シリーズ ”爆買いの現場から” ~第1回「二木ゴルフ」富裕層中国人観光客の高級品志向

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訪日外国人数がここ数年で飛躍的に伸びているのは周知の事実である。それは数字が裏付けており、2015年の訪日外国人数は前年比47.1%増の約1973万人と3年連続で過去最多を更新した。政府は、2020年の訪日外国人数の目標を2000万人と掲げていたが、現在は上方修正し、4000万人の目標を掲げている。

こうした訪日外国人が日本滞在中で使う消費額も比例するように、2015年で約3兆5000億円と前年比約7割も増加している。今後、少子化・人口減などに伴う国内消費が頭打ちとなっていく中、訪日外国人による経済効果は日本企業にとって新たに重要な販売チャネルとなっていく。特に中国人観光客の「爆買い」というキーワードはすっかり定着し、日本企業も彼らに対する様々な施策を試みている。本シリーズ ”爆買いの現場から” では、実際に外国人観光客に対してビジネスを展開する企業に、その現状や施策についてインタビューし、今、日本で進行中の「爆買い」のリアルな姿を浮き彫りにしてみたいと思う。

二木ゴルフの事例

記念すべき第一回の企業として、個人消費の中でも高額な部類となるゴルフ用品に注目してみる。

ゴルフ用品販売の大手として知られる「二木ゴルフ」。北海道から福岡まで53の店舗を超える全国規模で展開し、従業員数665名(2012年現在)を誇る、ゴルフ用品小売業界ではトップクラスの大手企業だ。

1973年(昭和48年)に「二木の菓子」のゴルフ事業部として創業、現在も本店の東京・アメ横に1号店を開店した。1994年(平成6年)には社名を「株式会社二木ゴルフ」に変更。現在では店舗網・売上規模ともに、母体となった二木の菓子を凌ぐ規模に成長している。

20160426_01お話頂いたのは、二木ゴルフ 経営企画室経営企画課 次長の松本賢氏

二木ゴルフの外国人客の現状

◆やはり外国人客の来店は増えていますか?
まだまだ当社は日本人のお客様による売上が中心ではありますが、着実に外国人のお客様からの売上も伸びています。直近6ヶ月間の数字だけを見ても過去と比べると最高の数字で、約3年前と比べると5倍程度の伸び率となっています。この傾向は恐らく今後も続いていくのではないかと思います。

◆どの国からのお客さんが多いですか?
海外からのお客様のおよそ8割を中国・韓国からのお客様が占めています。残り2割はタイなどの東南アジアや欧米からの方になっています。

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ショッピングのメッカである東京御徒町・アメ横。ファッション・海産物などの食品を販売する店などが多く軒を連ねる。少し歩いてみれば、外国人観光客の姿が多く目立つことに気づく。

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アメ横の入り口に位置する、二木ゴルフ・アメ横本店。第一号店であり、旗艦店でもある。特に桜の時期・年末は人出が多く、来客も多くなる。

外国人客に対する施策と、購買の傾向

◆こうした海外からのお客様に対して店舗ではどのような施策を講じていますか?
現在、全国の店舗のうち、東京(アメ横本店)・福岡(博多麦野店)・兵庫(神戸東灘店)・大阪(泉佐野)の4店舗で免税対応を行っています。当社は郊外でのロードサイド店展開を中心行っているため、訪日外国人の方が多く来られる店舗が限られています。4店舗のうち、アメ横本店では中国人の方、博多では韓国の方が多い傾向が見られます。

店頭では英文・中文によるPOPなどの表記や、店頭に24時間オンラインによる各国対応可能な通訳サービスを準備して対応したり、主要店には英会話対応が可能なスタッフも常駐させています。ゴルフを行う外国人、特に中国人の富裕層は教育水準が高く、英語を話せる方が多いように思います。一般の店員にも、指差し会話シートなどで対応できるようにしています。

最近の外国人のお客様の中でも、特に中国・韓国からのお客様は事前に買うブランドやモデルを決め打って来店されるケースが多く、メーカーやモデル名と価格といった、簡単な単語やコミュニケーションで販売が可能な場合が多いようです。

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iPadを店頭に配備し、オンラインによる翻訳サービスを行っている。実際の通訳者を介して、外国人客・店員のコミュニケーションが可能。

◆外国人客、特に中国人客の購買に関する傾向は?
まずは日本人のお客様と比べ、平均客単価が高いです。当社では日本人のお客様の平均客単価は1.1万円なのですが、外国人のお客様、特に中国からのお客様はその5~10倍の単価となっています。

購入する製品も、中国人のお客様はゴルフクラブでは高級品を選ぶ傾向が強いです。100万円以上のクラブセットも少しづつですが売れています。少し前までは、金色のクラブが好まれる傾向がありましたが、今では人気も分散しているように思います。「せっかく日本に来たのだから良い物をまとめて買いたい」といった情熱を感じます。

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高級品から順番に人気がある。取材日も、熱心にゴルフ用品を探している外国人観光客の姿があった。

また、ウェアでも高価な人気のブランドの商品を、20~30着を一気に購入するお客様もよくいらっしゃいます。こうした方の購入傾向を見ていると、同じブランド・柄の商品でも、最小サイズから最大サイズまで全て買っていたりします。まるでそのまま店頭に並べられるようなラインナップで。バイヤーとして人気商品を日本に仕入れに来ている方もいらっしゃるようです。

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人気ブランドは世界共通のため、日本以外の主要国でも購入できるが、その場合欧米向けの大型のサイズになってしまうことが多い。その点、日本人と中国人は体格が近いため、中国人にも適したサイズがある日本で大量購入するのだとか。

当社の場合、外国人のお客様からの売上は、日本人の方からの売上と比べると、年間を通してシーズンによる著しい売上の差はありません。中国では、春節・国慶節と年2回大型連休のタイミングがありますが、多少は多くなりますが、とても多くなるといった状況ではありません。ゴルフのシーズンである、春と秋がピークになっています。

インバウンド施策について

◆二木ゴルフの海外、特に中国に対する展開についてお聞かせ下さい。
現在、自社サイト・Amazon・楽天・Yahoo!でECを展開しています。現状では日本国内のみを対象としていますが、今後、越境ECなど海外展開も視野に入れて検討中です。

現在、対中国のWeb施策としましては、weibo(中国版Twitter)に公式アカウントを設けて運用・情報発信しています。対象は、中国にお住まいで日本・ゴルフに関心のある方で、日本の店舗の紹介・新商品紹介・日本の四季などについてお伝えしています。訪日するタイミングで当社店舗に来店するきっかけになればと考えています。文章を日本語で作成し、翻訳業者に翻訳を依頼しています。

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中国語で運用する、二木ゴルフ(二木高尔夫)のweibo公式アカウント(http://weibo.com/u/5348495743

記事を投稿する度、いろいろな反応を頂いています。簡単なメッセージだけでなく、「◯日に日本に行くが、メーカー名◯の☓モデルを予約して当日引取りできるか」などのような具体的に購買に結びつくコミュニケーションも発生しており、少しづつではありますが売上に寄与しつつあります。

また、昨年秋にweibo上でキャンペーンを実施しました。いいねをしてくれたフォロワーを対象に、抽選でデジタルカメラ等をプレゼントする企画です。広告も使った効果もあり、非常に大きな反響を頂きました。この結果を踏まえ、今年は年間4回実施する予定です。

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昨年秋に、リツイートしてくれたフォロワーに対し、デジタルカメラやクラブが当選するキャンペーンを実施。大きな反響を得た。

◆今後の訪日インバウンド施策について展望をお聞かせ下さい。
中国人の中で、ゴルフを楽しんでいる人口はまだ0.1%程度と割合は低いものの、確実に居ることは確かで、しかもそうした皆さんの多くは富裕層であり、当店の例だけを見ても訪日した際の消費額は驚くほどのものがあります。今後、確実に売上に寄与する対象として、海外観光客に対する施策は打って行きたいと考えています。具体的には、免税対応店を今後さらに増やし、現在の外国人のお客様による売上を数年内に2~3倍に伸ばしていきたいと考えています。

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今、ゴルフ場を始めとしたリゾート、特に北海道における施設には、中国資本によるものが増え始めた背景もあり、中国人観光客の間で北海道の人気が高まりつつあります。こうしたゴルフ場と当社の北海道の店舗が連携して、ゴルフファンに対するツアーのようなものが企画できると、当社・ゴルフ場運営企業・海外からのお客様、三者ともにお互いにメリットがあると考えています。

 

着実に、外国人観光客の来店・購買が増え続けている二木ゴルフ。個人消費の中では高級品の部類に入るゴルフ用品のジャンルにおいて、中国人の中でのゴルフファン人口はまだ割合では小さいものの、確実にそのパイは居ることと、その小さなパイに属する人はほぼ富裕層であることから、日本国内での店舗・EC展開が中心の企業であっても、訪日インバウンド消費に対して無視できないインパクトがあるようだ。この傾向は今後も継続・増加すると予想され、さらに重要な購買チャネルとして注目し、今後、よりインバウンド施策に力を注いでいく二木ゴルフの取り組みに注目を続けたい。

今後も本シリーズでは、様々な業態のビジネスについて取材し、今、日本で進行中の「爆買い」のリアルな姿を浮き彫りにしていきたく思う。