YouTubeで演者とファンの境界を超える、マキシマム ザ ホルモン公式「LIVEのノリ方講座」

金曜日のソーシャルメディアインサイトをお送りします。アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。あついですね。

今日は、昨日公開されたマキシマム ザ ホルモンのYouTube動画「『恋のスペルマ』“FES等におけるLIVEのノリ方講座”」についてお送りします。

マキシマム ザ ホルモンについて

koispeマキシマム ザ ホルモン公式サイト

マキシマム ザ ホルモンについてどれだけ説明をすればよいのか計りかねますが、マキシマム ザ ホルモンは結成15年目の日本のメタル・パンクバンドです。ファンとの関係が「濃い」ことで知られ、メンバーはファンのことを親しみを込めて「腹ペコ」と呼んでいます。楽曲タイトルやオフィシャルのビジュアルは恐ろしげですが、メンバーのキャラクターは近所のあんちゃん的な親近感がある愛すべきバンドです。ニューアルバム「予襲復讐」のタイトルソングはこちらです。

アーティスト自ら演じるノリ方講座の異常

そしてこちらが、新曲『恋のスペルマ』がフェスで演奏された時にどのように盛り上がればいいかを、「アーティスト自ら」考えて撮影してアップするという前代未聞の動画であり、早々に10万再生を超えました。まともにノリ方を演じている部分と、「こりゃひどい」というおふざけの部分がごちゃまぜになった動画です。動画後半では息も絶え絶えのメンバーが倒れ込みます。

アイドルの「振り」を覚えてYouTubeにアップするファンはいますが、それでも「アーティスト」と「ファン」の間には距離が有り、その距離が開いているからこそアーティストの公式ビデオを見て真似るわけです。ライブ会場で「ノリ方」がファンの間で統一されることはままあるものですが、そういった「お約束」はファンの中から自然発生的に生まれ、濃厚なファンのネットワークの中で共有され、やがて一般化されていくのが普通です。

アーティスト自ら、ファンの先頭でどのように乗ればいいかを冗談交じりとはいえ先導する。送り手とファンの間の距離がほぼゼロに近いこの関係こそが、マキシマム ザ ホルモンとファンとの特殊な濃さにつながっています。この動画を見たファンはマキシマム ザ ホルモンの「挑戦」に、フェス会場で「振り完全コピー」というかたちで応えることでしょう。そしてその時、音楽業界で前例がないからこそ、両者の特別なつながりの「証明」として、壮大なコールアンドレスポンスとして機能するのです。

ソーシャルメディア時代のコミュニケーションの距離感

ソーシャルメディアの登場は情報の流動性を高めました。アーティストの世界観は日常の可視化で、かつてのようなカリスマとしての距離感を保てなくなりました。企業においてはテレビCMのような「キレイごと」だけの情報発信では、共感を得にくくなってしまいました。ネット上の「送り手」と「受け手」が存在するあらゆるコミュニケーションの距離は、ソーシャルメディア登場以前と比べて、より狭く・近くあることを欲されています。マキシマム ザ ホルモンはその距離をゼロにするどころか、「ファン」の側にまで入り込むことで、自分たちがファンとともにあることを伝えています。コミュニケーションの距離感の変化を、彼らは肌で感じとっているのです。

「地上波出演なし」「初回盤なし」で15万枚突破 マキシマム ザ ホルモンの”逆張り”プロモ術 – Real Sound|リアルサウンド