SNSサービスが続々ライブ動画配信に対応する、2つの大きな目的とは?

数年前まではUstreamやニコニコ生放送といった、ライブ動画だけに特化した共有サービスが流行し、誰もが簡単にWeb上で生中継ライブ動画を発信できるようになったことが注目を集めました。これがライブ動画トレンド第1期だったとすると、現在、そのトレンドの第2期を迎えているのかもしれません。テキストや写真が中心だったSNSサービスが、アーカイブによる動画には既に対応していますが、次の展開として、各種SNSサービスがライブ動画に続々と対応・機能強化を始めています。

Facebook Live

スマートフォンで撮影中の動画をFacebook上にリアルタイム配信できる機能、「Facebook live」が2016年2月にローンチされました。配信の公開範囲を設定して配信することができ、配信中には視聴者数や視聴しているユーザー名やコメントをチェックすることができます。配信後にはアーカイブ動画としてタイムラインに動画が保存されます。開始当初は配信時間は最長で90分だったのですが、2016年5月にはその上限も撤廃されて、1日24時間ストリーミングし続けられるようになることが発表されています。

また、Facebook側はこの「Facebook live」のコンテンツを拡充する施策も行っています。米国では140程度の著名人やメディア企業との間でライブ中継動画を制作する契約を締結し、総額5000万ドル以上の報酬を支払うことが報道されています。著名人には、医学博士、有名シェフ、NFL選手などが挙げられており、報道機関ではCNN、New York Times、Mashable、BuzzFeedなどが挙げられているようです。

Twitter公式アプリに「Periscopeボタン」が実装

「Periscope(ペリスコープ)」Twitterが提供するライブ動画配信アプリで、2015年3月にリリースされた後、その後1年で配信数1億回を突破しています。これまでは、Periscopeのライブ配信をTwitterのタイムライン上で視聴することはできたのですが、配信する際には一旦Twitterのアプリから離れて、別途Periscopeのアプリを起動する必要がありました。それが2016年6月に、Twitter内でPeriscopeを起動することができるようになりました。(Twitter公式アプリの他に、別途Periscopeアプリのインストールが必要です。)

TwitterとPeriscopeの連携によって、より手軽にライブ動画を配信できるようになり、その更なる活用が期待されています。

Tumblr Live

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マイクロブログなどと呼ばれる「Tumblr」(タンブラー)も6月22日、ライブ動画配信に対応することを発表しました。こちらは独自のライブ動画配信機能を追加するものではなく、既存のライブ動画配信サービスと連携を取れるようになったもので、動画サービスのアカウントからTumblrに投稿できる形を取っています。現段階でTumblrと連係することができるライブ動画サービスは、「YouNow」「Kanvas」「Upclose」「YouTube」の4サービス。いずれもAndroid・iOSに対応するアプリがあります。ライブ終了後には、アーカイブ動画として一般の動画同様に保存され、Tumblr独自の「リブログ」(Twitterにおけるリツイート機能にあたる)が可能です。

YouTube、スマホからのライブストリーミングに対応

これまで、YouTube Liveは、ビデオカメラなどで収録した映像をPC等を介して配信する形でしたが、先月6月、スマートフォンのアプリから直接ライブ動画配信が可能となる新機能を発表しました。これまで挙げてきた、Facebook・Twitter・Tumblrなどのサービスインに対抗する構えからなのでしょうか。

何故、各SNSサービスが今、動画ライブ配信に注力するのか?

冒頭に述べました、トレンド第1期のサービスにあたるUstreamは、日本法人を解散したり、ニコニコもユーザーの高年齢化が話題になったりと、一段落した感がある現在、何故、各SNSサービスは動画ライブ配信サービスにこぞって参入を続けているのでしょうか?それには2つの理由が挙げられるのではないかと考えます。

1.コンテンツの拡充による広告費の拡大

Facebook Liveの項目でも書きましたが、著名人やメディアにライブ動画コンテンツを報酬を付けて制作させたり、Twitterでも、米国で人気を誇るスポーツであるアメフトの試合を、2016年シーズンの木曜夜に開催される10試合をライブ動画配信する契約をNFLと交わしたりと、ライブ動画を重要なコンテンツと位置づけ、自サービスでしか視聴できない独占的なコンテンツの拡充に努めています。そうした価値の高いコンテンツでの広告には高い価値が生まれ、大きな収益源となります。また、高品質なコンテンツを配信していることが、自社SNSサービスのブランディングの価値を高め、ユーザー増などに寄与することも期待できます。

2.滞在時間の延長

Webサービスの価値を計測する指標として、ユーザー登録数やアクセス数などに加え、ユーザー一人あたりの滞在時間という指標があります。ユーザーが訪問し、閲覧開始からどの位の時間をコンテンツを消費するのに費やしたかの時間のことです。テキストや写真などのような静的なコンテンツでは、流し見することができてしまったり、アーカイブ動画では飛ばし見することができてしまいますが、ライブ動画では現在進行のため、その先に何が起こるか分からず、魅力的なコンテンツであれば一人あたりの視聴時間が長くなる傾向にあります。これは、SNSサービス自体におけるユーザーの滞在時間を伸ばすことに繋がり、自サービスの価値向上に繋がります。

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Facebookのマーク・ザッカバーグ氏は講演などで、テキスト中心だったSNSでのコミュニケーションが、Instagramに代表されるような写真が中心となるものに変わり、現在は動画へ、そしてこれからはVR(仮想現実)に代わっていくと語っています。まさに現在、発展の過渡期として、各SNSサービスによる、ライブ動画配信サービスの覇権争いが始まっているのです。