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アドブロック問題から考える、広告表示の健全性

広告市場において右肩成長が続くWeb広告ですが、規模の拡大に伴い、そのあり方を見つめ直すタイミングとなっています。先日Googleは広告改善への取り組みとして、Webサイトの閲覧を妨げる”迷惑な広告”を2018年頃からGoogle Chromeで掲載停止すると発表しました。

Google としては、オンライン広告の改善が必要だと考えます。Coalition for Better Ads という、オンライン広告の改善に取り組む業界団体に加盟したのもそのためです。同団体が最近発表した Better Ads Standards(広告改善の基準)では、業界が消費者目線で広告を改善するための、データに基づいた明確な基準が公開されています。

(引用元)すべての人にもっと快適なウェブ体験を – Google のオンライン広告改善への取り組み

The Initial Better Ads Standards Coalition for Better Ads

「Better Ads Standards」で規制対象としているモバイル広告例

こうした取り組みの背景には、世界的に利用率が高まるアドブロックの存在が大きいでしょう。アドブロックで積極的に広告を避ける行為が一般化し、業界全体がやせ細ってしまわないように、Googleが広告の健全化に向けて本腰を入れはじめたのではないかと考えます。

巨大プラットフォームの方針に対応していくのはもちろんですが、私自身もWeb広告に携わる一人として、広告業界の健全化に向けた動きについて考察していきたいと思います。

日本におけるアドブロックの利用率は?

欧米を中心に広がるアドブロックですが、日本での利用率はそれほど高くないようです。また各国では若年層が多く利用していますが、日本の場合は全年齢的に利用率が低いという調査結果があがっています。

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アドブロックの普及率 2016年12月(PageFair)

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ロイター研究所 – デジタルニュースレポート2016調査結果(画像はDIGIDAYより引用)

また、株式会社フルスピードが昨年2月に行った「広告ブロック機能」に関する意識調査では、広告ブロック機能の認知度は半数程度。またインターネット広告への意識について、「全ての広告が邪魔」と考えるユーザーは1.8%に留まり、「収益のために必要」「得られる情報のひとつ」「有益と感じる」と肯定的な回答も一定数みられました。

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今後アドブロック対策の1つとして、広告を受け入れてくれるユーザーの割合を増やせるよう、より有益な情報発信を努めていくことが業界全体の課題であると考えられます。

「見たくない」も選択できる広告のありかた

冒頭でとりあげた「迷惑な表示形式」への規制のほか、今後は広告の中身に関してもユーザー中心に規制強化されていくのではないかと予想します。

たとえば、Googleが提供するディスプレイ広告では下記のように右上に「×」印があり、クリックすると表示を停止したり、その理由をフィードバックすることができます。

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広告枠自体がなくなるのではなく、あくまで同じバナーの表示を停止する申請となりますが、「この広告見たくない」「同じ広告ばっかり出てきてウザい」などネガティブな体験を減らすことにつながります。また中央の画像にある「Ads by Google(「広告表示設定」と表記される場合も)」を押すと、この広告が自分に対して表示される理由を知ることができます。
こうした機能の認知度はまだ高くないようですが、「×」とあることで「消せる」ことは一応直感的にわかるようになっています。

その他プラットフォームでの取り組み比較

実はYahoo!、Facebook、Twitter、LINEなど主要プラットフォームでもこうした機能は付属しており、「見たくない」を選択することが可能です。

図2

↑YDNでは、右上の「i」マークを押すと広告表示の詳細がみれ、非表示を設定したり(要ログイン)、広告に対する意見・要望を送信できる

図3

↑Facebook(上)とTwitter(下)では、右上のプルダウンメニューを押すと広告非表示を選択したり、表示理由を詳しくみることができる

↑Instagram(左)とLINE(右)も同様に、右上のメニューを開くと広告非表示を選択できる

プラットフォーム側としてもユーザーの満足度や利便性を高めるためか、こうした機能は設けているようですが、前述のGoogleと比べるとやや伝わりづらいUIに感じます。
また、DSPのサービスや広告形式によっては非表示の選択ができないケースも多々存在。業界内でもまだきちんとルール化ができておらず、今後メスが入る領域と言えるのではないでしょうか。

健全化はユーザーと企業双方にメリット

広告主としては、こうした取り組みはクリック数の減少などを懸念してしまいそうですが、その一方で有益な部分も多いのではと考えます。

たとえば表示回数やクリック率だけでなくお客様の反応をみてクリエイティブを評価・改善したり、ターゲティング設定を見直すきっかけにもなります。そしてなにより、誤クリックを減らすことで「本当に関心があるユーザー」のデータを取得でき、企業と生活者両方にとって望ましい関係式につながるはずです。

アドブロックが浸透してWeb広告を出しても「見られない」状態になってしまう前に。
ネガティブな反応もしっかりと掬いあげ、よりユーザー中心のコミュニケーションにシフトしていくことを推奨していきたいと思います。

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