Facebookの「Watch」がVOD・動画配信市場を変える可能性

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Facebookは8月10日、新サービス「Watch」を発表しました。

「Watch」と呼ばれる新しいタブでは、大量のオリジナル番組を提供すると事情に詳しい関係者が明らかにした。同社が提携する出版社やコンテンツ制作会社から、まずは約40番組がランナップされる。
(中略)
Watchタブは、Facebookの従来の手法通り、導入後すぐに使えるようになるのは、全ユーザーの数%のみ。その後数週間にわたって、全てのユーザーに提供される。
(「Facebook、テレビ業界を震撼させる動画タブ「Watch」を導入」Business Insider 2017.8.10)

(「Introducing Watch, a New Platform For Shows On Facebook」Facebook News Room)

最近、SNS上で動画が活用される事例が多くなっていますが、この「Watch」は動画コンテンツを提供する場であり、イメージとしてはFacebook版のYouTubeやHulu・Netflixのようなもののようです。上記引用中にもあるように、まずは米国の一部ユーザーに対してサービスを解禁して、その後順次別のユーザーや国へサービスが拡大されていく予定のようです。

「Most Talked About(話題の動画)」「What’s Making People Laugh(爆笑動画)」などのような複数チャンネルで配信され、動画を視聴しながらコメントを付けることが可能です。動画の収益はFacebookと動画提供パートナーで按分され、パートナーには金額の55%が入る仕組みになっています。

参加するコンテンツプロバイダーとしては、ナショナルジオグラフィックやメジャーリーグ、A&Eネットワークス(ヒストリーチャンネルなど)などが挙げられており、欧州サッカーの一部の試合の配信権も取得したと伝えられています。

Facebookの特徴といえば、細かくターゲティングできる広告が挙げられますが、恐らく「Watch」でも、ユーザーが事前に登録した情報や視聴傾向を基に、細かなターゲティングが可能な動画広告メニューを準備することが予測されます。同時に、広告がどれだけ視聴されたか、視聴の結果どのような行動が取られたかなども細かにレポートできるようになることも期待されます。

後発ながら、FacebookというSNSで成功を収めた大きな事業者がVOD(ビデオオンデマンド)業界へ新規参入することで、この業界が再編されるかもしれません。

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VODサービスの現状

世界的に最も規模が大きいサービスは米国発のNetflixです。コンテンツ制作に予算を大きく割いており、コンテンツの質と量を武器に、現在では190カ国以上でサービスを展開しており、1億人以上のユーザーを抱えています。

米国の2016年の動画配信サービス市場を見ると、そのシェアの53%をNetflixが占め、続いてアマゾンプライムビデオが25%、Huluが13%程度と言われています。

しかし、我が国日本ではこの勢力図が大きく異なっています。「動画配信(VOD)市場に関する調査結果」(GEM Partners株式会社 2017.02.08)によると、日本のVOD市場の76.8%を占めている「定額制動画配信(SVOD)」の推計シェアは、NTTドコモが運営する「dTV」が最も大きく、シェア2位は米国発の「Hulu」、3位はUSEN系の「U-NEXT」という結果になっており、上位3社でおよそ半分のシェアを占めています。

日本では比較的後発だったNetflixはシェア7位(約4.2%)と苦戦しています。また、これらのサービスの他に、2017年からJリーグ中継を開始したスポーツ専門サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」や、サイバーエージェントとテレビ朝日が運営する「AbemaTV」も日本では人気を博しており、2017年以降のシェアの変動が注目されてきます。

ちなみに、2016年の動画配信市場全体を推計すると、2015年に比べて16.0%増の1,636億円。また、2016年から2021年にかけて年平均7.7%で成長して2021年には2016年の1.4倍である、2,369億円規模まで拡大する予測がされています。

民放テレビ局も参入

動画配信市場の成長とテレビ離れという現状の中、民放テレビ局が動画配信市場に参入する動きが強まっています。

前述した通り、テレビ朝日はサイバーエージェントと「AbemaTV」を運営したり、Huluは日本テレビ傘下でサービスを続けて会員数を伸ばしています。インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本テレビが2016年12月に設立した動画配信プラットフォーム企業「JOCDN」には、名だたる民放各局も出資していたり、TBS・日本経済新聞社・テレビ東京・WOWOWなどは共同で動画配信サービスの新会社「プレミアム・プラットフォーム・ジャパン」を7月に発足させたりと、各民放テレビ局も動画配信市場に参入しようと画策しています。

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このような、まさに戦国時代の群雄割拠を連想させるような動画配信市場で、Facebookの「Watch」はどのような存在感を表すのでしょうか。SNSサービスの各プラットフォームに動画配信機能が整った今、重要なのはコンテンツ。私達ユーザーからすると、動画配信サービスが一段と普及して、複数サービスから比較して選べるようになると、益々コンテンツの質・量・内容が重要になってくるでしょう。