ソーシャルメディアでのコミュニケーションから商品は開発できるのか?

企業と顧客が直接的に交流できる場は、以前は非常に限られていました。しかし、ソーシャルメディアの浸透によって、その機会が自然に生み出されています。
今回は、 ソーシャルメディアの交流を通じて商品を開発できるのかどうか、事例をご紹介しながら考えてみたいと思います。

コミュニケーションを主軸にニーズを吸い上げる

企業がソーシャルメディアを活用する目的として、現状最も多いのは「情報発信のため」ではないかと思います。

しかし、そもそも双方向にコミュニケーションを行える「ソーシャル」という場では、こちらから情報を「プッシュ」する以外にも、当然相手から情報を引き出すという「プル」する側面も持っています。企業の場合、多くのユーザーと繋がっている「1対多数」の状態が多いため、ひとりひとりと個別に交流することはとても大変で、情報発信を主軸に考えると、双方向でのコミュニケーションに注力するのは有用なアクションだとは言えません。

しかし、顧客とダイレクトな関係を築き、そこからニーズを引き出すという目的を持つのであれば、その双方向のコミュニケーションこそ最も重視するべき点です。

ソーシャルメディア上でのニーズの吸い上げる際のポイントは、以下であると考えています。
 

【交流の中から指向性を探る】

当然のポイントですが、コメントのやり取りなどコミュニケーションの中から、顧客の意見を引き出すということです。
交流の中で自然にやるにはそれなりのスキルが求められるので、あえて直球を投げてみるというのも手ではあります。
すでに市場に出ている商品やサービスについて、その感想や意見を集めるだけでも多くのヒントが得られるでしょう。相手がどれだけ具体的にイメージして、コメントをすることができるかが重要になってきます。

【厳しい意見ほどヒントの固まり】
好意的な内容だけでなく、厳しい意見をいただくことも、ケースとしては多いと考えられます。
もちろん、根拠のない厳しい意見を投稿する「愉快犯」も、一定数いることは間違いありません。
しかし、いわゆる厳しいコメントというのは、裏を返せばその企業や商品に対して「こうしてほしい」「これならいいのに」といった感情を持っていることが多く、率直な意見をしてくれる素晴らしいお客様であると言えます。
そういった意見に耳を傾けることで、さらによい商品やサービスが生み出されることも間違いなくあると思います。

サッポロビールの挑戦

ここで一つ事例をご紹介したいと思います。

この事例は、サッポロビールが新しいビールをFacebook上でユーザーと一緒に作っていくというものです。
Facebook上でこのような取り組みを行うのは日本で初めてなのではないでしょうか。

Facebookの役割として、大きく3つあります。

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①ビールについての知識(情報)を発信
よくある一般的なFacebookページの活用方法と言えるので特筆すべき点はありません。

②ビール好きが交流し議論する
いわゆる意見を交わす場としての位置づけで、運営側と参加者が対等に交流し議論することで、新しい商品を生み出すコアになる部分です。
企画の肝になる要素だと考えられます。

③ゲーミフィケーション要素
ここが今回特筆すべきだと思われます。
一般的に公開された場での交流を行う場合、一定数の参加は想定できるとは思いますが、より幅広い意見を集めるためにはより多くの人に参加していただくことが重要です。その参加するモチベーションを作り出すために、ゲーミフィケーションの要素を用いている点は特徴的だと言えると思います。

「百人ビール・ラボ」では、積極的に参加したユーザーにポイントを付与し、ポイント上位100名を「百人ビール・マイスター」に認定するとしています。
「百人ビール・マイスター」は、開発商品の先行試飲といったインセンティブが与えられます。
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このように、ユーザーとの交流から商品を生み出すというスタイルは、徐々に増えてくるかもしれません。
そういった取り組みを行う際に、どういったフレームを用意するのか、そして、参加者を集めるための仕組みを作り上げていくのか、といった点が非常に重要だと言えると思います。

前半では、基本的な機能を使う前提として、その活用ポイントを述べました。しかし、よりユーザー視点に立ってみると、「これに参加したい!」と思えるかどうか、どういった企画に仕上げていくかが重要であることは間違いありません。

「百人ビール・ラボ」は始まったばかりで、これからいろいろなイベントが実施されるようです。そのため、この取り組みがどういう結果になるのかはまだ分かりません。
しかし、なかなか面白い取り組みですので、参加者(!?)としても見ていきたいと思います。

 「百人ビール・ラボ」Facebookページ