英語圏最大の匿名掲示板4chan管理人mootが語る、ソーシャルメディアと匿名コミュニティの未来

moot

photo by remisser

 

皆様こんにちは、アクトゼロの黒沼です。

 

 

ソーシャルメディアインサイト今回は、先日ニコニコ生放送で行われた「元2ch管理人ひろゆき」と、英語圏最大の匿名掲示板「4chanの管理人moot」のトークセッションでの”moot”の発言内容についてのまとめと、そこからおぼろげに見えてくるソーシャルメディアの先にある未来について、考えてみたいと思います。

日本国内では、FacebookGoogle+Linkedinなど海外から来た実名ソーシャルメディアの隆盛が目覚しいですが、その反対に実名ソーシャルメディアの本場と行っていい米国内で近年、匿名掲示板4chanが存在感を増しつつあることはご存知でしょうか?そして、そのルーツには日本の匿名掲示板の存在があります。
2009年米Time誌が選ぶ「最も影響力のある人物100人」の中に、4chan管理人のmootは選ばれました。実際、英語圏の匿名掲示板としてはぶっちぎりの存在です。公式発表によると、4chan全体で、1ヶ月に7億インプレッション、ユニークユーザー数は1000万人で、一日の投稿数は100万件を数えます。AlexaのランクでGlobalで[723]位,USで[383]位です。この順位は、foursquare.comや、mozilla.orgUnited Airlinesustream.tvを上回る順位です。

  

4chanのルーツ

日本では今やメジャーな存在になりましたが、1999年5月30日テキストメインの巨大匿名掲示板「2ch」は、運営を開始しました。順調にユーザー数を増やしていきましたが、2001年、増大するトラフィックを支えきれず資金難で運営の危機が叫ばれる頃、画像も投稿できる匿名掲示板「ふたば☆ちゃんねる」が、2ch閉鎖後の受け皿として設立されました。その後2chは何とか閉鎖を回避し、今日に至るのですが、並行して「ふたば☆ちゃんねる」は、独特のカルチャーをもった匿名画像掲示板として、現在も存在しています。扱っている内容は、アダルト・サブカルやフリークなものでしたが、国内のみならずそれをROMとして楽しむ海外ユーザーがいました。画像掲示板であることが、言葉の通じないユーザーをも惹きつけたのです(最近はノンバーバルコミュニケーションとかいいますね)。

mootはその海外ユーザーの中の一人でした。2003年10月1日mootはふたば☆ちゃんねるのスクリプトを使って、4chanを立ち上げたのでした。

 

ニコ生でのインタビューまとめ

引用部分が、mootの発言です。(一部超訳)

4chanのトラフィックについて

サーバーはロサンゼルスにあり、帯域幅は2Gbps。
広告収入のみで運営していて、運営はボランティアで志願者を募っている。
サーバー管理費が払えず、寄付で一度150万円をつのったが、その時のスローガンはDonate or Die(寄付か死か)だった。

Donate or Die は面白いですね、2chに近いカルチャーを感じます。これだけ集まんないともう4chanは終わり!ってメッセージなんですね。


4chanを根城とするハッカー集団アノニマスについて

2008年2月に、トム・クルーズのサイエントロジー動画がyoutubeに上がったときに、Youtubeにそれを削除させようとしたグループの集まりが、アノニマスの発端だった。
数百人のメンバーを抱えていて、僕が参加しているわけじゃないけど、メンバーの熱意の高さや活発な活動については、スゴイと思っている。

 アノニマスの活動についてはwikipediaなどに詳しいですが、近年では、社会が匿名である状態を守るための義勇軍的な主張が多く見られます。姿をあらわす際は、常に仮面を被って登場することからもわかる通り、インターネット上の匿名社会のアイコンになろうとしている様子が伺えます。SONYやPSNの情報漏えいなどについては、結構ニュースになりました。


 ユーザー投稿型のサイトの面白さとは何か

4chanにはニコ動のようなリアルタイム性はないが、投稿が活発で常に新しい情報が、入れ替わり立ち代わり現れていることがもっとも面白い部分だとおもっている。
ユーザーがいつ訪れても新しい発見がある。一番人気のある/b/には、いちどに15スレッドしか立たないが、狭い部屋に多くの人間を押し込んだような、濃密な情報の空間となっている。

一般的に掲示板では、誰かが書き込んだものに、ポツポツ返事が来る。といったコミュニケーションになるものですが、mootの言っていることは、投稿が連続的に集中するとき現れるリアルタイム性の面白さを指しているんだと思いました。Twitterに触れて、「人」を軸としたリアルタイムの情報の行き交いに感動したことがあるユーザーならば、その何年も前に匿名掲示板の利用者はそれと近いモノを感じていたということになります。今の2chの人気スレッドも「場所」を軸とした、リアルタイムコミュニケーションといっていいのではないでしょうか?


 日本では悪者として扱われることの多い2chですが、4chanの社会での受け入れられ方はどうでしょうか?

4chanも2chと同じように、否定肯定入り混じっているけど、有名になってきたのは2008年、18才~25才くらいのちょっとオタクっぽい人間=GEEKならアメリカではだいたい4chanのことを知ってるんじゃないかな。


 そして話題は核心に迫ります。

ソーシャルメディアの最終形についてどのようなものになると思いますか?

もっと開かれたものになると思う、各個人がノードとして扱われるようなものになるかもしれない。今はFacebookに一極集中しているけど、もっと分散した形になるだろう。
Facebookは10億ユーザーに手が届くくらいユーザー数を伸ばしてるけど、なにか一つミスすればすぐ次にその座は次の誰かに移るはず。今そのタイミングを待ってるサービスが、いくらでもあるから。
Microsoftが巨人だった頃、まさかGoogleが出て来て今みたいになるなんて、思ってなかっただろうしね。

どこかの場所に集まって、ソーシャルグラフを築くという形から、自分自身がその窓口になるような、もっと分散化して開かれたものになるだろう、という答えでした。

たしかに今はソーシャルメディア同士のパイの奪い合いが続いていて、所属するソーシャルメディアによってアクセスできるユーザーに限界がある状態だといえます。Facebookはやってるけど、Google+Twitterはやってないといった場面は、普通に僕達の回りで起きています。ソーシャルメディアが増えるたび、所属できる数には限りがある。そこにmootは現在のソーシャルメディアの限界を見ているのです。

誰もがオープンにソーシャルグラフを持てるソーシャルメディアの未来。それをもたらすのは「オープンで分散型の新しいソーシャルメディアサービス」でしょうか、誰もが所属する「巨大ソーシャルメディアによる独占」でしょうか。

 

そして匿名のゆくえ

テクノロジー・カルチャーマガジンのWIREDでは、2010年2月TED会議で行われたmootの講演レポートを行いました。そのなかでmootは以下のように発言したと記録されています。

mootの講演は、だいたいが4chanについての説明だったが、講演の最後のほうで彼は自分の主張を明らかにした。匿名性は良いものを生みうるものだが、最近の人々は自分から匿名性を失おうとしているという主張だ。
ソーシャル・ネットワーキング・サイトや恒久的なIDを保持できるサービスへの参加を人々は選択しており、このままだと4chanのようなサイトは恐竜と同じ絶滅の道をたどり、ネットの偉大な力のひとつが失われるかもしれないとmootは語った。
自分が望むように発言し投稿できるという力はたしかに強力だ。しかしmootは、匿名性の危険性については語らなかった。

日本でも、実名ソーシャルメディアが本格上陸してきたとき、一部のネットユーザーからは猛烈な拒絶がおこりました。それまで「匿名があたりまえ」だった日本のネット利用の前提を覆すような新しく刺激的な文化だったからです。そして割と不毛な、「実名派」対「匿名派」の舌戦がいたるところで、繰り返されました。僕はこのインパクトをきっかけに、ネット上に公開して問題がない「実名の自分」を公開して記事を書き始めました。だけど当然これが「僕」のすべてではありません。誰もが他人の心のなかを覗くことができないように、僕の僕だけが知っているパーソナリティは、実名の顔と同様に、匿名の顔でもネットを自由に動きまわります。

mootが言ったように、実名が匿名を食いつぶす、という心配を僕はあまりしていません。人の心が「公」と「私」を持つ以上、その表象としてネット上にも匿名メディアは求められ続けると考えています。匿名ネット利用が主流派だった日本に、実名メディアが現れ、実名ネット利用が主流派だったアメリカに匿名メディアが現れたのは、インターネットがやっと人間のカタチに馴染んできた、その結果なのです。