アドテク 広告

ついにビッグデータと接続へ。アドテクの進化と広告非表示ツールの流行

アクトゼロの黒沼(@torukuronuma)です。
早速ですが、「フィルターバブル」という言葉をごぞんじですか?

フィルターバブルは、イーライ・パリザーのTEDプレゼンテーションの中で取り上げられて有名になった言葉で、簡単に言うとGoogleやFacebookなど私たちの身の回りのネットサービスが、ユーザーに最適な情報をレコメンドしすぎてしまうことが、わたしたちの「知らない世界」との接触を阻んでいるのではないか?という提言でした。(2013年にも記事を書いていますので、詳しく知りたい方は上記のプレゼンテーションかこちらの記事をどうぞ→行き過ぎたレコメンドシステムが社会をどう変えるか

たしかに、私たちはよりソーシャルメディアに時間を割くようになって、自分の親しい人や好きなフォロワーの情報を進んで消費するようになっています。Gunosyなどのキュレーションメディアアプリの流行も起きています。Facebookによるニュースフィードの最適化は相変わらず続いていますし、Googleの検索結果のカスタマイズも高度化し、よりユーザーの興味にマッチした検索結果画面が表示されるようになっています。

自分の興味のある情報にだけ出会ってしまう。フィルターバブル的なネットの傾向はますます強くなっていると言えます。

オンライン広告の世界でも起きているユーザー「最適化」

ネットサービスのレコメンド最適化と同様に、オンライン広告の技術(=アドテク)も進化を重ね、よりユーザーに合った広告が表示されるように変化しています。広告主は、検索サイトで何を検索したか、性別・年代、興味、自社のサイトに一度でも訪れたかなど様々な形で、広告配信のターゲットを指定することが可能になっています。Facebook広告など、より実名制の高いユーザー情報を持つ広告ネットワークであれば、1歳単位での年齢、勤務先、住所、結婚歴、学歴などで更に細かくターゲットすることが可能です。

そして今日、アドバタイムズの記事広告で楽天のマーケティング事業新設が紹介されていました。

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その会員数は9300万(2014年6月末時点)に上り、日本のインターネットユーザー数の約90%(2014年6月末時点)にも上る数字だという。今年4月に楽天マーケティングジャパン事業を新設したのも、その強みを最大限に活かそうと考えてのことだ。「ここ数年、ディスプレイの広告枠だけを単純に売る組織からどう脱却するかということが広告営業部の課題でした」と同事業マーケティング部 向谷和男部長は語る。
楽天マーケティングジャパン事業を新設、広告パーソンを積極採用 | AdverTimes(アドタイ)

楽天グループには、オンライン広告のオーディエンスデータはもちろん、各楽天サービスのユーザー行動履歴、楽天カードによる決済履歴データ、楽天加盟店での購買データなど、オンラインとオフラインを横断した膨大なデータを抱えており、接続次第では個人の行動をかなりの部分まで補足することが可能で、この膨大なデータを企業マーケティングに活用するための準備を進めていく事になります。

ビッグデータとアドテクの接続に関しては、オプトとCCCのジョイントベンチャーであるPlatformIDが、TPOINTカード加盟店でのPOSデータ決済情報の活用を始めており、いよいよオンライン広告とビッグデータの接続が始まったことを僕達に実感させます。以下は2014年5月の記事です。

Platform IDはこのほど、同社の提供するDSP「Xrost DSP」において、カルチュア・コンビニエンス・クラブが展開するTポイントのビッグデータをもとに、会員属性データを活用した動画広告配信サービスの提供を開始する。(中略)
広告出稿企業は、オンライン上だけでなく、リアルチャネルでの来店やサービス利用、実購買に至るまで、「Cost per 認知(認知にかかったコスト)」「Cost per 購入意向(購入意向を持たせるためにかかったコスト)」「Cost per 実購買(リアル店舗の実購買につなげるためにかかったCost)」という新しい指標を用いて施策を実行できるようになる。
Platform ID、Tポイントのビッグデータを活用した動画広告配信サービス | マイナビニュース 

これにより、オンライン広告での出稿が、どの程度実売につながったかなどが計測可能となります。簡単に言うと、化粧品のバナー広告に触れたユーザーが、どれだけTPOINT加盟店で購買にまで至ったかを補足することが可能になります。フローを逆に展開させれば、加盟店で化粧品を購入したユーザーに向けて、使い終わるタイミングでのバナー広告出稿も技術的に可能だと言えるのです。

ある商品の公式サイトを訪問したあと、どのページにいってもその商品のバナー広告が追いかけてくるという経験をお持ちの方も多いと思います。今後は、店頭で買い物を行ったあと、ネット上でその商品の(あるいは競合商品の)バナーに追いかけられる日が来るかもしれません。

「広告に追いかけられる気味悪さ」は確かにあるでしょう。しかしここで業界のために少し擁護しておくと、オンライン広告の歴史は、ユーザーにマッチした広告を追求する歴史だったとも言えます。

ユーザーにとって関連性の高い広告は、広告主には高い広告効果を期待させ、ユーザーにとっても興味関心に合った広告情報が集まってくるという、双方のメリットが有るはずだという考えのもと、オンライン広告は進化してきました。それまでのマスメディア広告は、視聴者や読者などざっくりとしかターゲット指定しか出来ない広告でした。今日の進化は、ネット広告だから出来る「ユーザーに合った広告出稿」を目指した結果なのです。

オンライン広告除外アドオンの人気

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その一方で、Adblockに代表されるブラウザの広告非表示アドオンの利用者は増え続けています。GoogleChromeのAdblockアドオンを配布するChromeウェブストアにおいては、96,000件を上回るユーザーの好意的なレビューが寄せられています。レビューの星は概ね★★★★★です。すでに、アンドロイド版も公開されています。

GoogleTrend(Googleにおける検索ボリュームの伸びを調査できるツール)においても、2013年1月と今日現在を比べても「Adblock」のワードで検索される数が、およそ2.5倍に急拡大しています。アドブロックツールの一般化が加速しています。

ターゲティングを伴うオンライン広告は、ユーザーのプライベート領域まで、その歩を進めつつ有ります。アドテクの進化が、ユーザーの許容値を超えた時、こうした広告排除機能の普及は、さらに加速度的に進んでしまうのではないかと危惧します。ユーザーに広告排除の権限がある以上、ユーザーに存在を許される広告かどうかについて、「広告業界」は自覚的であるべきだと思います。

[アクトゼロ/黒沼(@torukuronuma)]