる拡散なども重要な要素となります。この場合は有力支持者の囲い込みと「支持者ロイヤリティ」の向上で、支持者自体を「発信者」に変える仕組みづくりが重要になってきます。

ソーシャルメディア活用と有権者との距離

最後にソーシャルメディアの活用と、運用方針についてです。

「女性自身 2月12日号」の記事を読んでびっくりいたしました。「安倍昭恵さん~首相公邸台所改装費に税金一千万円」と題された記事。(中略)今更ではありますが、とんでもない捏造記事です。私も昭恵も首相公邸のリフォームはおろか、ハウスクリーニングさえ依頼した事はありません。 
安倍 晋三 -Facebookページより

安倍首相のFacebookページ運用が話題になっています。週刊誌の記事に対して、自らのアカウント上で即座に反論をおこなうことで、記事の悪影響を最小限に抑えることに成功しています。橋下徹大阪市長のTwitter運用でも同じようなことが実現できています。ネット選挙解禁時に心配されていた、なりすましやデマの流布について即座に訂正することができるという意味でも、ソーシャルメディアアカウントの運用はより重要になったと考えるべきです。

また、ソーシャルメディア上では有権者との距離を最小化することが可能です。現実世界でドブ板選挙が確実に有効なように、ソーシャルメディアはネット選挙において有権者と直接会話できる「ネットドブ板選挙」メディアなのです。特にFacebookがその主戦場となるでしょう。

まとめ

ネット選挙解禁における「前提編」をお送りしました。次回更新「運用編」では、具体的にどのような戦略でネット選挙を進めていくか考えていきます。

良かったら、みなさんのアイデアもお聞かせください。コメントかTwitter(@torukuronuma)までどうぞ。

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