国も必要性を認識する企業のSNS活用 ~企業のソーシャルメディア活用に関する調査報告書

20160518_05

先月、4月11日、経済産業省から「企業のソーシャルメディア活用に関する調査報告書」が発表されました。

20160518_01

http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160411002/20160411002.html

企業がFacebookやTeitterを始めとしたソーシャルメディアの公式アカウントを設けて情報発信やユーザーとコミュニケーションを行い、販売促進などで企業活用するスタイルがすっかり一般的になってきた一方、まだそのフェーズに至っていない企業、特に中小企業に向けて、先進的な取り組みの事例などを紹介しています。また、ソーシャルメディアを活用して事業活動を高度化する取組の普及にあたり、課題と解決策の検討内容を取りまとめています。

報告書のアウトライン

・スマホの普及に伴い、SNS利用者が増加。消費者の消費行動においてもSNS経由で得る情報が大きな影響が。
・企業側から見ると、SNSは低コストで消費者に情報提供をしたり、消費者ニーズを把握したマーケティング・商品開発が可能。特に中小企業にとっては従来では考えられない広い市場を相手にビジネス展開が可能。しかし、企業において活用が十分なされているとは言えない。
・単に公式アカウントのファンの数等を増やせば消費者に情報が届くのではなく、届かせるような工夫、興味を喚起する投稿内容とすることや、商品等に応じた適切なソーシャルメディアの選択、目的の設定を行う必要がある。

<各業界におけるソーシャルメディアの影響度>

SNSユーザーが情報を受けた結果、どのような影響を与えたかを「消費行動スコア」「好感スコア」「興味関心スコア」の3項目に分け、それぞれの項目に適した業界を挙げています。

20160518_02

(1)消費行動スコア
・各企業のアカウント登録者・閲覧者のうち、実際の購買に繋がった人の割合を算出したもの。
・比較的、SNSが直接購買に繋がりやすい業種は「ファストフード・コーヒー・宅配」「コンビニエンスストア」。
・割引クーポンの積極的配信、比較的価格帯が安価であることが理由・逆に直接購買に繋がりにくいものは「自動車・二輪」。高額で、購入までのリードタイムが長いため。

(2)好感スコア
・企業発のソーシャルメディア投稿が、好感度や共感のアップに結びついたかどうかの指標。
・前述の「自動車・二輪」など、高額な商材の場合、買い替え時の選択肢に挙がるために好感度を高める施策が必要。
・スポーツブランド・レジャー施設等、固定ファンが付いている業種は好感スコアが高まりやすい。

(3)興味関心スコア
・企業発のソーシャルメディア投稿に対し、リツイートやコメントなどをする・キャンペーンに申し込むなど、直接購入には至らないが、何かしらアクションを引き起こした度合いの指標。
・「飲料・ビール」がトップ。顧客接点を強化してリピート購入を増やす目的でSNS連動したキャンペーンの積極的な実施によるもの。

企業がSNSアカウントを運用・情報発信する際に、それを行う目的を策定することが重要です。購買や資料請求など、具体的なコンバージョンを目指すものなのか、それともユーザーやファンとコミュニケーションを取るものなのか、認知拡大・ブランドリフト効果を狙うものなのか。しかし、商材やサービスの種類によっては狙いにくい目的というものもあります。そうした場合、そもそもSNS施策でなく、web広告などSNS以外の施策の方が効率的である場合も多々あるため目的を明らかにすることは重要です。

<ソーシャルメディアが企業の事業活動に与える影響>

企業がSNSを活用する目的を、企業の事業活動の3つのフェーズに分けて、SNSの活用方法について提案・事例を挙げています。

(1)販売フェーズ
・SNSで商品訴求を行う結果、マスメディアを通したプロモーションよりもより早く認知度を上げて売り上げに繋がることも。スターバックスなどBtoCの食品・外食産業で「想定を上回る売上」が発生する事例が。
・SNS活用による販促活動の実施・その成果がリアルタイムで社内共有することが重要。機会損失を防ぐため。

(2)商品開発フェーズ
・SNS活用により、低コスト・短期間で多くの消費者の声を集め、ニーズを詳細に把握することができ、消費者ニーズにマッチした商品開発が可能。

(3)海外展開フェーズ
・日本国内から海外に向けたSNSプロモーションによって、訪日時の購買・海外からの直接受注の例が。海外市場を開拓したりするための有効な手段。

当初、Facebookでの企業-ファンのコミュニケーションは、BtoC企業が中心に行われてきました。しかし、ソーシャルメディアの普及と活用の多様化とともに、BtoBでのコミュニケーションも活発に行われています。また、SNS上でのファンの声を元にして開発された製品がリリースされたり、海外からの訪日観光客の増加を背景に、訪日中の消費活動に繋げるための訪日前の現地で展開するSNSなどでの口コミ施策なども多く展開されています。報告書の中にも触れられていましたが、特に中国は欧米発のSNSが利用できないため、現地独自のSNSが発達しているのでそのプラットフォームの検討も重要です。

その他、ソーシャルメディアの活用目的を、「販売促進」「認知向上」「商品開発」「サポート」の4項目の事例や、投稿のルール、SNS運用の組織や体制、指標の定め方などについて報告書では挙げられています。

また、別資料として「ソーシャルメディア活用 ベストプラクティス」と称された資料では、製造・食品/日用品・流通など様々な業種に渡る国内外42社のSNS活用事例が報告されています。 大企業の事例が中心ではありますが中小企業の事例も掲載されており、具体的な施策の内容などが記載され、なかなか読み応えのある内容となっています。企業のSNS担当者、またこれから展開を考えている企業の方は必見の内容です。

20160518_03

http://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/pdf/sns_best_practice.pdf

今後の企業SNS活用シーン

本報告書の内容について、業界関係者や既にSNSをビジネスで活用している企業の方にとっては、正直初歩的な内容ではありますが、国の省庁が企業のSNS活用の重要性を認識し、特にSNS活用がまだ行われていない企業に対し、情報発信を始めたことについて非常に大きな意義を感じます。

企業のSNS活用は、アイデアや工夫によって、これまで大きな予算が必要だったマスメディアによる大規模キャンペーンと同等以上の効果を生み出す可能性を含みます。大きなイニシャルコストがかからない点も含め、特に中小企業にとっては大手企業と同じ土俵で勝負できる可能性があります。また、大企業よりもフットワーク軽く実施・運用ができるスピード感も中小企業にマッチしているポイントです。

20160518_04

経産省の報告書では、以下のように検討課題を挙げ、報告書を締めています。

(1)ノウハウの普及
・SNS活用において成果を出し継続していくには一定の知見が必要。公的機関が理解を深め、企業に対して積極的にアドバイスできるようにすることが必要。
(2)専門人材の育成の推進
・急速に成長している分野であるため専門人材が不足している。専門性の評価基準、人材育成を推進するための方策の検討が必要。
(3)その他
・SNSユーザーのパーソナルデータを活用する際の留意点、改正個人情報保護法で何が可能になったのかなど、ガイドラインの策定・説明が必要。

こうした点から、経産省自体も企業のSNS活用に対するバックアップの重要性を認識していると考えられます。今後、この分野に対してのサポート、例えば相談窓口の設置・ガイドラインや研修の策定・企業活用に対する補助金/助成金の支給などが考えられ、より企業SNS活用のフィールドが活性化されていくことが予測されます。

SNSの企業活用は、タイムリーな情報発信による認知拡大、ユーザーの本音論の把握、販促効果など、業種・業態によってその目的・指標が適している・適していないはありますが、確実にビジネス活動に対する何らかしらの貢献が期待できます。