SNSが取り組む動画のライブ中継は企業にとって価値あるものか?

こんにちは、アクトゼロの山田です。Web動画の拡大は2016年も続いており、その勢いは衰えることを知らない状況のように感じます。YouTubeに始まったインターネット上における動画視聴のカルチャーは、マイクロフィルムと呼ばれるVine等のSNSライクなサービスまで拡大し、TwitterやFacebookといった既存SNSで動画を配信することもスタンダードになりました。そして、今新たな方向性として注目されているのは、SNSのフィード上で行う動画によるライブ中継です。

Facebookは機能として、Twitterは別サービスとして

今回新たに動画のライブ中継を始めるのはFacebookで、既存のアプリ内で配信する機能が追加されるものです。競合サービスとして挙げられるのはPeriscopeで、以前このブログでもご紹介したようにTwitterが提供するサービスになります。この2つのサービスの違いは、既存のサービス内に取り込むか、別のサービスとして独立しているか、といったところが挙げられるでしょう。

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Facebookの場合は、ニュースフィード上での動画再生に比較的早くから取り込んでおり、ユーザーの閲覧状況などを考慮した上でのローンチであることが推測されます。現状まだ不明な部分も多い機能ではあるのですが、ライブ配信のコンテンツは、通常の投稿よりもプライオリティが高く、ニュースフィードで上位に表示される仕様となっているようです。また、ライブ配信を行っているアカウントをフォローすることで次回のライブ配信を見逃さないようにする仕組みなど、しっかりとツボを押さえているところもFacebookらしいと感じます。

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現在は、iPhoneユーザーで始まっているこの機能ですが、順次Androidユーザーにも適用されていくようです。

価値を見いだせる業種は限られるかもしれない

こうした動画のライブ配信の仕組みは、機能としては非常におもしろいものではあるのですが、それを必要としている業種、もしくは、直接的な恩恵を受けられる業種は限られるのではないかと思っています。

有効に使いこなすための条件を挙げてみると…

1.自社アカウントに十分なファン(フォロワー)がいること
配信するにあたって、配信数、露出数は非常に重要な要素で、一定のファン(フォロワー)がいなければ意味がありません。ファンの少ないアカウントでは、それだけ見る人が少なくなりますので、配信による波及効果が期待できない結末になることは火を見るより明らかです。

2.ライブ配信するコンテンツを用意できること
なんでもかんでも配信すればよいという考えは、目の肥えたインターネットユーザーに対しては通用しません。ことSNSにおいて重要なエンゲージメントに結び付けることは至難の業かもしれません。多くの人が見たい、もしくは共感できるコンテンツを用意できなければなりません。
これらの条件を考慮すると、配信するに値する機会を持っている業種、言い換えると場所や催事に紐付く業種が比較的ライブ配信にふさわしいと言えそうです。
考えられる業種の例として、テーマパークやアミューズメント施設、もしくは大型のショッピングモールがあります。配信に適当な場所を持っており、ステージイベントやショーといった、コンテンツもしっかりと用意されています。もちろん、ショー全てを配信してしまうと、来場しなくても…という人たちが出てくることが予想されますので、ショーの一部やバックステージなど、本流ではないコンテンツ配信にするのが相応しいと考えられます。

あと、当然ながら報道関連は、鉄板の業種と考えられます。通信回線とスマートフォンさえあれば、いつでも配信ができるようになりますので、事件や事故の現場からライブで中継する手段として積極的な活用が考えられます。ただ、こうした業種の場合、速報的な側面が強く、あらかじめ段取りを整えておくことが難しいため、写り込んだ人のプライバシーの問題や、突発的なアクシデントの発生が懸念されます。あくまでも速報的な配信手段としての活用に留めてることが、望ましい気がします。

このように、動画ライブ配信という機能は、使い手を選ぶ機能のように思います。企業に対しては、新商品の発表会を中継するといった需要もあるとは思いますが、平日のビジネスアワーに行われることを考慮するとライブでの視聴者数にも限界がありSNS上であえて取り組むメリットはあまり感じられません。むしろ、後日、しっかりと編集したものを発信する方が、企業としての意図を伝えやすいのではないでしょうか。

アクトゼロ / 山田