ITニュース 次世代マーケティング 自動運転

自動運転で変わる移動時間、その時間はマーケティング機会となるか?

ec

こんにちは、アクトゼロの山田です。
昨今のニュース等でご存知の方も多いと思いますが、今、日本の基幹産業である自動車産業が大きな局面を迎えています。ここ最近、環境の観点から、排出ガス、CO2をいかに減らすかというのが、最重要課題で、エコカーというのが一種、売れる車のキーワードとなっていました。そして今、新たに注目されているキーワードとして「自動運転」というのが台頭してきています。

2020年にはドライバーが関与しない世界が始まる

ここ最近、報道や自動車メーカー各社のCMの中で、盛んに目にするようになった「自動運転」というのは、文字通り、自動車が自ら周囲の状況を判断し加速や減速を行ってくれる運転支援の仕組みを指します。実は、一言で「自動運転」と言っても、その制御内容によって、4段階のレベルが定められているのです。

内閣府「SIP自動走行システム研究開発計画」より

内閣府「SIP自動走行システム研究開発計画」より

CMでよくあるシチュエーションである、咄嗟の時に自動的にブレーキを掛けてくれるのはレベル1で、人が一切介在せずに完全に自動車が自らを制御している状態が最高レベルの4となっています。

ちなみに、日本政府は2020年までに、人がスタンバイ状態でいつでも運転に復帰できる状態「レベル3」の自動車の市販化を掲げており、自動車メーカー各社が技術にしのぎを削っている状況です。

Googleの自動運転車

Googleの自動運転車

自動運転が注目されているのは、開発しているのが自動車メーカーだけでなく、米Googleや中国の百度等、グローバルなIT企業も開発を行っている点です。詳しい各社の開発の状況については、このブログでは割愛しますが、その狙いはどういったところにあるのでしょうか。

自動運転で大きく変わるのは通勤時間

自動運転の利点は、人間が運転しなくてもよいという利便性のみならず、時間の有効利用において最大の効果を発揮するのではないかと個人的には考えています。

“時間”という観点で、いくつかデータを紐解いてみましょう。

002

国勢調査2010年より

まず、総務省の統計データによると、日本における「自動車のみで通勤・通学している人」の割合は平成22年の段階で46.5%となっており、実数にすると2600万人以上にも上ります。これだけの人数が、日常的に自動車を通勤通学に使用しているのです。

総務省「平成20年住宅・土地統計調査」

総務省「平成20年住宅・土地統計調査」より

さらに、通勤時間のデータを見てみると、平成20年で約過半数(53.5%)の人が30分以内、30分~1時間30分になると41.2%と、おおよそ9割の人が1時間半以内のエリアから通勤通学をしていることになります。

例えば、全通勤通学者の平均時間を30分と仮定すると、往復で1時間を費やすことになります(ちょいと乱暴かもしれませんが…)。自動車で通勤通学する人が2600万人とすると、単純計算で、その人たちが自動車内で過ごす1日あたりの総時間は2600万時間にも及びます。
つまり、能動的に車を運転している状況から、自動運転が一般化することにより、日本全国で1日に2600万時間という、「空(あき)」時間が生まれることになるのです。

そうなると、単純に2600万時間の奪い合いが起きることになり、多くの企業にとって重要なマーケティング機会になることは間違いないでしょう。そして、その時間にどういうアプローチをするべきかというのが、一つの焦点になってきます。

例えば、電車通勤者やバス通勤者に対する定番のアプローチ手法として、中づり広告や駅構内の広告、さらには、移動時間に読む雑誌や新聞といった媒体への出稿というのがあります。そして、近年、電車内などでのスマートフォンを利用する時間が増えたことで、モバイル端末への広告出稿というのが急速に伸びてきています。

同様に、ただ乗っているだけの自動車内でも、電車と同じ状況が起こると考えるのは当然で、Googleなどが自動運転に積極的な理由もここにあると思われます。ただ単純に移動時間でのスマートフォン利用時間が増えることによる広告インプレッションの拡大はもちろんですが、もう一つ、移動するという車の特性も重要になってくると考えられます。

それはずばり、「ロケーション(自分の車がいる所在地)」という要素です。これが、IT企業が積極的に取り組むもうひとつ理由だと言えます。ソーシャル時代以降のインターネット広告に必要なのは、いかに精度の高いセグメントを行い、効率的かつ効果的に広告主の目的を達成するかという視点です。年齢や性別、興味関心に加え、日々の通勤通学ルートというロケーションデータもターゲティングの条件に加えられるようになるのです。

毎日の通勤ルート内にある、スーパーマーケットやコンビニ、ガソリンスタンド等々、ローカルビジネスを展開する広告主にとって、直接的に店舗への集客を図ることも普通に行えるようになります。通勤通学という日常に深く入り込めるため、例えば、切らしている洗剤を買うためにドラッグストアに立ち寄ったり、ノー残業デーに映画を見に行ったり、といったように、ユーザーの行動にダイレクトに繋げるが期待できます。

このように、自動運転が実現する社会において、通勤通学に充てられている時間は、大きなマーケティング機会となるのは間違いないと言えます。ただ直近の未来に限って言えば、各社が市販化を進めているのはレベル3に属する自動運転車であるため、あくまでも人がスタンバイ状態、すなわち、いつでも運転に復帰できる状況になければなりません。ということは、完全にフリーな時間があるとは言えないのです。とはいえ、自動車とスマートフォン等のデバイスが連携することで、スタンバイ中であることを判断して、その時間を有効に使えるようになるはずです。まずは、増大する接触機会をどう活用するのか、そして、ロケーションに紐付いたマーケティング戦略にはどういったものがあるのか、そういった青写真を描くところから始めてみてもいいかもしれません。

アクトゼロ / 山田