通勤・通学中どんな動画を見てる?テレビ番組からネット動画へ進むコンテンツシフト(電通総研調査より)

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。

電通は2014年10月30日、18歳から49歳までの「通勤者」と高校生から大学生までの「通学者」を対象として電車やバス内での動画視聴の実態を調査、その結果を発表しました。今日はこの資料を見て行きたいと思います。グラフと解説文は資料より引用しています。

※以下のデータは、通勤・通学時に電車やバスに乗る人を対象とするスクリーニング設問の回答結果。徒歩や自転車、車で通勤・通学している人は含まれません。

通勤・通学中に若年層のおよそ20%が毎日動画を視聴している

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電車やバスに乗って通勤・通学する人に対して、通勤・通学中に動画を視聴するかについて聞いてみました。すると、通勤・通学者のうち約 50%の人は頻度はさまざまですが、動画を視聴しており、学生に至っては約 60%が視聴していました。

「2週間に1度」や「それ以下」という、かなり頻度が低い数が混ざっているため、実際は約50%が「見ることもある」という程度だということに注意が必要です。しかし、それでも調査対象の全世代で20%~30%の人達が日常的(2日に1度以上)に視聴していることがわかります。スマホの利用傾向としては、「動画視聴」を含む、「SNS・メッセージアプリ利用」、「ゲームアプリ」が有力と言われていて、調査によって揺らぎはありますが、概ねいい線をいっている数値なのではないでしょうか。

男女学生・男性の20-30代・女性の20代という若い世代においては、およそ20%が毎日動画を視聴していることがわかります。

動画視聴時にはほとんどの世代が乗車時間のおよそ30%を動画視聴に費やす

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動画を視聴する日で、片道の通勤時間における平均的な動画視聴時間の割合を聞いてみました。すると、通勤者男性 18-29 歳、通勤者女性 18-29 歳、同 30-39歳、通学者男女では、35%前後の割合となっており、電車やバスの乗車時間のうち約 1/3 程度が動画視聴に使われている実態が浮き彫りになりました。

12分位というのは、YouTubeやニコニコ動画などのネット動画視聴における1,2本分の長さですので、30分や60分のテレビプログラムを通勤中にまるまる見るというよりは、気になった動画をちょっと楽しむといった視聴傾向が読み取れます。

ネット動画の利用者割合が圧倒的に高い

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YouTube やニコニコ動画などの共有系動画サービスの利用がどの年代でも約 80%前後で圧倒的に多く、特に通学者女性では 91.6%と群を抜いて多く利用していました。テレビ放送系動画は、通勤者男性 40-49 歳で 51.8%、通勤者女性 30-39 歳では 50.6%と約半数が利用していました。また、d ビデオや Hulu などの配信系動画サービスは、どの年代でも約 25%と一定の割合で利用されているのが興味深い結果となりました。

見る機会がある動画サービスが複数回答されています。もっとも利用割合が多かったサービスはネット動画で、全世代で8割超という圧倒的な割合で選ばれています。かつてガラケー時代に流行していた、ワンセグ視聴を含むテレビコンテンツの視聴は男性40代・女性30代を中心にやや高めの数値となっています。

特徴的なものでは、通学者(高校生・大学生)女性の「自分で撮影していた動画」の視聴時間が高いことで、日本においては、このセグメントがセルフィ(自撮り)文化の担い手なのだとわかります。同時に通学者女性のテレビコンテンツへの関心の低さも、とても特徴的です。

全世代で強い音楽コンテンツ・若年層で強いアニメ・ゲームコンテンツ

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若年層に人気の高い「PV/音楽」系ジャンルが多く視聴されていましたが、この他「報道/ニュース」や「スポーツ」「バラエティー」「お笑い」「ドラマ」「アニメ」などテレビで人気のコンテンツジャンルが多く視聴されているのも特徴的でした。(中略)つまり、共有系動画サービスがどの年代でも一番多く視聴されているにもかかわらず、視聴されているコンテンツはテレビで人気のジャンルが多いということが明らかになりました。

あくまでテレビで人気のコンテンツがネット上で転載されていたわけではなく、コンテンツの「ジャンル」が人気ということのようです。質問内容が資料上で公開されていませんのでなんとも言えませんが、例えばYouTuberのMEGWINの動画を見ている人が、お笑い・バラエティ・○○してみた系にそれぞれ一票入れている可能性があるため、テレビで放映されたコンテンツが人気かどうかはグラフからはまったく読み取れません。(※このグラフの解説文はちょっと恣意的な気が…。)

通学者男女・10代―30代男性で強さを見せた「アニメ」、全世代で強い「音楽・PV」は特に若年層の女性で圧倒的な強さを見せています。そして、「テレビで人気のコンテンツジャンルがネットでも人気!」というよりも、「ネット動画にしか存在しないジャンル群がそれらと同じくらい人気」なことに注目するべきです。

影を薄くするテレビ・影響力を増すネット発のコンテンツ達

調査を通して言えることは、これまで多く語られていたシナリオと大きく変わるものではありません。若年層を中心にネット動画に日常的に親しむ人たちが存在し、学生はテレビ発のコンテンツに上の世代ほど興味をしめさなくなり、人気のコンテンツジャンルの少なくとも半数は、ネット動画文化にしか存在しないものだったということです。

そして今回の調査の外側には、動画視聴以外にもゲームアプリやSNS・メッセージアプリ・ネットサーフィンに時間を割く人も多くいるわけで、いよいよテレビの力が限定的になってきていると考えざるを得ません。メディア消費は多様化し、それぞれが自分の好みにあったコンテンツを思い思いに楽しんでいるのです。

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]

photo by Robert Couse-Baker