新サービス「fabric」の概念はデジタルマーケティングの新たな潮流となりうるか

20160822

こんにちは、アクトゼロの山田です。
自分の日常生活を記録していますか?例えば、どこにいったとか、何をたべたとか。日記をつけている人もいれば、カレンダーにメモをしている人もいるかもしれません。記憶に強く残るような印象的な出来事があったとしても、時が経つにしたがって、それが、9年前だったのか、それとも10年前だったのか、その細かなディテールは徐々に薄まっていくはずです。そうした「自分にまつわる記憶」を、自分の記憶に頼らずに残しておいてくれるサービスがリリースされました。

 

元Facebookのエンジニアによる「fabric」

今回ご紹介する「fabric」というサービスは、元Facebookのエンジニアが独立して立ち上げたもので、時間や場所といった自身の行動を、シェアするというSNS的な解釈するのではなく、ログとして自らを記録するという概念に基づいているものです。現在はまだ英語版のみ且つiPhone用のアプリしかリリースされれていませんが、日本からでも無料でダウンロードして使えます。

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アプリをインストールして立ち上げるとすぐに、そのユーザーが使用している端末のカメラロール、カレンダー、位置情報の履歴、そして、FacebookアカウントやInstagramアカウントとの連携による過去のポストの収集が始まります。この収集されたものがfabric上で「コンテンツ」として一元的に管理できるようになるのです。

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収集したコンテンツは、場所、もしくは日時という2つの切り口で見ることができます。例えば、下の左側のイメージは特定の場所に紐付くコンテンツを一覧で見る画面。そして、右側のイメージは、ある過去の一日の出来事を振り返って一覧で見る画面です。後者の方は、その日にどういった移動した軌跡についても記録されており、具体的な行動履歴を遡ってみることができるのです。

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このサービスのコンセプトが、個人の内にある記憶を外部的に保存していくというもののようで、まさしく移動した軌跡やそこで撮った写真、そして、SNSにシェアしたものに至るまで、スマートフォン上の様々な過去の履歴が集約される仕組みになっています。スマートフォンのカメラで撮って端末に保存されている写真やSNS上に投稿した記事といった、各サービスごとに分断されているコンテンツが、同じ時間軸や場所というに共通の基準で紐付けられることで、まるでその個人の記憶のコピーを保存しているかのような気になってしまいます。

分散する企業が持つコンテンツを集約する時代が来る?

このfabricはあくまでも個人での利用を前提としていますが、実は企業にとっても、コンテンツが分散化するという流れが起きてきています。例えば、SNSというカテゴリーだけ見たとしても、FacebookにTwitter、最近ではInstagramなど、複数のサービスに自社のコンテンツが分散しています。さらに、自社のドメイン内でブログを持っていたりすると、そのコンテンツは膨大なものになることは、想像に難くありません。

SNSに限って言えば、Tagboardのようなソーシャルハブを使うことで、自社の投稿を集約することはできるかもしれません。しかし、Youtubeのような動画サイトやオウンドメディア上のコンテンツといったものまで横断して集約できるものは、今のところありません。そうした中、個人レベルでfabricのようなサービスが登場したことを考えると、企業向けのサービスと言うのもない話ではないと思われます。

ソーシャルメディア以降のデジタルマーケティングにおいては、エンゲージメントやコンバージョンをしっかりと見据えた質の高いコンテンツが重視されているものの、ソーシャルメディア上やオウンドメディア上に投稿して終わりという、投稿することで完結するのが当たり前でした。そして、それらの投稿は各サービスごとに分散しているという現状があります。

しかし、fabricの登場によって、時間や場所という概念で過去のコンテンツを集約することが一般的になると、当然、企業にもとっても同様に、こうしたサービスを活用して、一元的に管理する流れが訪れることは想像に難くありません。そうなることによって、消費して終わりといったソーシャルメディア的なフロー型コンテンツの考え方に加え、それらを会社の資産として捉え、継続的に活用していくというストック型コンテンツの考え方が生まれてくることになります。

これによって、大きく変わるのが日々情報の発信を続けているソーシャルメディアやオウンドメディア上のコンテンツを制作する際のプランニング手法です。ただ単に、流行りの話題や季節を絡めればOKというわけにはいかず、流行りや季節に依存しない一定の普遍性を持った考え方を用いる必要があります。つまり、1年後、もしくは2年後にそのコンテンツを見て、エンドユーザーにとって充分に価値のある内容であるかどうか、企業が生み出すコンテンツのレベルが一段階引き上げられる転機になると考えられるのです。

デジタルマーケティングにおいては、1つのサービスの登場によって、その考え方が大きく変わることはよくあることです。その変化を感じる方法のひとつが、新しく登場したサービスをキャッチアップし、ユーザーに何をもたらすのかを理解することです。今回ご紹介したfabricは、分散するコンテンツを集約するというありそうでなかった視点から、もしかしたら新たな変革を起こすかもしれません。

アクトゼロ / 山田